art

香港の「HKDI」ギャラリーは、展開する「#DesignUnfold」プログラムの一環として、日本人デザイナー藤原大による香港での初単独展覧会「Dai Fujiwara The Road of My Cyber Physical Hands」を開催する。

#DesignUnfoldは、国際的な美術館や機関、デザイナーとの提携を通じてデザイン教育の推進と業界のエキスパート、学生、デザインの愛好家の間の対話の促進に尽力したプログラム。藤原は、江ノ電の車両デザインや日立製作所のプロジェクトなどでも活躍しており、衣服から製品デザイン、地域経済の活性を目的とした共創プロジェクトまで様々な創作を行なっている。

今回の展覧会では学生時代の初期の作品から直近の未公開創作物まで焦点を当て、手作りによるモノづくりから始まり、徐々にデザイン工学に領域を拡大した藤原のクリエイティブなキャリアを覗くことができるという。出発点となる「手」という概念を取り上げ、藤原が⻑年魅了されてきた人間の手や、一貫して調査・探索してきた「未来の手(テクノロジー)」を紹介。

会場内を3つのエリアに分け、マルチメディアの要素を備えた合計で34の展示にフォーカス。第1エリアでは、過去と直近の24作品をまとめて展示し、第2エリアでは、様々なカラーハンティングプロジェクトを紹介。 新作である江ノ電の仕事をインスタレーションした作品も並び、来場者が「登場」できる画期的な装置も設置したという。

第3エリアでは、サイバー空間での創造性を現実の世界に具現化した新作を紹介。手を使って洋服を創り出す代わりにさまざまなロボットを操作し、「ゴミから糸へ – 草原のセーター、都会のセーター」コレクションでは、自分の新しい両手として手のひらサイズの掃除機を使ってゴミに新たな生命を吹き込んだ。

モンゴルで動物が落とした毛や、ニューヨーク・東京の街のゴミを集め、これらを紡いで糸を作り、8着のセーターをデザイン。マルチメディアに没入する経験を通じて衣服を創造するプロセスにおける藤原の視点を体験できる。同展の名称にもなった「サイバー / フィジカルの手(Cyber Physical Hands)」を創り出すために、手の延⻑としてのドローンも採用。色材をドローンに組み込み、その色材を生地に落としてパターンを描くように電脳身体操縦することで、ドローンが描いた布から創り出された衣服作品がテクノロジーの活用と融合した未来のデザインのあり方を示す。

作品内の映像では、アンリ・マチスが、木炭をスティックに取り付けてマリア像を描口という写真を用いており、藤原は「マチスは、単なる棒を使って描いたのではなく、高い壁に絵を描くだけのこともなく、心の表現にマッチする道具を選んで描いたのだ。彼が手にしているのは、棒ではなく、デバイスとして捉えるとこれからの未来とつながる。この作品はアンリ・マチスのオマージュである」と語っている。

展覧会の終盤には藤原へのビデオインタビューを用意し、さまざまな分野のデザインを通 じた自身の旅や、過去、現在、未来の垣根を曖昧にさせたいという探求心について詳しく紹介。「2021年、それ以降も世界は引き続き多くの課題に直面するかもしれないが、困難を乗り越え、独自の視点と価値観を、空のように絶え間なく生み出すこと」が同展の狙いだと藤原は最後に語っている。藤原自身のオンラインギャラリーツアー「Dai Show& Tell / 作家のギャラリーツアー」も3月中に4回開催予定。

Dai Fujiwara The Road of My Cyber Physical Hands
会期:〜3月28日(日)
会場:HKDI Gallery Hong Kong DesignInstitute
住所:3 King Ling Road Tseung Kwan O, NT Hong Kong

Dai Show& Tell /作家のギャラリーツアー
会期
3月6日(土)20:00
3月7日(日)11:00
3月13日(土)20:00
3月14日(日)11:00