style
Where the runway meets the street

Lou Rolley / Highsnobiety

例年、年の暮れにこの1年間でトリートファッションシーンに影響を与えた、敬愛すべき人物を紹介している。「Highsnobiety Crowns」は編集部がピックアップした中から、読者投票により勝者が決まる。私たちの分野(ストリートファッション)で力を発揮してきたり、業界に変化をもたらす新風をバックアップする私たちなりの方法だ。昨年同様に、受賞者には「Snarkitecture」と『Highsnobiety』によって製作されたアルミニウムキートロフィーが贈られる。

「バレンシアガ(Balenciaga)」や「グッチ(Gucci)」、「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」、「シュプリーム(Supreme)」 が話題を独占した2017年。しかし、その他のビッグブランドにとっても、ここ数年の激震を乗り越えて、業界トップの座を奪取した1年であったのかもしれない。数年前には考えることすらできなかったことだが「フッド・バイ・エアー(Hood By Air.)」や「パブリックスクール(PUBLIC SCHOOL)」などの若いブランドが業界をリードし、対照的に歴史の長いブランドがそれを追った。しかしここで注意するべき点は、ファッション界の流れはサイクルで、歴史は繰り返す、ということだ。

それにもかかわらず、私たちはたくさんの若くインディペンデントなデザイナーがブレイクする場面を、過去12カ月のあらゆる側面において目撃してきた。ストリートウェアや、DIYスタイルが流行している現在のファッションの状況からすると、この事実は必ずしも驚くことではない。結局のところ、オリジナルの発信者がいなければ、それを真似する人も存在しないのだ。

それでは、読者の投票により決定した2017年の「Highsnobiety Crowns awards for Best Breakthrough Brand」を、本誌が選んだ各部門のエディターズチョイスとともに発表しよう。

Best Breakthrough Brand のすべてのノミネートブランドのリストはこちらから。店舗、コレクション、ブランド、スニーカー、人物のリストはこちらからチェック。

2017年のベストブレイクスルーブランド(最も飛躍的に変化を遂げたブランド)

ブロンズ―パーム・エンジェルス

Eva Al Desnudo / Highsnobiety

「モンクレール(MONCLER)」のアーティスティック・ディレクター、そして著名なファッション写真家でもある「フランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)」のブランド「パーム・エンジェルス(Palm Angels)」だが、ファッション業界で突破口を見出だすのには予想外に苦戦した。サーフやスケート、そしてグランジカルチャーを対立的にミックスし、古きよき西海岸らしさをロマンティックに表現したデザイン。それが、20世紀後半のノスタルジアに憧れを抱く現在のファッションの気分を見事に捉え、ようやく2017年、パーム・エンジェルスはコンテンポラリーファッション業界で存在感を示しだした。

「マルセロ・ブロン(MARCELO BURLON)」のディストリビューションやプロダクションをする「ニューガーズグループ(New Guards Group)」のブランドリストに、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」、「ヘロン・プレストン(Heron Preston)」、「アンラベル プロジェクト(Unravel Project))」、マルセロ・ブロンとともに名を連ねることで、パーム・エンジェルスは自ずとあらゆるシーンのパワーネームとリンクされるようになった。2017年の前半には、LAのマックスフィールドで行われた「ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)」のポップアップショップの一部のデザインを手がけ、またミランや東京で自ブランドの独立型ポップアップストアを開催。ストリップクラブ“Lonely Hearts Club”をモデルとしたこのポップアップストアは、好評を博した。

「エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)」や「プレイボーイ・カルティ(Playboi Carti)」、「ジョー・ジョナス(Joe Jonas)」などのAリストのセレブリティらのバックアップを受けると同時に、世界中の影響力のあるブティックやデパートなどが新たなディストリビューターとななった2017年。「パーム・エンジェルス」にとって、業界のメインストリームに上り詰めた1年とった。ブランド名に表れているように、「パーム・エンジェルス」は華美で魅力的でストリートウェアのツイストを加えたハイライフを提案するブランド。そこに広がる有名人顧客のリストは、ブランドが提供する価値の証である。

 

シルバーア コールド ウォール

A-COLD-WALL*

若きイギリス人デザイナー「サム・ロス(Sam Ross)」は、早くから成功を収めた逸材だ。そんな彼だが、数年前に「ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)」のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™ (OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」のOBとしてプレスデビューしたときは、一体どのように彼自身のビジネスを発展させていくのか、いうことが大きく疑問視された。「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL*)」は単なる「オフ・ホワイト」の真似ごとか、もしくは我々は、ヴァージルを少しでもインスパイアさせた才能の片鱗を目にすることができるのか、と。

