メンズウェアの次なる主役になりたいのなら、まずは10年待て。
メンズウェア界でいま最も注目されているブランド達の共通点とは一体なんだろうか?どれも一見普通に見えてそうではない、絶妙なスタイルの服を得意としているのは言うまでもない。実は、このように熱狂を集めているブランド達は、決して誕生したばかりというわけではないのだ。今日、市場の最先端に立つ大手レーベルのほぼ全てが、少なくとも10年ほどの歴史を持っている。
メンズウェア業界で成功したいなら、まずは10年地道に努力し続ける覚悟を持つことだ。
それは到底容易なことではなく、「一夜で(長く続く)真の成功を収める」という概念を根底から覆すものだ。第一に、ものづくりの技術を磨くには時間がかかる。最初から完璧な形で誕生するブランドなど極めて稀で、何より、その存在を世の中に広めるのにも同様に長い年月が必要なのだ。
その結果、それなりに実績のあるブランド達が突然新進気鋭のブランドとして扱われるという、奇妙な状況が生まれる。
AURALEE(オーラリー)、SOSHIOTSUKI(ソウシオオツキ)、ssstein(シュタイン)といったブランドが、ここへ来て急に日本のトップファッションの今を象徴する顔として取り沙汰されているが、いずれも2015年か2016年に設立された。デンマークのmfpen(エムエフペン)も、コペンハーゲン・ファッション・ウィーク、2027年春夏コレクションで高く評価されて急速に注目を集めたが、実際には少なくともここ5年近くの間、既に一定の知名度を確立していた。OUR LEGACY(アワーレガシー)に至っては、昨年20周年の節目を迎えたにもかかわらず、優れたセンスの旗手として改めて注目されるようになった。それだけでなく、CAMIEL FORTGENS(カミエルフォートヘンス)がファッション業界で確固たる地位を築くまでには、それ以前の12年大半を要したのだ。
一方で、短期間で熱狂を獲得するブランドがあるのも事実だ。A.Presse(アプレッセ)は今年5周年を迎えたばかりでありながら、既に世界を席巻する勢いを見せている。2019年に立ち上げられたRier(リア)も、いまや世界中の感度の高いショップに欠かせないものとしての地位を確立した。また、CARTER YOUNG(カーターヤング)はセレブリティからの支持をうまく活かして人気を加速させた。
しかし、たいていの場合、本当に優れたものがブレイクを果たすまでには10年かかる。例えば、前述のレーベルは、良いものに目を光らせている人達にとっては定番なものばかり。となるとそのほかの人達は、なぜ今になってそれらに注目し始めたのだろうか?
その原因の一部は、市場で受け入れられるまでに生じるタイムラグにある。AURALEEやsssteinのような優れたブランドが素晴らしいことは一目瞭然だが、入手の難しさや認知度、あるいはその両方の理由により、浸透するのには時間を要する。ショップでの取り扱いを開始し、顧客が購入し、トレンドに敏感な(変化に気づくのは遅いものの)ファッションメディアが、その双方にようやく気づく。さらに、ファッションにあまり詳しくない層の目に留まるほど大きなビジネスを築き上げるには、相応の年月がかかるのだ。
しかし、これこそがファッションウィークが依然として、人と人とを築く場である証拠である。mfpenはいまや、コペンハーゲン・ファッションウィークに参加できるほど確立した地位を築き、CAMIEL FORTGENS(カミエル・フォートヘンス)、AURALEE、そしてsssteinは、パリコレの常連だ。ただ皮肉なのは、メインストリーム(っぽい)成功へと躍り出るためには、そうした大胆な動きが必要だったこと。OUR LEGACYは、STÜSSY(ステューシー)とのコラボレーションやドーバー・ストリート・マーケットでの展開を通じて、より広範な文化圏での地位を獲得し、SOSHIOTSUKIはLVMHプライズを受賞した。どのブランドも常に良いものを作り続けてきたが、世の中に広く認知されるまでには時間がかかったのだ。
残念なことに、全てのブランドが大ヒットという幸運を享受できるわけではない。つまり、優れたブランドが手がける高品質な衣服の多くが、正当な評価を受けられずにいるということだ。その責任は小売業者にも、そして消費者側にもある。未知のブランドを手に取って、明日を担う才能を今日のうちに見つけ出そう。自ら探求する意志さえあれば、そこにはまだ見ぬ素晴らしい服で溢れた世界が広がっている。
- Words : Jake Silbert
- Photography: ©︎ AURALEE / @LIVEINSUBURBIA