ファッションで見る、キム・カーダシアンのガールボス遍歴
キム・カーダシアン(Kim Kardashian)のファッションジャーニーというと、あまりにも語られ過ぎていて逆にその驚異を忘れがちだ。しかしリアリティ番組『Keeping Up with the Kardashians』の頃から、結婚、離婚、親族間のいざこざ、盗難事件と、人生のフルコースを展開していく彼女を見つめる中で、我々は彼女のスタイルが進化していく様子も目の当たりにしてきた。
パリス・ヒルトン(Paris Hilton)のアシスタントだったキム。リアリティ番組のスターを経て純資産10億ドルの起業家となっていく中で、Juicy CoutureのトラックスーツにLouis Vuittonのメタリックバッグを合わせたり、カニエ・ウェスト(Kanye West、Ye)のミューズとして、アースカラーのスウェットを着こなしYEEZYのヴィジョンを具現化したりしてきた。そして現在彼女は美容、ファッションの両分野において、自身が保有する100万ドル規模のベンチャー企業を統括している。
カオスから計算尽くのやり手へと、ガールボスの究極進化例として歴史に名を残すべき道のりを辿っているキム。好むと好まざると、彼女を取り上げるゴシップ紙の紙面は、ファッション全体に甚大な影響力を持ち、SHEINやFashion Novaといったファストファッションの伝道師的存在を通じて、わかりやすいアピールを発信している。
キム・K – 16年のファッション遍歴をかつ目せよ – そんなドキュメントが、未来のハイパーインフルエンサーの参考になる日が来るだろう。
キムとパリス
この写真はずっと揶揄されてきたが、最後に笑ったのはキムだったかも知れない。今、FENDIのバゲットは満を持して復活している。ただしラフィア素材のウェッジソールサンダルの復活は求められていない。そこははっきりさせておこう。これに関しては世間全般的にも、キムにとっても復活しない方がいい。
大きな・・・ベルト?(2006)
圧倒的なサイズ感で目を引くベルトの存在にはカオス的なものがある。セクシーなスクールガールと小悪魔的先生の中間辺りを行くこのスタイルは、2000年代最初の10年にキムが封印してよかったものと言える。
『 Keeping Up with the Kardashians』の試写会にて(2007)
KUWTK が初めて放送された2007年の時点では誰も、キムがやがてVogueの表紙を何度も飾るような世界屈指のスターになるとは予想していなかった。何せ、今にもブラックベリーのキーボード音が聞こえてきそうなほど装いの2000年代感が強いのがキムだから。
ますますビッグになっていくキム(2010)
そこから数年経ったこのルックにも直前10年間のトレンドの片鱗が残る。スカイハイヒール、タイトドレス、大きなサングラスが目立ち、そこに再びBalenciagaのシティバッグを旬のアクセサリーとして合わせている。とにかくグラマラスで大胆なスタイルを目指すという点で、キムはまさにその指針を示す存在だ。
キムとカニエ
交際1年頃からカニエの影響が出始めた。KUWTKにもカニエがキムのクローゼットにあった洋服をあらかた処分したことが記録されている。その後キムはよくシンプルでセクシーなBalmainの装いを見せるようになった。少なくとも今のところはそうなっている。
Balmainを着たキム(2014)
その後2人はVogueの表紙を飾る。撮影はアニー・リーボヴィッツ。リアリティ番組の人気者だった彼女がそこまで上り詰めるとはと、世間はため息混じりに眺めた。Balmainのクリエイティブディレクターであるオリヴィエ・ルスタンがキムをミューズとするようになり、キムもカニエもBalmainを着た姿でよく見かけられるようになった。キムの壮大な旅が本当に始まるのはここからだ。ビバリーヒルズトラストファンドプリンセスルックがようやく終わろうとしているのだ。
ブロンドを楽しむキム(2015)
YEEZYをローンチしたカニエとメットガラにはカップルで出席、パリファッションウィークではアナ・ウィンター(Anna Wintour)の隣に着席と、ファッション業界に鳴り物入りしているキム。パパラッツィにはちゃっかりとカニエのクリエーションに身を包んで写真を撮られ、それがデイリーに掲載される。タブロイドメディアさえ、キムにとっては夫のメガブランドYEEZYの無料マーケティングツールだ。
シンプルなドレスとともに(2017)
大きな境目となったのはキムが銃を突きつけられたパリ市内での盗難事件だ。ソーシャルメディアで大騒ぎになった事件後、キムの装いはミニマルなものへと変わった。目を引く宝石やアクセサリーを一切身につけない削ぎ落とされたスタイルだ。彼女がメットガラにVivienne Westwoodのシンプルな白のドレスを着て登場し、ミニマムなスタイルを決定的なものにした瞬間は、キムの新たな時代の始まりを意味していた。
ビジネスの始まり(2019)
その年こそ、キム・Kのトレードマーク、内なるガールボス魂を本格始動させた年だった。2019年にはソーシャルメディアの女帝の座を確立し、複数のビジネスを成功させ、さらには弁護士資格取得に向けての勉強までするようになっていた。彼女が所有する補正下着ブランドSKIMSの時価総額は現在16億ドルに上っている。
BALENCIAGAを纏って(2021)
リアリティ番組「の放送はもう終了しており、キムとカニエの2人も離婚調停中。ここから自身の道を築いていこうとしているキムはこれまでにも増して輝いている。そんな変化の瞬間にキムはよく着ているのがデムナ・ヴァザリア率いるBalenciagaだ。SNL(『サタデー・ナイト・ライブ』)ではクチュールを含むルックをいくつも見せているし、メットガラのレッドカーペットでも忘れられない覆面ルックを披露した。
ピートの時代(2021)
さすがの彼女もいよいよ手詰まりかと世間が思い始めた頃、今度はSNLの主演出演者であるピート・デイヴィッドソンとの交際がスタート。2人の関係は、キム、ピート、クリス・ジェンナー、そして(なぜか)フレイバー・フレイブの4人がお揃いのプレイドを着て写った写真で公のものとなった。幸先の良さそうな、若干シュールな、そして何よりカニエとはガラッと変わった雰囲気の写真。