新進気鋭ブランド「(Di)vision」のすべて
これからくるブランドへの爽やかなセレブレーションシリーズ「The Wave」ではHIGHSNOBIETYが注目する、世界を変える最先端ブランドにスポットライトを当てる。
(Di)vision (ディヴィジョン)と初めて交流したのは2019年のことだった。コペンハーゲンで2年に一度開催されるファッションウィークのショーの合間に、姉のナナと共にブランドを創立したサイモン・ウィックと地元のカフェで会う機会を持った。車から降りた彼が連れ立って現れた、モデルでアーティストのアントン・ティムケと、ジュエリーブランド「HANREJ」の創立者カスパー・ニールセンは、数日前に互いに墨を入れ合ったという新しいタトゥーを自慢そうに見せていた。後から、ウィックとティムケのパートナーで2人ともモデルのサラ・ダールとニナ・マーカーも合流した。
錚々たる面々だ。この全員が、他の友人やコラボレーターと共に、今月、(Di)vision のシグネチャーであるアップサイクルスプリットボンバー、ウォッシュ加工のフランネル、ピアスロゴキャップ姿で(Di)visionのデビューファッションショーに登場した。そこにはブランドを構成するメンバーへのコミットメントが見て取れた。ブランド主催のディナーにも全員が出席した。ナナとはその場でようやく初対面を果たすことができた。
「ユニークピース、シーズナルピース、オールドピースを織り交ぜたよ。昔ながらのシーズンに縛られずにね。発売はショーが終わってすぐのものも、1カ月くらい経ってからのものもある。店頭販売が2022年春予定のものもあれば、もう完売しているものもある。」ショーについてウィックはそう語った。(Di)visionのショーは朝9:30に始まり、コペンハーゲンファッションウィークのオープニングを飾った。屋根の上から街を見下ろすようにロックバンドが登場する演出だった。「キャストは全員自分達のコミュニティで構成した。どこかから新たにモデルを呼ぶのではなくて登場人物達に歩いてもらおうと思った。ルールには従わない」
環境責任を行動原理とし、ブランドを支える人材が有機的にプロモーションを行い、独自のペースで販売を行う(Di)visionというブランド。そんな(Di)visionがファッション業界のこれからを形作っていってくれることを願いたい。コペンハーゲンファッションウィークでの圧巻のショーが終わって12時間も経たないうちに、Highsnobiety は(Di)visionのスタジオを訪れ、サイモン・ウィックと、ブランドのあれこれについて話し合った。
(Di)visionの創立
「ブランドを創立した2018年当時はまだ18歳で、コペンハーゲンのStormで毎日洋服を売っていた。何か自分のビジネスがしたいと思っていた。洋服作りには経験もバックグラウンドもないから、アプローチを変えようと思った。あちこちのブランドがしていた(洋服の)アップサイクリングを見て、ゼロから自分で作るよりはやりやすいだろうと思った。縫製も何も一切経験がなかったから。だからサステナブルファッションデザインの学位を持っている姉のナナに手伝ってもらって最初のプロダクトやサンプルを作った。2018年に、まだ当時働いていたStormで初めてのスプリットボンバージャケットを発売したら一気に成功した。その半年後に姉と一緒にフルで(Di)visionの仕事をすることに決めたんだ」
反響
「当時はスニーカーをたくさん売っていたから、知らない人に対して物を売ること自体が可能だということは知っていた。ただ自分のデザインしたものを売れるかどうかは分からなかった。でも立ち上げ当初から、友達が大勢Instagramに投稿してくれていて、かなり盛り上がっていた。(遂に)店頭ローンチをしたときは、スプリットボンバージャケットを買う地元の若者の列ができた。観光客の人も買いに来てくれて、かなり早く完売した。自分の働いていた店で自分の作ったものを売るっていうのは面白い体験だったし、なかなかないね。価格帯は他の(高級)ブランドみたいな3,000ドルとかじゃなくて300ドル前後。
知らない人が着てくれる
