BURBERRYの “ファン” ファーレ:85歳のアーティストがもたらした最高のランウェイ。
クラフトマンシップによって、他ブランドと一線を画したい? それなら、80代のベテラン達を呼び寄せるべきだ。
冗談はさておき、それでもこの戦略が今シーズンのBURBERRY(バーバリー)において絶大な効果をもたらしたのは事実だ。2027年の春夏コレクションは、85歳のテキスタイルデザイナー、セリア・バートウェル(Celia Birtwell)の比類なき才能のおかげで、鮮やかで躍動感に満ちた、批評家からも絶賛されるものとなった。彼女の代名詞である花柄(そして、初披露となる絵文字柄のグラフィック)が、ドレスやシャツ、そして同メゾンのアイコンであるアウターウェアに落とし込まれている。それはロンドン・ファッションウィークにおいて最も華やかで、心底楽しいショーだった。そう、楽しい! みんなその感覚を忘れていないだろうか?
2027年春夏コレクションに向けてバートウェルをピンポイントで起用したのは、同メゾンのクリエイティブ・ディレクターであるダニエル・リー(Daniel Lee)による天才的な采配だった。彼女の “フラワーパワー” プリントは1960年代のロンドンを象徴するものだったが、BURBERRYとのコラボレーションに完璧な布石となったのは、むしろ近年のファッション界への進出だった。2000年代にTopshop(トップショップ)で完売を連発した4つのコレクションや、2013年のユニクロとのコラボをきっかけに、新しい世代のイギリス人達へ彼女のテキスタイルを定着させたのだ。それから10年、20年経ったいま、BURBERRYとのコラボは当時のハイストリートファンに認知されるに留まらず、その親近感をイギリスを代表する高級メゾンへと向かわせることに成功している。
この戦略には、どこかHERMÈS(エルメス)のような雰囲気が漂う。フランスのウルトララグジュアリーメゾンであるHERMÈSは、衣服だけでなく、ウェブサイトのデザインに至るまで、メゾンのアイデンティティ全体に本物のアーティストの力を組み込んできた。リーもその価値を理解しており、プレスリリースで、2027年春夏コレクションには「人間の手仕事の温もりが確かに宿っている」とコメントしている。クラフトマンシップという共通項がBURBERRYをほかの手仕事重視のブランドと繋ぎ止めている一方で、バートウェルの起用は、BURBERRYの新たな転換期のほんの一片に過ぎない。それは、メゾンの「英国性」の継承だけでなく、この国に息づく数多くの伝説的なクリエイター達を巻き込んでいくことこそが彼ら独自の方向性だからだ。
この教訓が定着するまでにはそれなりの時間を要した。2022年にリーがCEOに就任した際、BURBERRYが打ち出した “ブランドエレベーション化” 戦略を忘れてはならない。LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)やCHANEL(シャネル)並みに価格を引き上げた結果、利益が34%も減少したのだ。それから価格をより現実的な水準へと引き下げ、新たなCEOを迎え、英国らしさを取り戻す。こうした再度の軌道修正を経て、ようやくこのヘリテージブランドは軌道に戻ってきた。そしていま、彼らが完全な復活を遂げたことは、もはや疑いようがない。
©︎ BURBERRY
今年、BURBERRYはサー・クェンティン・ブレイク(Sir Quentin Blake)とパートナーシップを組み、彼の “非常にイギリスらしい” 手描きイラストを小規模なコレクションに落とし込んだ。だが、同メゾンがイギリス人に愛されるアーティスト達を起用するのはいまに始まったことではない。グラストンベリーへのオマージュを捧げた2026年春夏コレクションではパメラ・コールマン・スミス(Pamela Colman Smith)のプリントを採用し、2025年春夏コレクションでは、1990年代のヤング・ブリティッシュ・アーティスト運動の中心人物である画家ゲイリー・ヒューム(Gary Hume)を起用した。
さらに、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのような機関や、キム・サンウ(Sang Woo Kim)、タフティング職人のトム・アットン・ムーア(Tom Atton Moore)といった若手アーティスト達への資金援助まで加われば、クリエイティビティを中核に据えた、全く新しい戦略が完成する。
現在のBURBERRYには、ランウェイの枠をはるかに超えた熱量が宿っている。というのも、今シーズンの目玉であるバートウェルのグラフィックが刺繍されたトレンチコートは、単体のアイテムに留まらない。ショーの会場となったチェルシー・カレッジ・オブ・アーツから地下鉄でわずかのところにあるV&Aサウス・ケンジントンでは、無料展覧会『The Burberry Trench: Crafting an Icon』を開催。同メゾンの象徴的なプロダクトをアートの領域にまで昇華させている。英国ファッションを率いるチェックの王に栄光あれ。
- Words: Chris Erik Thomas
- Photography: ©︎ BURBERRY