music
Tune in and turn up

スイスの山々を背景にブラックコーヒーを啜り、催眠的ディープハウスを聴きながら、ここAUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)のミュゼ アトリエ オーデマ ピゲで、有り余る数のロイヤル オークを試着する。その営みの中で私は、全てが腑に落ちる感覚を味わった。

未来のAUDEMARS PIGUETは、憧れの腕時計のみに終始しない。音楽体験をキュレーションし、それを通じて世界、コミュニティと繋がるというところまでがAUDEMARS PIGUETの未来だ。

些か先走り過ぎただろうか。

スイスの腕時計メーカーAUDEMARS PIGUETは常に、アート、ファッション、テクノロジー分野の先駆者を惹きつけるスケルトンキーとしての音楽の役割を、直感的に理解してきたブランドであるように思える。トラヴィス・スコット(Travis Scott)やジェイ・Z(Jay-Z)を個人的に史上最高のアーティストだと思っている私は、そのことを肌で感じてきた。AUDEMARS PIGUETがこうしたアーティストとの絆、ヒップホップとの深い繋がりを持っているからだ。

また、そうしたクリエイターが、音楽業界全体に文化的な影響力を高めながら、現代の家宝と言うべきものを生み出していく姿も見つめてきた。

AUDEMARS PIGUETは「AP x MUSIC」プログラムを通じ、こうしたコミュニティの構築、拡大にこれまで以上に力を注いでいる。毎年恒例のモントルー・ジャズ・フェスティバルとAUDEMARS PIGUETのパラレル体験では、それを直接体感する機会を得た。

オテル デ オルロジェとミュゼ アトリエ オーデマ ピゲ

Hôtel des Horlogers Exterior ©AUDEMARS PIGUET

AUDEMARS PIGUETのオテル デ オルロジェはスイスのル・ブラッシュにある。ここでAUDEMARS PIGUETと過ごす1週間の幕開けを迎えるのはまさに完璧としか言いようがない。ル・ブラッシュと言えば、時計オタクなら誰もが知る聖地であり、AUDEMARS PIGUETの伝承とも結びつきの深い土地だ。

建材から食材に至るまでの全てを周辺地域から調達しているというホテルは、周囲の渓谷の延長のように感じられる。

ミニマルではあるが、気品を欠くことや、大げさになり過ぎることはない。天井から苗木が吊るされたロビー、打ちっぱなしのコンクリート壁、大きな窓に切り取られたハッとするほどの自然。落ち着きに満ち、訪れる者を深い思索に誘うそんな空間で、時計作りと音楽との結びつきについて考える1週間を過ごした。

音楽と時計作りとの関係については明白だとも思われるかも知れない。どちらも時間、テンポが鍵だ。それから時計作りにも、音楽の旋律の習得にも、長年の鍛錬と精緻さが求められる、という言い方もできる。また、数多の技術的進歩があるにせよ、その核心がアナログである点も共通している。

しかしAUDEMARS PIGUETと音楽との結びつきは、より有機的で、根深く、さらには「リズミカル」でさえある。隣接する、かの有名なミュゼ アトリエ オーデマ ピゲでは、その点が余すところなく表現されている。

Musée Atelier Audemars Piguet exterior
©AUDEMARS PIGUET

アトリエの設計はビャルケ・インゲルス。ジェイ・Zのアルバム『The Blueprint』のレコード盤をサウンドトラックに、AUDEMARS PIGUET歴代の時計の数々が展示されたミュージアムを巡る。

様々なミニッツリピーター・コンプリケーションや、我が聖杯たるイクエーション・オブ・タイム(均時差表示式の腕時計)も時計オタクである私を喜ばせてくれたが、さらに見事だったのは、コラボレーションの時計の数々だった。

MI6(秘密情報部)の隠れ家のようにひっそりと守られた特別室(「キャンディルーム」とも呼ばれる)の壁には、AUDEMARS PIGUET史上最も欲望を掻き立ててきた時計が一面並ぶ。トラヴィス・スコットの新作チョコレートAUDEMARS PIGUETをご所望? はいどうぞ。天体の文字盤が見事なジョン・メイヤー(John Mayer)の新作を試着したい? お安いご用、とでも言わんばかりだ。

特別室、そしてミュージアム全体に展示された時計を見て、AUDEMARS PIGUETに対する思いが確信に変わった。常に文化を牽引するリーダー達が身に着けてきた時計は、文化的に重要な瞬間の最前線にあり続けてきた存在である。149年の歴史を持つ時計メーカーAUDEMARS PIGUETは、そのことをやはり理解している。

ここまでのことは、その後へと続く、完璧な序曲だった。

クロード・ノブス(Claude Nobsとモントルー座談会

旅の後半、クロード・ノブスのシャレーを訪れ、AUDEMARS PIGUETのCEO、イラリア・レスタ(Ilaria Resta)、モントルー・ジャズ・フェスティバルのCEOマシュー・ジャトン(Mathieu Jaton)と座談会を行った。

今は亡きクロード・ノブスはモントルー・ジャズ・フェスティバルの創始者だった。世界最高の音楽家を誘致することでモントルーの知名度を高めることを生涯の使命とし、成し遂げた人物である。

複数階建てのノブスのシャレーには各階に、歴史上の人物、伝説のミュージシャン、著名なアーティストなど、誰もが何らかの形でその作品から直接的な影響を受けているような数々の人物のトーテムが飾られており、さながら生きた博物館だ。

