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From the ground up

Getty Images / Christian Vierig

本記事の記述は著者個人の見解である。

この数年でメンズファッションが著しい変化を遂げた。この短期間に、様々なトレンドが移ろっていった。アスリージャーやノームコア、スケータースタイルなどのストリートウェアが台頭し、メンズファッションとスタイルに大きな変化を与えた。その変化は足元だけには及ばない。

転売市場や話題を呼ぶコラボレーションもあり、スニーカーは巨大な産業へと成長した。スニーカーデザイナーとして、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)やカニエ・ウェスト(Kanye West)、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)などのセレブリティを生み出し、業界でも重要な存在となった。一方、トップセレブリティは、手練れのスタイリストと共に、最新のスニーカーを誰よりも早く手に入れることに躍起になっている。

数え切れないほどのスニーカーが日々リリースされている中、一部のフットウェアとファッションブランドは、この状況から一歩身を引き、これに取って替わるアイデアを模索している。ダブルモンクストラップが復興しているとは言えないが、ブランドはスニーカー主義から距離を置き、投資価値のある別のオプションを選択することもできる。アスレチックシューズだけが支配する世界には、興味が持てない。

今のスニーカー界において、ファッションに興味を持ち始めた若者を狙ったCommon Projects(コモンプロジェクツ)風のホワイトスニーカーを行商しているブランドがごまんとある。一方、ADIEU(アデュー)のように、クラシックなスタイルに新たなツイストを効かせる方法を編み出したブランドも存在する。

ほんのわずかであるが、スニーカーが主流ではなくなってきているという説もある。ブランドたちの今の動向を見れば、その観点も納得できるのだろう。Palace(パレス)は少しクラシックなローファーを継続しており、前シーズンのフェイクスネーク柄のローファーが印象的だった。Noah(ノア)は、毛羽立ったスエードのローファーを重たくないカジュアルなカラーで提案した。Balenciaga(バレンシアガ)はアイコニックなスニーカーTriple Sを生み出したが、最新のブーツは、オーバーサイズのミッドソールに、多色のスムースレザーを採用した。

Getty Images / Christian Vierig

ニューヨーク発の人気ブランドEngineered Garments(エンジニアド ガーメンツ)も、Dr. Martens(ドクターマーチン)とコラボレーションをして強固なソールを作り、アメリカのフォーマルシューズの名門G.H. Bass & Co(ジー・エイチ・バス)とのコラボでも、スニーカーからかけ離れたスタイルを発表した。エディ・スリマン(Hedi Slimane)が手掛ける新生CELINE(セリーヌ)でも、フォーマルスタイルの復活が垣間見えた。世の中の動向に敏感であるなら、ベルジャンローファーの支持者は未だ多いということが分かるだろう。

スニーカーは一夜にしてなくなるとは思わないし、Allen Edmonds(アレン・エドモンズ *公式通販サイト)のシューズが3倍値上がることもないだろう。しかし、毎回のスニーカー発売紛争にウンザリしている人たちにとって、プレッピーシューズの波は続くだろう。

この数ヶ月で、自分もいくつかレザーローファーを入手した。旬なスニーカーを買うのとはまた違った感じである。スニーカーボックスを高く積み上げたり、眠ったままのスニーカーが何足もあるわけでもなく、ローファーは履き慣らし、機会を選んで履くものである。貴重なデニムを履けば履くほど味が出てくるような感じ。

Palace

限定スニーカーから革靴に移行するのはすぐには難しいと思うが、クローゼットのバリエーションが増えたのは事実である。自身のスタイルを激変するのに億劫な人たちにとって、ローファーは良いきっかけになるだろう。

ペニーローファーやベルジャンローファー、タッセルローファーは、Vans(ヴァンズ)のスリッポンの代わりになるだろう。スリッポンを履いたことがあるのなら、クリスプ ローファーも簡単に着こなせるだろう。カットオフデニムかストレートのワークパンツ、ソックスなしかカジュアルなソックスを合わせれば、抜け感も出て、格式張った感も薄まる。

デザイナーたちが新しい素材やよりチャンキーなパターンを取り入れ、フォーマルなシューズをより手にしやすく、カジュアルな形に仕上げてきた。父親のクローゼットから引っ張り出した黒のレザーローファーのようなものではなく、毛羽立ったスエードやアニマル柄、風変わりな色合いのものでカジュアルなものを選ぶといいだろう。

Highsnobiety / Asia Typek

ポストスニーカーとなっていくものは、自然な形でやってくるのかもしれない。まだ歳をとっているとも言えないが、10代だったのも2、3年前の話でもない。だが、結婚式の時にミニマルにスニーカーを履くのがかっこいいとは思いもしなかった。だが、パテントレザーのようなスーパーフォーマルでいくということでもなかった。それ以前に、パテントレザーは履こうとはしないだろう。代わりに、GUCCI(グッチ)のヨルダーンローファーを奮発したのは、結婚式の後も他の洋服に合わせて履けると分かっていたから。

年齢を重ねると、流行に左右されにくく、より幅広いワードローブのために、より長持ちするものを買う傾向にある。しかし、それはスニーカーを買わなくなるということではない。履き心地の良いシューズはいつになっても必要とされるから。スニーカーとフォーマルシューズが共存する世界に一歩踏み出してみるのもいいだろう。