クリエイティブディレクター交代が相次ぐ今シーズンの興奮冷めやらぬまま、BALENCIAGA(バレンシアガ)の新クリエイティブディレクターに就任したピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)が、満を持して新生BALENCIAGAを披露した。

BALENCIAGA 2026年サマーコレクションの招待状には、心拍音が再生されるカセットテープが同封されていた。それは、まさにBALENCIAGAの “心部” を、新しい視点で捉えたコレクションのムードを象徴する演出だったと言えるだろう。

色使い、ドラマティックなフォルム、洗練されたテクスチャー。2026年サマーコレクションで見られたこれらの要素は、ピッチョーリが手掛けたVALENTINO(ヴァレンティノ)時代を想起させる一方で、BALENCIAGAの創業者クリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)が築いたアーカイブ、そのコードを想起させるものでもある。

ショーに先立ち、BALENCIAGAの公式Instagramでは、ピッチョーリのデビューを予感させる投稿が公開された。そこには、クリストバルによる1967年のシルク製ウェディングドレスと、それに合わせたハットの写真が写っており、アーカイブが重要な着想源であることを示唆していた。

しかし、コレクションノートによれば、BALENCIAGA 2026年サマーコレクションは単なるオマージュではない。ピッチョーリはBALENCIAGAを「再調整(recalibrating)」し、現代におけるその姿を再定義しようとしている。その過程で、メゾンの破壊的な過去、さらには現在GUCCI(グッチ)のクリエイティブディレクターを務めるデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)を含む、歴代のクリエイティブディレクターの存在にも思いを巡らせている。

エイリアンのように巨大なオーバーサイズのサングラスや、鋭く尖ったポインテッドトゥのヒールには、デムナ特有のストリート由来の誇張された美学が色濃く漂う。しかしそれらは、ピッチョーリのモダンな視点によって再定義されていた。

5月にクリエイティブディレクターに就任したピッチョーリ自身も、トレードマークであるオールブラックの装いで姿を見せ、足もとにはデムナ時代を象徴す「3XLスニーカー」を合わせていた。

新生BALENCIAGAのショーには、これまでとは異なる顔ぶれも集った。ピンクパンサレス(PinkPantheress)や、サセックス公爵夫人メーガン・マークル(Meghan Markle)といった、フレッシュでありながら象徴的な存在がフロントロウに名を連ねたことも印象的だ。

そして、ローリン・ヒル(Lauryn Hill)の「Can’t Take My Eyes Off Of You」が流れるフィナーレ。会場の注目は、新しいBALENCIAGAへと集まっていく。そこにあったのは、かつてのBALENCIAGAの記憶を内包しながら、未来を見据える新生BALENCIAGAだった。