異なるものをかけ合わせる。ラグジュアリーとストリート、スポーツとモード、ハイとロー。遠く離れたものほど、その意外性は分かりやすい。

似たもの同士をかけ合わせたら、何が起こるだろう。

GapとA.P.C.。共にデニムやTシャツ、スウェット、シャツといったタイムレスな定番アイテムを軸に、長く着られるベーシックを追求してきたブランドだ。派手な装飾によって個性を主張するのではなく、日々のワードローブをどう美しく、心地良く成立させるか。その意味では、両者はよく似ている。

しかし、2つの「ベーシック」は同じではない。Gapの背景にあるのは、エフォートレスなアメリカンカジュアル。A.P.C.が培ってきたのは、細部まで意識を行き届かせたフレンチベーシックだ。

今回のコレクションでは、その微差を消すのではなく、交換する。Gapの自然なカジュアルさにはA.P.C.の洗練と細部への意識を。A.P.C.にはGapが持つリラックスしたスタイルを。ウールのアウターやテーラードジャケットといった、従来のGapから少し踏み出したアイテムも生まれた。

対極にあるものを衝突させるのではなく、よく似たふたつのベーシックを重ねることで、それぞれの輪郭を浮かび上がらせる。

タイムレスは、つくれない

GapとA.P.C.を結ぶもうひとつの言葉が、「タイムレス」だ。だが、A.P.C.創業者のジャン・トゥイトゥと共同創業者のジュディス・トゥイトゥはこの言葉について、

「タイムレスなものを
意図的につくることはできない」

と語っている。なぜなら、現れては消えていくことこそがファッションの本質だからだと言う。デザイナーが「タイムレスな服をつくろう」と宣言したところで、その服が時代を超えるわけではない。彼らにとってタイムレスとは、長い時間を生き延びた結果として、初めて獲得されるものなのだ。

タイムレスとは、服そのものに最初から備わった性質ではない。それを着る人がいて、社会が変わり、文化が移り変わってもなお選ばれ続ける。その時間の蓄積によって、後から与えられる価値なのだ。

タイムレス——過去から届くサイン

だから、タイムレスであることは、変わらないこととも違う。

「過去は、私達にサインを送ってくる。
私達の仕事は、そのサインを見つけ、
現在の美意識へと翻訳すること」

今回、彼らはGapのアーカイブにそのサインを探した。 しかし、参照した過去は服だけではない。ジャンとジュディスが最初のムードボードに並べたのは、『卒業』のダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman)、『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグ(Jean Seberg)とジャン=ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)、そしてフランスの伝統的なボーダーTシャツをまとったアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)とイーディ・セジウィック(Edie Sedgwick)。アメリカとフランス双方から選び抜いたカルチャーアイコンによって、今回のコレクションに必要な方向性を定めていったという。その着想は制作の最後まで貫かれ、やがてコレクションのためのショートフィルムへと発展した。

アメリカンカジュアルとフレンチシック。カルチャーは、国境できれいに分けられるほど単純ではない。フランスのボーダーはニューヨークで別の態度をまとい、アメリカのスタイルもまたフランスの視点から読み替えられていく。異なる時代や場所を移動するたびに、同じ服やスタイルに新しい意味が加えられてきた。

つまり、カルチャーは保存されることでタイムレスになるのではない。引用され、解釈され、別の時代へと手渡されることで生き続ける。

A.P.C.はGapをフレンチに塗り替えたわけではない。GapもA.P.C.をアメリカナイズしたわけではない。Gapの自然体なカジュアルさにA.P.C.の洗練とディテールを重ね、A.P.C.にはGapのリラックスしたスタイルを取り込む。それは互いの違いを消すことではなく、互いの過去を別の視点から読み直すことだった。過去をコピーするのではなく、現在へ翻訳する。2つのベーシックが交わる意味は、そこにある。

A.P.Cが考える、タイムレスの条件

A.P.C.創業者のジャン・トゥイトゥと共同創業者のジュディス・トゥイトゥインタビューにインタビューを敢行。

——GapとA.P.C.は、ともに日常に根差したタイムレスなベーシックを作り続けてきたブランドです。今回、Gapとコラボすることに、どのような必然性や面白さを感じましたか?また、Gapのアーカイブやアイデンティティの中で、特に惹かれたものはなんでしたか?

両ブランドは、それぞれ1969年と1987年の創業以来、同じ歴史やマーケットを共有してきたわけではありません。しかし、どちらも「スマートでありながら、同時にカジュアルである」ための服を提供することを目指してきました。一見すると矛盾するようですが、そこには大きな挑戦があります。その課題に共に取り組めることに、とても魅力を感じました。特に、ウールのアウターやテーラードジャケットなど、従来のGapの世界観にはなかったようなアイテムを形にしていくことは、とても興味深いものでした。
また、国際的に、幅広い人々へリーチできるGapというブランドの普遍的なアイデンティティにも強く惹かれました。

——ジャンさんは今回、「シックでありながらカジュアルであること、カジュアルでありながらシックであること」のバランスについて語っています。GapとA.P.C.にはともに「ベーシック」という共通点がありますが、その背景にはアメリカとフランスという異なる文化があります。お二人にとって、この2つの文化における「定番アイテム」には、どのような違いがありますか?