数シーズンを経て、ロスは自身のクリエイションを世に広くしらしめた。モダンで規律のとれたなデザインは、コレクションを重ねるごとにより一貫したものになり発展した。その結果、アコールドウォールならではの世界観を作ることに成功し、若いエマージングなブランドにとって必ずしも簡単ではない継続性やテーマ性を打ち出していった。

サムの2017年は出だしからとても好調で、ロンドンファッションウィークにて2017-18年秋冬コレクションを披露。そこで「リアム ホッジス(LIAM HODGES)」や「グレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)」とともに英国ファッション評議会(The British Fashion Council)の新進デザイナー支援プロジェクトの「ニュージェン(NEWGEN)」にも選ばれた。それからほどなく、2日間にわたってロンドンで“ACADEMIA CORRECTION WORKSHOP”という名のポップアップストアを開催すると発表した。

2017年の「ア コールド ウォール」にとって記念すべき瞬間は、ほかにもある。それは、2018年春夏シーズンのプレゼンテーションの最中に訪れた。ロスによりカスタマイズされた「ナイキ(Nike)」のAir Force 1sに注文が殺到していることが明らかになったときだった。幅広く消費者に受け入れられるか分からない状態でスタートしたプロジェクトだったが、何度か繰り返し、またチケット制イベントや非公開のローンチが話題を呼び、徐々に人気を集めていった。2018年にもサムの活躍に期待したい。

 

ゴールド―カッパ

Lou Rolley / Highsnobiety

2017年のベストブレイクスルーブランドというカテゴリーで「カッパ(Kappa)」が受賞することは少し例外だが、論点は別にある。数十年以上も前に設立され、70年代と80年代のフットボールカルチャーで全盛期を迎えたカッパだが、ここ数年復活の兆しを見せている。

これは、ロシア人デザイナー「ゴーシャ・ラブチンスキー(Gosha Rubchinskiy)」との多くのコラボレーションに起因するもので、特にフィレンツェで開催している「ピッティ・ウオモ」で発表された2017年春夏コレクションが際立っていた。飛躍の1年となった2017年は「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」や「シーツーエイチフォーエルエー(C2H4 LA)」、「キンフォーク(Kinfolk)」との新たなパートナーシップによりさらにブランド力を伸ばし、イタリアの最もアイコニックなスポーツウエアブランドの一つとして大復活を遂げた。

しかし、「カッパ」の見事な復活劇は順風満帆に進んだわけではなかった。2017年にローンチした「カッパ コントロール(KAPPA KONTROLL)」は、60年代に導入されたオリジナルレーベルから名付けられた品質にこだわったレーベル。ブランドの膨大なアーカイブを掘り起こし、その当時に存在していたブランドにしかできないクラッシックなヨーロッパのスポーツスタイルを提案した。

ここ数年のワークウェアやクラシックなものへの人気が再燃したことが、「カーハート(Carhartt)」や「ディッキーズ(Dickies)」、「ドクターマーチン(Dr.Martens)」といったブランドの再隆盛に繋がった。それと同様に、トラックスーツやスポーツウエアへの人気の高まりが、伝統的なファッションを復興させるため別の新しい扉を開けることになった。そしてそれは、ウェルカムな復活だ。

 

エディターズ・チョイス―アリクス

「アリクス(ALYX)」 のクリエイティブ・ディレクター「マシュー・ウィリアムス(Matthew Williams)」が注目されたきっかけは、「カニエ・ウェスト(Kanye West)」が手がけるクリエイティブ・エージェンシー「ドンダ エージェンシー(DONDA agency)」や「ビーン・トリル(BEEN TRILL)」と行ったプロジェクトだが、2017年は彼自身の実力に対してよりフォーカスが集まった。

もし彼のプロジェクトの多くが、ポップカルチャーやモダンマーケティングにおける豊富な知識をひけらかしたものだったならば、アリクスはきっともっとつまらないブランドになっていただろう。しかしブランドの2017-18年秋冬のメンズコレクションは、ポップカルチャーをよりシャープで洗練されたフォームで解釈をした。

ブランドの正しい発音(“Aleeks”)が描かれたグラフィックTシャツのようなプレイフルなアイテムは、ブランドのアイデンティティに固執するファッション業界をからかっているかのようだった。そして「ヴァンズ(Vans)」とのコラボレーションやブランドの現在のトレードマークであるローラーコースターベルトのようなウィットに富んだ商品は、伝統もときに新しく生まれ変わる必要があることを伝えているかのようだった。

これにより、ウィリアムのブランドはファッションウィーク期間中に最も話題になったブランドの一つとなった。そして私たちはこのブランドを実際にお金を出して買っている。2018年はマシューの勢いはさらに加速するだろう。