Calvin Kleinが再びラグジュアリーの世界へ
ヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)こそ、この大役を託すにふさわしい人物だった。ニューヨーク・ファッション界に残る数少ない巨星、Calvin Klein(カルバン・クライン)は、最上級ライン「カルバン・クライン コレクション」の再始動に乗り出していた。2023年のLVMHプライズでファイナリストに選ばれたQUIRA(クイラ)のレオーニは、「クワイエット・ラグジュアリー」の名のもとに語られるほぼ全てのブランドを渡り歩いてきた実力者だ。
アヴリル・ラヴィーン(Avril Lavigne)の言葉を借りるなら、「これ以上、説明のしようがある?」
ヴェロニカ・レオーニのクリエイティブ・ディレクションのもと、カルバン・クライン コレクションが2月7日のニューヨーク・ファッション・ウィークで復活。アレクサンダー・スカルスガルド(Alexander Skarsgard)、ケイト・モス(Kate Moss)、そして82歳にしてなお若々しいカルバン・クライン(Calvin Klein)も出席し、90年代にファッションビジネスとラグジュアリーの両面で圧倒的な影響力を誇った、Calvin Kleinの黄金期を彷彿とさせる瞬間となった。
もっとも、Calvin Kleinが業界の大物でなかったわけではない。アイコニックなアンダーウェアやデニムは今なお圧倒的な存在感を放ち、ソーホーの巨大な広告板がそれを物語っている。ただ、2018年にラフ・シモンズ(Raf Jan Simons)が去って以降の数年間は、(確かに規模は桁違いだが)主にセレブリティ・キャンペーンによってその名を刻んできたに過ぎない。
ヘロン・プレストン(Heron Preston)やウィリー・チャバリア(Willy Chavarria)といった文化人とのパートナーシップは確かに注目すべき点だったが、それでもCalvin Kleinがファッション界で大きな評価を得るには至らなかった。その理由はおそらく、これらのコラボレーションから生まれたアイテムが、主張の強いデザインというよりも、定番としての要素が色濃かったからだろう。
それ自体、なんら恥じることではない。むしろ、ワードローブの基本を極めたからこそ、Calvin Kleinは誰もが知る存在になったのだ。

カルバン・クライン コレクションは、常にほかとは一線を画す存在だった。2019年に静かに幕を下ろしたが、それはCalvin Kleinの最もラグジュアリーなラインであり、ジェフリー・ビーン(Geoffrey Beene)やヘルムート・ラング(Helmut Lang)といったデザイナーが距離を置いた「モダン・ニューヨーク・ミニマリズム」を体現するものでもあった。代表的なアイテムには、スリップドレス、レザーのブレザー、メンズライクなジャケットが並び、いずれもイタリア製。シンプルでありながら洗練されたラインが、その美学を際立たせていた。
2010年代後半、オールドマネー的な趣向はストリートウェアの熱狂に押され、カルバン・クライン コレクションは時代にそぐわない存在となっていた(ちょうどBALENCIAGA(バレンシアガ)が全盛を極めていた頃だ)。しかし今、カルバン・クライン コレクション復活の舞台は、着々と整いつつある。
とはいえ、HELMUT LANG(ヘルムート・ラング)の栄光を復活させようとした最近の試みは、残念ながら思うような成果を上げられなかった。では、カルバン・クライン コレクションは何が違うのか?
おそらく、ヴェロニカ・レオーニだろう。
堅実にキャリアを重ねてきたイタリアのデザイナー・レオーニは、JIL SANDER(ジル・サンダー)、THE ROW(ザ・ロウ)、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が手がけたCELINE(セリーヌ)、そしてMONCLER(モンクレール)の控えめなライン「2 MONCLER 1952」など、名だたるブランドでの実績を誇り、その経歴はまさに「ポスト・カルバン・クライン コレクション」に名を連ねるブランドの数々を歩んできたことを物語っている。
そのため、彼女はラフ・シモンズ時代以来のCalvin Kleinランウェイショーでスタートを切ったカルバン・クライン コレクションにとって、まさに理想的な人材と言えるだろう。
この復活を遂げたカルバン・クライン コレクションは、まるでミシュラン星付きのイタリアンレストランが届ける、ブルックリンのスライスピザのようだ。洗練されていながらも心地よく、ニューヨークを経由してイタリアのエッセンスが感じられる。ドレープの効いたシャツ、重ね重ねに施されたテーラリング、そして膝丈オーバーコートとスクエアトゥのスリングバックシューズを着こなすケンダル・ジェンナー。ウォール街が洗練されたファッションセンスをまとったら、こんな風になるだろう。
無駄のないニュートラルカラーを基調に、暗いトーンが際立つ。その控えめさゆえに、ラペルのないブレザーや袖が手首で切り取られたモックネックのシャツドレスなど、お馴染みのアイテムに加えられたさりげない変化を見逃してしまうかもしれない。
堅実でありながら決して退屈さを感じさせない。ウールのケープ、見事なレザージャケット、ドレープの効いたパジャマ風セットなど、退屈とは無縁のアイテムが目白押しだ。中でも一着のウールコートは、その完璧な構造、質感、シルエットが際立ち、まるでヨーゼフ・ボイスが彫刻したかのような存在感を放っていた。
その真髄を体現するアイテムは? それは間違いなく、Calvin Kleinの象徴であるデニム。ストレートレッグで、時には色褪せた風合いを見せ、シャープな定番アイテムと合わせて、ボリューム感のあるスクエアトゥのローファーを履く。その姿は、まるで90年代が今も続いているかのようだ。
- WORDS: JAKE SILBERT