フレンチスタイルとアメリカンスタイルの違いは、その多くがスタイリングにあると思います。フレンチスタイルは、もう少し慎重で、プレッピーな傾向がある一方、アメリカには、私達がとても魅力を感じる、自然体でリラックスした姿勢があります。例えば、Gapのフーディやキャップ、トートバッグは、まさにアメリカンスタイルの定番です。
今回私達は、Gapが本来持っている自然なカジュアルさに、洗練と細部への配慮を加えながらも、A.P.C.のファッションへのアプローチには、よりリラックスした感覚を取り入れることで、このふたつの視点を揃えていきました。

——今回のコレクションでは、Gapが持つアイコニックな要素をA.P.C.の視点から再解釈しています。コラボを進める上で、「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」をどのように判断しましたか?

私達を突き動かしたのは、Gapのクラシックなアイテムを、非の打ちどころのない素材と仕上げによって、A.P.C.独自の視点から解釈したいという思いでした。
例えば、Gapを象徴するトートバッグには非常に上質なキャンバス地と刺繍を用い、カシミアのセーターや、もちろん日本製デニムも取り入れています。
いわゆる「ディテール」の一つ一つに徹底的にこだわりました。それこそが良い服を作る鍵であり、決して二次的なものとして扱われるべきではありません。言い換えるなら、「ディテールに、“ただのディテール” など存在しない」ということです。

——「タイムレス」という言葉はファッションで頻繁に使われますが、本当に時代を超えるためには、むしろ少しずつ変化し続ける必要があるのではないでしょうか。A.P.C.にとって、タイムレスであることと現代的であることは、どのような関係にありますか?

タイムレスなものを意図的に作ることはできません。なぜなら、現れては消えていくことこそが、ファッションの本質だからです。デザイナーが「タイムレスなものを作ろう」と決めるだけで、それが実現するわけではありません。タイムレスであることは、長い時間をかけて成功し続けた結果として獲得されるもの。そうでなければ、人生は簡単過ぎますからね。過去は、私達に様々なサインを送ってきます。私達の仕事は、そのサインを見つけ出し、現在の美意識へと翻訳することです。Gapのアーカイブに向き合った今回も、まさにそうしました。

——今回のコラボは、異なる価値観の出合いでもあります。他者とのコラボは、自身のアイデンティティを改めて発見できると思いますか? Gapとの協業を通して、新たに気づいたことがあれば教えてください。

Gapとの今回のコラボを通して、彼らの組織力、素材に対するリサーチ、そして大規模で複雑な大西洋横断プロジェクトを形にしていく力には、とても驚かされました。その一方で私達は、数ある可能性を直感的に絞り込み、アイデアを編集しながら、ひとつの明確なシルエットとして顧客に提示するという、自分達の能力を持ち込むことができたと感じています。このプロセスは両チームにとって本当に楽しく、とても刺激的なものでした。ジュディットと私が最初に作り、Gapへ送ったムードボードの段階から、アメリカとフランス双方のカルチャーアイコンを非常に具体的に選びながら、このコレクションにふさわしい態度を定義していきました。特に、マイク・ニコルズ(Mike Nichols)監督の『卒業』のダスティン・ホフマン、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』に登場するジーン・セバーグとジャン=ポール・ベルモンド、そしてフランスの伝統的なボーダーTシャツを着たアンディ・ウォーホルとイーディ・セジウィックの写真などです。最後までそうしたインスピレーションに忠実であり続けたことが、最終的にはこのコレクションのコミュニケーションとしてショートフィルムを提案することにも繋がりました。

「Gapが本来持っている
自然なカジュアルさに、
洗練と細部への配慮を
加えながらも、
A.P.C.のファッションへの
アプローチには、
よりリラックスした感覚を
取り入れることで、
このふたつの視点を
揃えていきました」

ベーシックは何度でも更新される

Gapはこれまで、様々なブランドやクリエイターとのコラボを通して、そのベーシックを更新してきた。Awake NYとの協業ではニューヨークのコミュニティを、PALACE SKATEBOARDS(パレススケートボード)ではスケートカルチャーを、サンディー・リアン(Sandy Liang)やヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)との協業では、それぞれ異なる美意識をGapのベーシックへと接続してきた。

そして今回は、Gapと同じように「ベーシック」を追求してきたA.P.C.だ。対極にあるものを衝突させるのではなく、似ているからこそ見えてくる小さな違いを交換する。カジュアルとシック、アメリカとフランス、そして過去と現在。その往復によって、見慣れた服に新しい意味が生まれていった。

タイムレスなものを、最初からつくることはできない。ならば、Gap Xが続けてきたのもまた、過去を残すことではなく、何度でも現在へ翻訳することだろう。このGap × A.P.C.もまた、これから流れる時間の中で、タイムレスという価値を獲得していくのだろう。

Gap x A.P.C. コレクション
2026年9月19日(土)より一部のGapストアと公式オンラインストア、Dover Street Market Ginzaで開催するポップアップストアにて販売される。
取扱店舗:Gap新宿フラッグス店、Gap池袋東武店、Gap自由が丘MAST店、Gap吉祥寺店、Gapららぽーと名古屋みなとアクルス店、Gap神戸ハーバーランドumie店、Gap心斎橋店、Gapキャナルシティ博多店