SLOW IS LUXURY
時間を灯す──スローこそ本物のラグジュアリー
AIの進化が目覚ましい。効率化とスピードが賛美されるこの時代に、私たちは本当に「時間をかける」ことの意味を問い直すべきだろう。投資の神様、ウォーレン・バフェットが「忍耐のある者にこそ富は移る」と語ったように、時間は価値を熟成させる最良の媒介だ。価値とは、すぐに得るものではなく、味わい深く育てるもの。例えば、香りを灯す時間、火のゆらぎとともに立ち上がる芳香の波紋は、私たちの五感にゆっくりと問いかける。そうした、感覚を整えていくような行為こそが、本物のラグジュアリーである。スローパフューマリーを掲げるLE LABOのキャンドルの香りは、空間に静かな余白を生む。香りは、ただ香るのではない。時間を灯すとともに、知性と豊かさを纏う行為となる。


職人の時間/クラフトの余白
「時間をかける」という行為は、もはや非効率ではなく、創造の源泉である。LE LABOの「コンクリート キャンドル」の器は、アメリカの家族が営むアトリエで、ひとつひとつ手で成形される。その表面には小さな歪みや気泡が残り、機械では決して再現できない “人の時間” が刻まれている。完成の均一さよりも、手の痕跡そのものが価値となるのだ。
同じように、ファッションブランドTAIGA TAKAHASHI(タイガタカハシ)は「時間の中にある美しさ」をテーマに服をつくる。100年前の素材や縫製技術を再現し、現代の身体に再構築するその姿勢は、スローであることを“思想”として選び取る行為にほかならない。クラフトとは、技術ではなく態度である。速さよりも深さを、完璧よりも余白を選ぶこと。コンクリートの冷たい表面と、職人の温かな手の間に流れるその時間が、LE LABOの香りの根底にある“静けさに宿る美”を支えている。




素材としてのコンクリート、香りとしてのSANTAL 26 — 黒が語る時間と深度
冷たく、無骨で、どこか静謐。コンクリートという素材は、時間を閉じ込める器のような存在だ。LE LABOのキャンドルに採用されたこの素材は、量産ではなく職人の手で形づくられる。その微細な質感やわずかな歪みは、時間の痕跡を可視化する。そこに火を灯せば、硬質な器と柔らかな炎、そして香りの層が重なり、空間に“時間の奥行き”が生まれる。
SANTAL 26は、LE LABOを象徴する香りだ。ウッディでスモーキー、そしてどこか知的な温もりを帯びる香調は、コンクリートの冷たさと共鳴しながら、心を静かにほどく。香りが漂うほどに、空間は研ぎ澄まされ、思考は内へと向かう。
今回1年間の期間限定で登場するブラックは、単なるデザインではない。黒は全ての色を内包する “完全な静寂” であり、時間や思想を吸い込む深度を持つ。静けさの中に強度を宿すこの黒は、現代のラグジュアリースタイルを象徴するひとつの答えだ。

香り:SANTAL 26(穏やかでスモーキー、レザリーな気品あふれる優しい香り)
容量:127g(ミディアム)、1.2kg(ラージ)
価格:11,000円(ミディアム)、74,800円(ラージ)
発売日:12月1日(月)※発売日から1年間の期間限定の販売
カラー:ブラック
取扱店舗:
ミディアム:百貨店、渋谷パルコ店を除く、ル ラボ直営店と公式オンラインショップ
ラージ:代官山店、京都町家店と公式オンラインショップ限定


スローパフューマリーの拡張:香りと時間、五感の覚醒
AIが文章を生み、アルゴリズムが選択を最適化する時代に、私たちは知らぬ間に “命の速度” を上げ続けている。だが、香りの世界では、時間こそが最も贅沢な要素だ。火を灯し、香りがゆっくりと広がっていく過程は、焦燥とは対極にある体験。瞬間ではなく、経過そのものが感覚を豊かにする。
LE LABOが掲げる “スローパフューマリー” とは、香りをつくることだけではない。香りを通じて人がどのように時間を過ごすか――その哲学の提案でもある。コンクリート キャンドルは、その思想を空間に拡張するクリエーションだ。
灯された香りは、時間の流れとともに変化し、やがて静けさを纏う。視覚、嗅覚、触覚が穏やかに同期し、五感が再び “人間的な速度” を取り戻していく。時間をかけるという選択が、いま最も知的で、豊かな贅沢なのかもしれない。
- Photography: Yoshitake Hamanaka
- Flower Artist: Shoma Hirouchi
- Words: Yuki Uenaka