世界有数のファッションブランドにおいては、微細なディテールこそが印象を左右する。そうした細部の計り知れない価値を誰よりも理解しているのがCHANEL(シャネル)のクリエイティブ・ディレクター、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)だ。彼はBOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)時代にその美学をかたちにし、CHANELにおいてもその視線は隅々にまで行き届いている。とは言えいつものことながら、それに気付くことができるのは、見極める目を持つ人だけなのだ。

彼のCHANELデビューとなった2026年春夏コレクションは当初、壮大なスペクタクルで幕を開けた。新作をまとったモデルたちが巨大な天体のアッサンブラージュの下を歩く。しかしその本質は、見過ごされがちな一瞬にこそ息づいている。そして言うまでもなく、私達はそれを見逃さなかった。

今回のキャンペーンもまた、華やかな仕掛けが施されている。映画『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)監督と、写真家のクレイグ・マクディーン(Craig McDean)が、カイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)(本人もカメオ出演している)の楽曲に乗せてマーゴット・ロビー(Margot Robbie)を捉えた、美しくも壮大な演出だ。

それでもなお、中心にあるのはあくまで服。ブレイジーの世界ではいつもそうだ。高品質のプロダクトという土台がなければ、このラグジュアリービジネスは簡単に崩れ落ちてしまう。しかし彼は、単に質の高いものだけでなくその周囲、そして自身さえも引き上げるような美しい製品を生み出す。

© chanel / Craig McDean

そして一部のCHANELファンにとって今回の目玉は、「CHANEL 25」ハンドバッグとそのミニサイズだろう。ウォッシュドデニムからクラシックなキルティングレザーまで、そのバリエーションは幅広い。しかし、目を向けるべきは細部なのだ。

© chanel / Craig McDean

そうしているうちに、CHANELの象徴的なロゴがさりげなくあしらわれたいくつかのディテールが目に入り、思わず笑みがこぼれた。そのどれもが巧みにアレンジされていて、ブレイジーの手仕事に宿る緻密さを際立たせていたからだ。

黒のシルク製プルオーバーシャツは単体でも目を引く存在だが、袖の下にゴールドのダブルCを忍ばせている。クラシックなウォッシュドジーンズには、ロゴを模したボタンがあしらわれ、さらにアーキュエート(バックポケットの装飾ステッチ)が、連なるCへと再構成されている。そして留め具のない夏用カーディガンは、一見CHANELを想起させる要素がないようだが、切りっぱなしの仕立てを通じてメゾンを象徴するツイードの質感を、さりげなく再現している。

これは従来のラグジュアリーを超える、極めて高度な服作りと言える。そこでは、しばしばプロダクトそのものが目的化してしまうのだ。だがブレイジーの手にかかれば、それらは単なるプロダクトやロゴにはとどまらない。