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Where the runway meets the street

ベン・オレイニック(Ben Oleynik)は、ニューヨークを拠点とするブランド「Grand Collection(グランドコレクション)」を手がけるカナダ人ディレクターだ。比較的若い世代のスケーターや、ストリートカルチャーに対する感度の高いセレクトショップを中心に、日本でもファンを増やしているGrand Collection。2016年のブランド立ち上げ後、2018年からは本格的にフルコレクションを展開。所謂、スケーターによるスケートブランド故、比較的カジュアルなアイテムを中心にリリースを続け、スケートビデオも制作していながら、使用する生地をイタリア製にこだわったり、定期的なチャリティー活動も実施するなど、独自のこだわりを感じられるブランドだ。スケートボード歴25年以上のベンが目指す自身のブランドの在り方、そのやり甲斐についてを、この秋の東京/ソウルへの滞在撮り下ろし写真とともに紐解く。

 

——ご自身の事と、Grand Collectionの始まりについて教えてください。

僕はカナダのオンタリオ州にあるワワという小さな町で、スケートボードに夢中になりながら育ったんだ。一日中スケートをして、スケート以外の時間はスケートビデオを観て、食料品店で働いて得た給料は全てボードやシューズ、スケート雑誌に費やすほど、スケートが僕の全てだった。そんな自分も今から約16年前にニューヨークに引っ越し、しばらくはいろいろな企業のマーケティングやブランド戦略の仕事をしていた。でもその間ずっと、自分が作りたいものを形にできる自分のブランドを持ちたいと思い続けていたんだ。それがGrandを始めた動機かな。他のブランドで働くのも好きだけど、自分のものを持つことはやっぱり特別だよ。スケートブランドというものを、独自の方法で作りたいと思ったんだ。イタリアの生地を使ったり、ランウェイショーをやったり、年次のフードドライブを開催したり、一般的なスケートブランドにはない要素を取り入れたのもGrandの独自性と言えるかな。

——では、Grandというブランドの信念、コアバリューについて教えてください。

Grandの芯にあるのは、全てが可能だという考えなんだ。自分の好きなことを、自分の好きな人達と一緒にやって生きていくのは可能だということ。僕はカナダのド田舎の出身で、高校の数学なんて落第点だった。でも今はニューヨークで自分の望むライフスタイルを、やりたい仕事を、自分が望む人達とできるようになっている。もちろん時間と努力は必要で、数えきれない困難もあったけど、本当に全てのことは可能だと思う。Grandを通して、人々が自分の人生で最も大切にしているものに対して真っ直ぐでいられる手助けができたら、そんなに嬉しいことはないと思っているよ。

——この秋に東京でお会いした時には、プロスケーターのディエゴ・ナヘラ(Diego Najera)や、フィルマーのJP・ブレア(JP Blair)が一緒でしたね。Grandに関わる仲間はどんな人達ですか?

僕はGrandで、自分が関わることができた素晴らしい人達を讃える、ということを大切にしたいんだ。ブランド自体はほとんど僕のワンオペで、正式なチームや社員がいるわけじゃないんだけど、Grandの世界を見た人には、そこに携わった才能ある人達の存在にも気づいてほしいと思っている。彼らは、僕が一緒にものづくりをしたい、旅をしたい、スケートをしたい、また、この人から学びたい、と思える人達だから。ディエゴもJPも、ソウルから合流したライダー達も。家族みたいに大切で特別な存在だよ。

——Grandでは毎年フードドライブ(食料品の寄付活動)をされているそうですが、そのプロジェクトについて説明してください。

僕は以前から、ブランドとは服だけでなく、他の要素も含めるべきだと思っていたんだ。そこで5年前、自分の暮らすニューヨークという街に恩返しをするつもりでフードドライブを始めたんだ。というのも、昔から僕の両親が食べ物を通じて人々を支えていたから。特にホリデーシーズンは積極的だったね。だから僕は妻のマリアンヌと一緒にニューヨークに引っ越してからも、両親の伝統を引き継ぎたいと思ったんだ。僕達は毎年ホリデーシーズンに入ると、Labor Skate Shopや他のローカルショップで、食べ物の寄付ができるイベントを開催するんだ。それと、Grandのウィンターコレクションの収益の一部も寄付に充てている。全ての食品と寄付金は、マンハッタンのロウアーイーストサイドにある支援施設、The Bowery Missionに贈っているよ。

——Grandで特に人気なプロダクトなどはありますか?

毎シーズン、僕は実際に自分と友達が着たいものはなんだろう、と考えるところから始まるんだ。スケート中、リラックスタイム、旅行、ちょっといいディナーとか、日々の生活の中でそれぞれどんなアイテムがピッタリかを想像して作っていく。Grandで特に人気なものとか、シグネチャーアイテムと呼べるものはないけれど、逆にそれぞれのアイテムごとに違った人達が魅力を感じてくれているのはすごく嬉しい。僕はトラックスーツやハリントンジャケットが好きで、そういったアイテムのファンだと言ってくれる人がいる一方で、フーディーやバギーなパンツなど、色違いで毎回リリースするようなアイテムが好きだと言ってくれる人もいる。そして、ニットウェアや襟付きのトップスが好みだって言ってくれる人もね。

 

——先ほど少し触れましたが、この秋に東京とソウルを訪れた旅の思い出を教えてください。

旅のきっかけは、韓国のディストリビューターKadenceが僕達をソウルに招待して、ショップイベントとビデオ撮影の提案をしてくれたことなんだ。加えて、僕にとって東京は世界一好きな都市の一つだから、せっかくアジアに行くならと、東京を経由して韓国入りすることにした。東京でもソウルでも、色々なショップを尋ねたり、友達に会ったり、仕事っぽく言えばマーケットリサーチだったけど、たくさんの出会いに溢れた最高の滞在だったよ。東京ではラーメンや寿司を堪能して、ソウルでは毎晩焼肉三昧だった。ボウリングやカラオケ、シガーバー、ヴィンテージストアにも行ったし、韓国の有名な極上スケートスポットでレッジを攻めたのもビデオに収めた。昔からの友達にも会えたし、新しい友達もできた。終始睡眠不足気味だっけど、既に来年の再訪も計画中なんだ。

 

——ソウルで撮影したビデオについてですが、ライダー達もGrandCollectionの服を着ていると思います。ビデオの内容についても教えてください。

東京から一緒だったディエゴとJPに加えて、スペンサー・ハミルトン(Spencer Hamilton)とブライアン・リード(Brian Reid)がソウルで合流して撮影をスタートしたんだ。天気とイベントスケジュールの都合で実際に撮影できたのは3日しかなかったけど、彼らは最高のフッテージを残してくれたよ。スポットも素晴らしかった。他の場所に行くのがもったいないくらい、プラザのレッジスポットが良くて、そこで2日はスケートしたかな。フィルマーのJPはいつものように素晴らしい編集をしてくれたし、出来上がったビデオには僕がスケートビデオに求めること:親しい友達、レッジライン、フリップトリック、音楽、忘れられないひととき、その全てが詰まっている。このビデオを見るだけで、またすぐにスケートトリップに行かなきゃと思えるんだ。