またSAINT LAURENT(サンローラン)と自分の戦いが始まってしまった。

令和8年、サンローの乱である。

というのも今推しなデザイナーが誰かと聞かれたら、名を挙げるは現在のSAINT LAURENTのクリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)。

彼のつくり出す、ブランドの歴史に敬意を払い、シックながらもどこか攻めた威厳があり艶のある、土鍋で炊いた高貴な白米のような世界観が好きで、好きが高じてシャツから小物、さらにアイコンとなるブレザーなんて3着所有しているのだが、先日、発表されたメンズの2026年冬コレクションのショーを見ては自分はまた新作のブレザーに胸と預金残高を突き動かそうとしているのだ。

この一体しかない体に勝負服と称してブレザーを何着、自分は羽織らせるつもりなのだろう。勝負服などと言う前に財布とSAINT LAURENTとの戦いに負けた結果、購入しているので負け戦なのに………。

そもそも自分がヴァカレロのSAINT LAURENTの課金勢になったのは、出張先のパリのバス停で見たミュージシャンのスティーヴ・レイシー(Steve Lacy)の広告である。

ファミニンなボウタイをマスキュリンに絶妙に落とし込んだ佇まいとスティーヴ・レイシーのメロさに惚れ惚れし

………購入。

自分が着るとボウタイが神社で結ばれたおみくじに見える錯覚に陥るが、それほどにめでたく高貴な気持ちになれるので、どうか出会い頭に拝んでほしいし、あわよくば賽銭を投げつけてほしい。

あとは、2023年冬コレクションあたりからブレザーの肩を盛りだしたヴァカレロ。

パワーショルダーと景気が結びつくという記事をどこかで見た記憶があるのだが、また自らがめでたい存在へと昇華するべく肩パッドの入ったブレザーを

………購入。

マダムシンコのバームクーヘンを半切れずつ詰めたような肩パッド。とにかく肩が地平線のように果てしなく広がっていくので、ここから昇る朝日を眺めてはさらに運気を上げていただきたい。

ちょっと肩、貸すから。

その後も美しいネイビーのブレザーなども購入し、着用した姿を載せたら、中華圏を中心に名探偵コナンの「毛利小五郎」と呼ばれてまさかのプチバズってしまい、もういっそこのまま静かに麻酔銃で眠らせてほしい事態に………。

このようにSAINT LAURENTとはめでたく戦友のような関係性を一方的に築いてきたのだが、個人的にトドメをさされたのが2025年夏のウィメンズのコレクション。

ムッシュのスタイルを想起させながらもウィメンズに艶やかに落とし込んだ世界観に、もうこちらのライフはゼロである。

ここで完全敗北宣言をしながらも、「もう買わない」「ブレザーなんてこんなにあるんだから」と懲りずに抗うがサンローの乱。

個人的に2026年 夏コレクションがしっくりこなかったので一旦、自分が一歩優勢になったかのように思えたのだが、今回の2026年 冬コレクションでまさかの巻き返しが始まったのだ。

見よ。

もう駄目である。

相変わらず肩がマダムシンコしてるがウエスト部分にかけて絞られており、もうシルエットがキレイキレイ。

しかも彼の左腕に喰ってかかっている猛獣は何なのだろうか。猛獣に襲われても飄々としていた女優の松島トモ子氏を思い出させるこちらのルックは全身欲しい。

んで、このあたりのバランス感も素晴らしい。

エナメル? のブーツなど一見、豊洲市場になってしまいそうだが絶妙なバランスで高貴に昇格しているのが流石である。自分はこのヴァカレロの危ういバランス感が好きなのだ。

こうしてまたも勃発してしまった。

令和8年、サンローの乱。

めでたく振り回される勝敗はいかに。