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From the ground up

Highsnobiety / Nicolas Chalmeau

ランニングの精神に強く根ざしたスポーツブランドは多々あるが、中でもASICS(アシックス)は、長距離ランナーらの間で特に愛されるブランドだろう。25代目GEL-KAYANO(ゲルカヤノ)の発売を祝し、ASICS史上最も記憶に残るGEL-KAYANOモデル10種を振り返る。

GEL-KAYANOはオリンピックやアイアンマンレース出場選手のトレーニングシューズに選ばれ、2008年にはGEL-KAYANO14 が『Runner’s World』のインターナショナルエディターズチョイス賞を受賞した。GEL-KAYANOという名前は90年代初頭、ASICSブランドから最先端の長距離ランニングシューズ作りを一任された榧野俊一の名字に由来する。そして93年に誕生したGEL-KAYANOシリーズのインスピレーション源はなんとクワガタだった。アウトソールにあしらった稲妻を思わせるようなモチーフが左右一足揃うとクワガタのハサミのように見えるデザインが特徴的だ。

これまで25代のデザインを誕生させてきたGEL-KAYANOは日本の“改善”の哲学を貫いている。榧野自身も「初期のGEL-KAYANOは外観重視だったが、やがて科学根拠に基づく機能性を取り入れるようになりました。そして18代以降は環境への優しさ、エシカルなデザインを考えるように工夫しています。」と話す。

ASICS footwear designers Yoshiyasu Ando (Left) and Toshikazu Kayano (Right)
ASICS footwear designers Yoshiyasu Ando (Left) and Toshikazu Kayano (Right)
Highsnobiety / Nicolas Chalmeau

今も榧野は神戸を拠点とするASICSデザインチームをサポートしている。25年目、25番目のモデルを誕生させた2018年はGEL-KAYANOにとって記念すべき年と言えるだろう。GEL-KAYANOの歴史を掘り下げるべく、榧野は勿論、現在のGEL-KAYANOのデザイナーである安藤良泰に、GEL-KAYANO史上記憶に残る10種類のモデルについて聞いてみた。

GEL-KAYANO TRAINER

榧野:こちらが、クワガタのインスピレーションでデザインした初代のGEL-KAYANOシューズです。ご覧の通り、技術的にはモノソック、エクスターナルヒールカウンター、ストライプを主要としたデザインとなっています。93年に発売しました。

GEL-KAYANO 5

榧野:GEL-KAYANO 5は最近復活したんです。これ以前のGEL-KAYANOは外観重視でした。つまり、ムード、フィーリング、エモーショナル面が先行していたということです。でもGEL-KAYANO 5になると目に見える技術(ビジブルテクノロジー)に重きを置くようになってきています。そこがポイントです。大きな特徴がデュオマックスソール、そしてダブルのビジブルゲルとティアドロップタングと、ビジブルテクノロジーをふんだんに採用しています。オリジナルのGEL-KAYANOはランニングにもウォーキングにもストリートファッションにも使えるマルチパーパスシューズとして考えていましたので、とても快適に出来ています。

GEL-KAYANO 6

榧野:GEL-KAYANO 6の開発にはアシックスのISS(Institute of Sports Science:スポーツ工学研究所)が参加しました。なので、より科学的なシューズとなっています。軽量で、機能性も数値で測定するようになりました。このモデルには当時最新のテクノロジーを採用しています。ヒールクレイドルには安定性が高める機能があり、デュオマックスソールもアップデートしていますね。このモデルのイノベーションはISSの思考プロセスの賜物です。

GEL-KAYANO 9

榧野:GEL-KAYANO 9は外観にとことんこだわっています。タング部分に僕の名前の漢字スタンプ柄を入れているのですが、日本では販売せずに海外向けに発売しました。創業者の鬼塚喜八郎はタングに僕の名前が入っているのを見てご立腹でした。「ASICSブランドを利用して自分の名前を売り込む気か!」と。でも結果的に海外市場ではよく売れました。

GEL-KAYANO 10

榧野:2004年にこのモデルはアテネオリンピック日本代表選手団のデレゲーションシューズに選ばれました。沢山の思い出がありますね。このモデルにはバイオモルフィックフィット構造を採用していて、履き心地を高めています。運動中も足にフィットするシューズ作りを目指しました。

GEL-KAYANO 15

榧野:GEL-KAYANO 15は、アイレットステイを改良してフィット感を高めています。アシンメトリカルレーシングシステムと呼んでいます。シューレースを左右非対称にすることでフィット感を非常に高めているのです。それからISSの推奨に基づいてゲルコンポーネントを増やし、クッション性能も高めています。

GEL-KAYANO 18

榧野:GEL-KAYANO 18は少し変わっていて、それ以前のモデルよりエシカルなアプローチで制作しています。アメリカのマサチューセッツ工科大学と提携し、CO2排出量を約20%削減して作ったモデルです。合成樹脂などの環境に有害な物質の使用を減らすようデザインしています。

GEL-KAYANO 20

安藤:僕がGEL-KAYANOシリーズのデザインに携わるようになったのは20周年記念モデルの時からです。記念としてつま先部分とインソールに歴代モデルの名前を入れました。それから、それまでのバイオモルフィックフィットに代えてフルイドフィットを採用しました。バイオモルフィックフィットでは柔軟性を部分的にしか確保していませんでしたが、フルイドフィットではより柔軟なフィット感を実現しました。

GEL-KAYANO 22

安藤: GEL-KAYANO 22はステッチダウン構造ではなく、シームレス構造を採用しています。メッシュのデザインとシームレス構造によりずっと軽くてやわらかなシューズに仕上げました。このモデルで採用した外付けヒールカウンターは実は、25代目モデルの特徴的なカウンターのベースになっているんです。

GEL-KAYANO 25

榧野:こちらが最新モデルです。GEL-KAYANOシリーズは長年の間に発展と進化を遂げてきました。25代目モデルのミッドソールにはフライトフォームという軽量高弾性スポンジ材を採用しています。弾性が高い材料ですので、一歩一歩が弾むような感覚の履き心地でランニングにおすすめです。地面からのキックバックを高めるために靴型(ラスト)も刷新しました。つま先部分は若干持ち上げ、横幅はやや広く取っています。GEL-KAYANOのテクノロジーは日々進化し続けています。今回は、それらを最もよく体現している10種類のモデルを選んでみました。