我がヒーロー、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)から届いた直筆の手紙、フレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)の有名な着物のうちの一枚、ホワイエにはカルロス・サンタナ(Carlos Santana)のギター……。音楽史の断片があちこちに散りばめられたこのシャレーには、そう簡単には興奮しない音楽マニアのアンソニー・ファンタノ(Anthony Fantano)でも興奮することだろう。

往年の有名音楽フェスティバルの残像を拝みながら、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)、B.B.キング(B.B. King)、アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)といったアーティストにすっかり心を奪われてしまった。音楽の流れを形成してきただけでなく、モントルーという地域やフェスティバルそのものをも形成してきた黒人アーティスト達(私がいつも日曜の夕べに聴くアーティストだ)の面影を目の当たりにし、胸が熱くなってしまった。

AUDEMARS PIGUETはモントルー・ジャズ・フェスティバルに直接関係していることに加え、2010年からモントルー・ジャズ・デジタル・プロジェクトにも貢献している。クロード・ノブ財団、EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ)とAUDEMARS PIGUETは、モントルー・ジャズ・フェスティバルの歴史的瞬間をデジタル化する取り組みを進めており、その視聴覚アーカイブは、ユネスコの「世界の記憶遺産」に登録されている。

これらのアーカイブを充実させるべく、様々なパートナーが技術検証を行っており、その内容はそれだけで一本の記事に値する。これは一旦、いずれ、バーチャルリアリティを使って、プリンスの2009年モントルー・ジャズ・フェスティバルのクロージング・パフォーマンスに参加できる時代が来るかもしれない、とだけ記しておこう。

AUDEMARS PIGUETはかねてからモントルー・ジャズ・デジタル・プロジェクトに取り組んでいるが、フェスティバルのグローバル・パートナーになったのはつい最近(2019年)のことだ。AUDEMARS PIGUET CEOのイラリア・レスタとモントルー・ジャズ・フェスティバルCEOのマシュー・ジャトン(Mathieu Jaton)との座談会では、その取り組みが単に露出を高めることを意図したありがちなマーケティング施策とは性質を異にするものであることが明確に感じられた。

AUDEMARS PIGUETの世界、そしてその一端を担いたいと熱望するコミュニティにとって、本年開催されたようなイベントは中核的要素となっていくだろう。特に時計に興味を持つ若いコレクターからは、様々な体験や大規模な文化的イベントが、これまで以上に求められている。

新たなコレクターはインスピレーションを求めている。それを10倍ほどに促進する力を持つAUDEMARS PIGUETとモントルー・ジャズとの取り組みは、ここからが本格的なスタートだ。

AUDEMARS PIGUETのパラレル体験を味わう私の旅がクレッシェンドを迎えたあの瞬間は、まさに今後の飛躍を予感させるものだった。

AUDEMARS PIGUETのパラレル体験

全身着飾り、コレクター垂涎の時計を身につけた大勢とスプリンターに乗り合わせ、私達はスイスの山間、レ・プレイヤードの、ある秘密の場所へと向かった。

そこで私を含む600人以上の幸運な集団を待っていたのは、スイス人トリオのモン・ルージュ(Mont Rouge)、エレクトロニック界の奇才Mochakk、そして我が個人的ヒーロー、伝説のブラック・コーヒー(Black Coffee)といった面々だった。

山間でのアウトドア体験を締め括ったのは、レマン盆地を見下ろしながらの忘れがたい夕日だった。それだけでもAUDEMARS PIGUETにオーラポイント10,000点を授けたい程の絶景だ。

今回の無料エクスクルーシブイベントに参加したのは、AUDEMARS PIGUETの友人や親族ら(グシュタード・ガイの代名詞的苦笑いをこの目で見る機会にも恵まれた)を除くと、抽選で当選したメンバーである。

開催場所が直前まで明かされないスリルもあり、月並みなインフルエンサーの交流の場といった領域を超えた、新鮮味溢れる催しであった。

Marc Ducrest, courtesy of Audemars Piguet ©AUDEMARS PIGUET

今回のツアーで我々編集者陣は、AUDEMARS PIGUETと音楽との繋がりについて一貫したメッセージを受け取った。この一生に一度の体験の最中に、音楽好き仲間と共に、ブラック・コーヒーの音楽に乗って踊る最高の瞬間を過ごした時、そのメッセージは特に納得感を伴って響いた。

フリーフローのジントニックや海抜4,500フィート(約1.37km)の高地という環境も手伝ってか、AUDEMARS PIGUETと過ごした1週間のAUDEMARS PIGUETパラレル体験を通して、ジャン=ミシェル・バスキアの芸術と音楽についての言葉を思い起こした。

「アートは空間、音楽は時を飾るもの」

音楽は人間の暮らしに欠かせない存在であり、今回のような音楽体験は思い出を飾り、時を刻む。新しい水中ミニッツリピーターを作る時も、私のお気に入りの音楽アーティストとのクリエイティブなコラボレーションを展開する時も、スイスの山頂での音楽体験を提案する時も、AUDEMARS PIGUETはその理念に根ざしている。

時計作りには様々な形で音楽との結びつきがある。少なくともAUDEMARS PIGUETル・ブラッシュの工房の時計作りはそうだ。

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