ベッカムを生きるということ
日韓ワールドカップが特に印象に残っているのは、自国での開催だからではない。ベッカムフィーバーが巻き起こったからだ。ソフトモヒカンに始まり、年齢・性別問わず誰もがベッカムのスタイルに注目した。デイヴィッド・ベッカム(David Beckham)は、スポーツ、ファッション、後にラグジュアリーと、垣根を崩す契機となった草分け的存在の一人である。
@TUDOR
あれから20年以上もの間、数々のファッションブランドのキャンペーンに出演し、パリファッションウィークではお馴染みのスタイルアイコンとなり、現在ではTUDOR(チューダー)のブランドアンバサダーを務めている。自身のコンフォートゾーンとは異なる分野へのフィールドに踏み込むことを厭わない挑戦者の精神は、TUDORのスピリットそのもの。スポーツの耐久力と、ファッションの大胆さ、父としての偉大さを携えて、ベッカムはベッカムたるべく今もなお走り続けている。
少しシワが増えただろうか。それでも彼のスタイルは永遠(プレミアム)だ。
——最後に日本に来られたのはいつですか?
3年前だと思います。日本に来るときのほとんどがビジネストリップで2〜3日間の滞在なのですが、今回は少し長く滞在することができたので、仕事の日までリラックスできました。
——日本では何をされていましたか?
京都に行って、芸者遊びを体験しました。本当に楽しかったです。金閣寺や竹林に行ったり、いろんな食事にトライしました。ラーメンが大好きなので、ラーメンも食べました。他には(東京で)息子と一緒に古着店を回りました。
——日本で行われたワールドカップの際に、ベッカムさんのスタイルが日本で話題になったのを覚えています。多くの人がベッカムスタイルを真似していました。こうしてお話ができているのがいまだに信じられませんが。
歳をとったということですね(笑)。
——このベッカム旋風は、ファッションとスポーツの垣根を越えて、特にラグジュアリーファッションにおける先駆けだったのではと考えています。今では、ファッションを象徴する一人とも言えると思いますが、境界線を越えて、別のフィールドに飛び込んでいくことは、なぜ重要だと思いますか?
スタイルに関しては、ずっと大好きで意識してきたものです。日本でのワールドカップの時に、私の世代だけではなく、年配の方や子供達まで真似をしていて本当に驚きました。昨日デニムショップに行ったのですが、当時着ていたEVISU(エヴィス)のデニム、いろんな色のものを持っていたのですが、それを発見して、これも話題になったなと思い出に浸ったところです。自分のスタイルをカテゴリーにとらわれず追求していくことで成し遂げられた、TUDORというブランドの家族の一員になれたことを誇りに思っています。
@TUDOR
——ベッカムさんのスタイルのインスピレーションはどこから得ていますか?
その多くが旅の中で得るものです。世界のどこに行ったとしても、何かのインスピレーションを得ています。その中でも日本は特に特別な国だと思っています。何度も来ていますが、ただ街中を歩いても、どんな洋服を着ているだとか、ヘアスタイル、タトゥーなど、ここから何かが始まっている予感がするんです。私の妻も長い間日本に足を運んでいますが、今でもインスピレーションを得ていると、昨日話したところです。ひとつの街に、多種多様なスタイルの洋服やスニーカー、帽子などの店が立ち並んでいて、本当に刺激を受けています。だからこそ、今こうしてまた世界の国々が開かれて、また旅ができることを本当に嬉しく思っています。
——日本のスタイルをどのように見ていますか?
悩ましいですが、常に小さい頃から思っているのは、様々なスタイルの原点は日本にあるのではないかということ。若者だけではなく、年配の方々のスタイルもそうです。それは見るのではなく、実際にここに来て感じないと分からないことです。例えば小道を歩いているときの活気、香り、空気は他のどの国でも感じることができないものだと思います。
——これまでの人生の中で最も恐れ知らずで大胆だった瞬間はありますか?
幸運にもいくつかありますね。TUDORのタグライン「Born to Dare(挑戦者の精神)」を初めから掲げていますが、これはずっと信じ続けてきたことです。子供の頃からいろんなヘアスタイルに挑戦していましたし、歳を重ねてキャリアという意味では、いろんなクラブへと移籍したり、いろんな国に移り住み、いろんな文化や言語を学びました。いろんな食事をすることでさえも「Born to dare」の一部だと考えています。そして何よりバイクが大好きなんです。でも、サッカーをしていた頃は(怪我をしないように)乗ることを許されていなかったんです。サッカーのキャリアを終えてからは乗るようになりました。タトゥーという文化もそうです。いろんな国のタトゥーアーティストを見つけてタトゥーを入れています。日本ではまだ探しているところです。
——日本のタトゥー文化は有名ですからね。最近入れたタトゥーはなんですか?
最近入れたのはどこだったかな……いろいろあると分からなくなりますよね(笑)。
@TUDOR
——次の大胆な挑戦は何を考えていますか?
そうですね……。人生はいつも挑戦をもたらしてくれるものだと思っています。アマゾンでバイクのドキュメンタリー『David Beckham : Into the Unknown』を撮影した時もそうですし、TUDORではフリーダイビングやスノーボーディングなど様々な挑戦をキャンペーンで撮影しています。どんな挑戦も全て本物で、最高でした。なので、次はなんなのか楽しみですが、バイク関連だと嬉しいですね。
- INTERVIEW: YUKI UENAKA