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Where the runway meets the street

 

ファッション界のまた新たな椅子取りゲームが今始まろうとしている。7年間クリエイティブディレクターを務めたアレッサンドロ・ミケーレがGUCCIを去ることが発表された。

ミケーレの退任を憶測する声が上がり始めて24時間未満での発表だった。ある記事には、ミケーレには「デザイン路線の大幅変更をするよう言われていた」という内容が、某筋からの情報として記されていた。ロマンティックで最大主義的なデザインセンスで知られるミケーレだが、ブランド側からのその要求に応えることはできなかったということのようだ。

 

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ミケーレ本人もGUCCI側も退任理由についての説明は行っていないものの、退任の事実に関する声明は出されている。

「人生には考え方の違いにより袂を分かつ瞬間がある。20年以上にわたり愛と創造の情熱のすべてを注いだ会社における私の旅はここで終わりを迎える」とミケーレ。

GUCCI CEOマルコ・ビッザーリ氏は「2014年末、アレッサンドロと出会えたことは幸運であった。彼の20年にわたるGUCCIへの貢献と、クリエイティブ・ディレクター在任中に彼が見せてくれたビジョン、献身、そしてGUCCIへの無条件の愛に感謝する」と、ミケーレのこれまでの尽力を認める内容のプレスリリースを出している。

 

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ミケーレはGUCCIに2002年アクセサリーデザイナーとして入社して以降、フリーダ・ジャンニーニ時代、アソシエイト・クリエイティブ・ディレクターにまで上り詰めた。そして2015年、ジャンニーニの後任となり、GUCCIの美学を根本的に変えた。色気の控え目だったジャンニーニの世界観を、70年代風の華やかなグラマーで塗り替えたミケーレは、若く多様なオーディエンスにGUCCIの門戸を開いた。

インスタ映えのするランウェイショー(あの生首は記憶に新しい)、GUCCI × Balenciaga、GUCCI× adidas、GUCCI × Palaceを始めとるす有名ブランドとの数々のコラボレーションや、ラグジュアリーブランドの先陣を切ってメタバースを取り入れるなどのデジタル戦略で、ミケーレはGUCCIがまさに必要としていた改革を行った。

戦略は成功し、2021年のヴォーグビジネスインデックスでは、Z世代の消費者の間で認知度の最も高いブランドとしてGUCCIの名前が挙げられた。

 

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側から見る限り、ミケーレ率いるGUCCIは最高潮と思われた。一卵性双生児を起用した2023年春夏シーズンのショーもミラノ・ファッションウィークを大きく賑わせた。そして今月は、ビリー・アイリッシュと交際相手であるジェシー・ラザフォードがGUCCIのカスタムレッドカーペットルックを見せ、インターネット中で注目を集めた。

しかし、GUCCIの業績はKeringグループ内の他ブランドや競合のLVMHと比較して低迷していることが報じられている。

模倣者も多く出現するほどの個性を持ったミケーレのヴィジョンから今後GUCCIが離れて歩んでいくなどということは、想像することさえ難しい。ミケーレの後任の務まる人などいるだろうか?そう今、誰もが思っているはずだ。