Supremeコミュニティに広がる動揺。
Supreme(シュプリーム)に対して誰よりも批判的になるのは、Supremeを愛するファン自身だ。低迷期と好調期の振り幅が大きいことこそがまさにストリートウェアの本質なのだ。そして今、Supremeは再び全盛期にあり、今年初めに発表された客観的に見ても文句なしのコレクションと、現在少しずつ展開されている新たなコレクションによって、長く続いたスランプを見事に脱している。
まさに最高の状況です。ただし、Supremeの元チーフ・クリエイティブ・オフィサーであるエリン・マギー(Erin Magee)に言わせれば、なんとも複雑な状況だろう。とはいえ、彼女にとっても良い時期ではあるはずだ。
というのもマギーは、8月下旬にSupremeを去ったすぐ翌週にキム・カーダシアン(Kim Kardashian)が率いる大手シェイプウェアブランド、SKIMS(スキムズ)に加入したからだ。Supremeをやめたときと同様に、そんなに単純なことではなかった。
当初、マギーのSupreme退任はあまり注目されなかった。Supremeらしくプレスリリースはなく、マギー個人のInstagram投稿のみ。しかし、r/SupremeClothing(海外の大手ネット掲示板Reddit内のSupremeコミュニティ)にいる信者達(ちなみに有名なr/Supremeの方は “大荒れ” 状態と言われている)に見つかると、あっという間にインターネット中から徹底的に議論されることになった。(HIGHSNOBIETYはマギーにコメントを求めているところだ。)何しろほかでもない、Supremeの話なのだから。
まず認めておきたいのは、王者を批判するのは簡単で、誰にでもできるということ。数年前に「Supremeは終わった」と宣言したときほど、反発(正直なところ、同じくらいの支持)を受けた記事はこれまでにひとつもなかった。もちろん、私の見立ては正しかったわけだが。そしてこの「Supremeは終わった」という言葉は、2010年代初頭にタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)やオッド・フューチャー(Odd Future)がブランドの知名度を上げる以前から、ストリートウェア界隈では既に一種のミームのようになっていた。しかしその後2020年代初頭までに、Supremeの存在は輝きを失ってしまった。
親会社の度重なる再編が引き金となったであろうハイプの衰退と、話題性に富む若手新鋭ブランド達の台頭のダブルパンチにより、Supremeのカルチャーにおける支配力は低下し、STÜSSY(ステューシー)やMSCHF(ミスチーフ)といったブランドの躍進を許す結果となった。当時のクリエイティブ・ディレクター、トレメイン・エモリー(Tremaine Emory)は “構造的人種差別” を理由に就任からわずか1年で退任。THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)のような大手ブランドとのコラボレーション商品がECサイト上に留まり続けるなんて、5、6年前であれば到底考えられない事態だ。そして、熱狂的なアパレルブランドの象徴であったSupremeが衰退の兆候を見せたこと自体が、大きなニュースとなった。
マギーは、Supremeのあらゆる局面を見届けてきた。2004年に入社して以来、ブランドそのものを歴史的な絶頂期――2010年代初頭、Supremeはストリートウェア文化、ひいてはファッション界全体の真の頂点に立っていた――へと導き、それだけでなくどん底の時代も乗り越えてみせた。(彼女はまた、先見の明を発揮して2007年にストリート志向のウィメンズウェアブランド、MadeMe(メイドミー)を立ち上げた。)WWDによると、SKIMS初のチーフ・デザイン・オフィサーとして、「急成長するカテゴリーと市場全体において、デザインおよびクリエイティブな商品戦略を担当する」とのこと。まさに彼女に適任だ。
それでも、ネットの議論に深い文脈を期待するのはやめた方がいい。
マギーの退社が話題になったRedditやそのほかのプラットフォームにおいて、コメント欄の意見は大きく割れていた。彼女の偉大な長年の功績を称賛する声がある一方で、マギーが載せた集合写真に写るSupremeスタッフ達が “スケーター” らしくないと不満を漏らす声もあった。さらには同写真における明らかな多様性の欠如を指摘し、かつてのエモリーの辞任理由を引き合いに出すコメントまで寄せられた。
結末は初めから決まっていたようなものだ。なぜなら、これがSupremeだから。Supremeを文化的な巨大ブランドへと押し上げた女性が、その手腕をキム・カーダシアンのアクティブウェアブランドで振るうというニュースは、彼女のSupreme退任時ほど大きな反響を呼ぶことはないだろう。というのも、今回のニュースはあくまでSupreme周辺で起きた出来事に過ぎないからだ。しかし、キム・カーダシアンのアパレルブランドがまさにSupreme化しようとしている事実についてはどうだろうか? それは、本物の信者達がパニックに陥るのに十分な話題だろう。
- Words: Jake Silbert
- Photography: ©︎ BACKGRID