life
Life beyond style

@Andrew Dahling

チャペル・ローン(Chappell Roan)は、世間全般はもちろん、人気メイクアップアーティストの間でも人気のアーティストだ。

新人スター、ローンのデビュースタジオアルバム『The Rise and Fall of a Midwest Princess』は2023年にリリースされているが、彼女のことがインターネットで話題になるようになったのはつい最近になってからのことだ。目下彼女はページェント・クイーン、80年代ポップスター、ロデオ・カウボーイのあらゆる要素を眩いドレスやボディスーツに落とし込んだような、大胆でゴリゴリのスタイルでソーシャルメディアを熱狂させている。主張が強いのは衣装だけでない。衣装に合わせたカラフルなメイクも惜しまない。

6月のガバナーズ・ボールへの出演時、ローンへの熱狂は最高潮に達した。巨大なリンゴの中からステージに登場した彼女は、その巨大フェイクリンゴさえ霞むほどの緑色ボディペイント、トゲトゲの緑色の王冠姿で、活気溢れる劇場型パフォーマンスを披露した。

@1824official chappell in the big apple 🍎 @chappell roan had the entire crowd dancing at #govballnyc day three! #chappellroan ♬ original sound – 1824

ニューヨークをテーマにしたこのルックの完成は一大事であった。手がけたチームの主要メンバーで28歳のメイクアップアーティスト、アンドリュー・ダーリング(Andrew Dahling)は、ローンのヴィジョンを具現化するいわば現代版クラブ・キッド(派手な行動と奇抜なコスチュームで注目され、90年代ニューヨークのダンスクラブで活躍した若者)だ。

HIGHSNOBIETYではダーリングに、美容業界での経歴、チャペル・ローンの世界との出会い、そしてブレイク中のスター、ローン向けに使用しているお気に入りプロダクトについて尋ねた。

——経歴についてお伺いしたいのですが、メイクアップアーティストの世界にお入りになったきっかけは?

メイクは自分の一部。8歳の頃、家に一人残された時、母の化粧ポーチを真っ先に探った。その頃、絵を描いたりもしていたのだけれど、大体グラマラスな女性の絵ばかりだった。ばっちりメイクの目もとで、唇もふっくらの。その文化に実際に触れる前から既に自分なりにグラマラスな世界を想像していた。

5年前にニューヨークに引っ越してきた頃には、エディトリアルファッションの世界で出世して、空想の世界のようにきらめいた暮らしをすることを夢見ていた。メイクアップアーティストが活躍する世界の一員になって、アイコニックな瞬間を創り出したいと思っていた。

僕もクラブ・キッドのようなもの。80年代から90年代にかけてのサブカルチャーはとても刺激的だった。ある意味その夢を実現したと言えると思う。(ナイトライフのアイコンたる)スザンヌ・バーシュの下で働いているんだから。自分自身、突飛なルックをいろいろと試している。他の仕事をすることは考えられない。

——大学では美術を専攻なさっていたのでしょうか?

いや、ミュージカル専攻。

——ということは(メイクアップは)完全に独学ということですね?

そう、完全に。

——単なるコンシーラー使いや色彩補正というレベルに留まらない芸術性に溢れたお仕事をされていますが、ご自身のメイク手法についてご説明いただくとするとどうなりますか?

メイクの過激派みたいなものかも知れない。メイクでハイパーフェミニンなファンタジーを作り上げるのは大好きだけど、顔はキャンバスだと考えていて、メイクに制限はないと思っている。盛れば盛るほど楽しい、というか。

——チャペル・ローンさんとのお仕事が最近非常に話題になっていますが、そもそもお知り合いになったきっかけ、一緒に仕事をするようになったきっかけはどんなことだったのしょうか?

彼女のファッション・ディレクター兼スタイリストのジェネシス・ウェブ(Genesis Webb)と、LAの撮影現場で知り合って、ボディペイントができるかと尋ねられた。何度かしたことがあると話したので信頼してもらえた。自由の女神のルックで、顔のメイクのクリエイティブはこちらで決めさせてもらった。あまりアヴァンギャルドにし過ぎないようにしたかったので……まつげのディテールを尖らせて、自由の女神の王冠に見立てた。グリーンに合わせるとなると、モノクロにしないと全体がゴチャついてしまう。神経を使ったけれど、とても楽しかった。

——ネット上に好意的な反応が溢れていますから、感慨も一入なのでは。

これほど露出度の高い人のメイクを手がけたのは初めてで、あれから数日はずっとネットに張り付いて、投稿されるものを隅から隅まで全部見ていた。一瞬、虜になってしまった。

——チャペルとの間には相乗効果があるようにお見受けします。アンドリューさんもクラブ・キッドのシーンからインスピレーションを受けたとおっしゃっていましたし、チャペルも最近のインタビューで自分がドラァグクイーンだと自覚していると話していました。

ドラァグというのは、いろいろなものを包括する言葉だと思う。『ル・ポールのドラァグ・レース』よりさらに前の20年前くらいの時代と比べると、今は定義がとても曖昧になっている。多種多様なドラァグアーティストが出てきている結果、ドラァグというものがとても魅力的になっている。女性の真似ではなくて、どういうものであっても良いという時代になっている。

僕達がしているような極端で大袈裟なメイクはドラァグと呼ばれがち。眉毛を接着剤で貼り付けたり、眉骨を高くしたり、クリースカットをしたり、グリッターを入れたり。ドラァグの要素はとても強いのだけれど、どのルックも、自分達の今の礎を築いてくれた人達やサブカルチャーに敬意を表している。

——チャペルのメイクを取り入れたいと思っている方向けに、彼女向けによくお使いのコスメがあれば教えていただけますか?

一番特徴的なのは、オフホワイトに近い淡いベース。気に入っていつも使っているブランドはDanessa Myricks Beauty(ダネッサミリックスビューティ)。真っ白に仕上げたい場合には、Vision Cream Coverのファンデーションの「TW」がいい。

オフホワイトで色白に見せたいなら、できるだけ明るい肌色を使ったほうがいい。Danessa Myricks Beautyには、ヤミースキンセラムファンデーションというファンデーションがあって……(ジミー・ファロン出演時にチャペルに)使った色は1P。透明感のある肌にしたかったので。

——個人的に手放せないメイク用品はありますか?

黒のアイペンシル。出かける用があるときに、メイクが面倒だけど、かわいくておしゃれに見せたいというときは、黒のライナーを目の下からまつげの生え際までしっかり引く。

——ブランドでお好きなものは?

MAKE UP FOR EVER(メイクアップフォーエバー)のアーティストカラーペンシルがお気に入り。