「モデルを仕事にしている友達も大勢ジャケットを着てくれて、ファッション業界の人にもたくさん買ってもらえるようになった。ファッションウィークで撮影されたストリート写真を見ていたらうちのプロダクトを使ってくれている有名モデルが10人もいた。どんなメディアを見ても必ずうちのアイテムが使われていたよ。そのくらい浸透していた。知らない人達まで着てくれていた。まだ当時はそこまで売れていたわけでもなかったのに。だから少ない量でも、届けるべき人に届けてアクセルをかければ、すごいことができるんじゃないかなと感じたね」
売れる秘訣
「いろいろな要素が融合していると思う。立ち上げ当初の自分たち(のクルー)のバイブが(成功に)影響したところは大きい。それ以後いろいろあった。1年半くらい前だと、(Di)visionというブランドが買ってもらえるいちばんの理由は僕達というグループ自体だったと思う。その後は、コストを削減しながら新しいプロダクトをたくさん出していくビジネス作りが効いたんだろうね。リサイクルショップみたいな感覚で、店内で何が見つかるか分からない。そんな驚き満載で、ブランドのバイブそのままの世界を作りたいと思った。ユニークピースを最初に作り始めた頃は、アイテム数を多くした。ウェブでも毎週何百アイテムも出して、毎回驚いてもらえるような世界観にした。それでファッションの見方が変わって、いいと思ってもらえたんだと思う。ヴィンテージものを買っている感覚、自分だけのものを買った感覚が味わえる」
カテゴリーの追加
「もうすぐ発表の秋冬コレクションでは、それぞれのプロダクトでバージョンを増やす。20とか80とか。最近ケンダル・ジェンナーがうちのパンツを履いてくれたけれど、もう完売だったんだ。だからもっと数を増やそうと思った。前はすごく自信がなかったんだけどね。ユニークピースであることが大事なのかなと思っていたから、そうすると数を増やすというのは成り立たないし。でもあのパンツで自信が持てた。気に入ってもらえているのは、うちのブランドとかストーリーとかデザインとかエネルギーなんだと分かったから。
コミュニティ形成
「自分自身、どこかのブランドが好きになる理由は必ずしもデザインそのものというわけじゃなくて、ブランドにまつわるコミュニティが好きになることでそのブランドが好きになる。(Di)visionもそういう存在にしたかった。だからコミュニティ関係の撮影やコンテンツ作りをたくさんしている。誰かが (Di)visionを着た写真をシェアしてくれたら、ブランドとしても必ずシェアする。スーパーモデルでも、イギリスの小さな街のフォロワーが10人しかいない人でもコミュニティの一員であることには変わりない。Supremeなんかもそういうインクルーシブさがあって、そこが好きだった」
ラグジュアリーの未来
「ラグジュアリーのレベルはマネージしながらも、インクルーシブではあるように(考える)必要がある。あるべきはマーク・ジェイコブスのヘブンみたいなブランドだ。サブブランドではなくてコミュニティを作っている。他のラグジュアリーブランドもそこから学べるところはあると思う。ルイ・ヴィトンもヴァージルと、ディオールもキム・ジョーンズと、コミュニティを作る活動をもっとしてもいいんじゃないかな」
消費者を認める、承認する
「全てに対して心を込めて消費者に愛されていると感じてもらえるような体験を提供するように。良いお客さんにはお返しに無料で何かを贈ったり、ディスカウントコードを発行したりする。質問をもらったときは必ず答える。もっと心を開いて両手を広げていかないとね。ブランドの方がお客さんより上だなんて絶対に思わないこと。お客さんなしにはブランドは成り立たないんだから。でもお客さんの方からタダで何かくれと言われるのは好きじゃないしそういうのには応じていない」
(Di)vision のこれから
「今いちばん難しいと思っているのはいかにコアバリューを損ねることなく規模を拡大するかということ。ひとつずつ完売させるスタイルを忘れれば大事なものを見失う。(Di)visionのユニークプロダクトは規模的には拡大できない。自社工場を作って10倍くらいの生産量にするとしたら人も10倍雇わないといけない。そこは少しやり方を考えないといけない。早く成長したいけれど、着実に進めたい。いきなりジーンズ1,000着の注文が入ったとしても、サステナブルな形で納品ができなければ、そのオーダーは受けない。そういう姿勢を示したいんだ。それこそが今求められているものだと思うから」
- Words: Christopher Morency
- Translation: Ayaka kadotani