人とファッションと環境問題 HUNTERは新たなステージへ
国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されたのは記憶に新しい。国を超えて地球人が一丸となって気候変動への取り組みを話し合う集いは、1995年から毎年開催されている。つまりは26年間もの間、国をあげて環境問題への取り組みがなされている。さらに遡れば、戦後の1960〜70年代から環境問題は取り沙汰されている。
私達は半世紀という時間を意味のあるものにできただろうか?
今年の内閣府による環境問題への意識に関する世論調査では、年代別で差はあるが、関心がある人は7〜9割以上、取り組みたいが取り組めていない理由として、情報不足や効果がわかりづらいという点が挙げられた。情報不足という点ではメディアの責任であることと猛省しつつも……だが、個人としても企業としても、分からないでは通用しないフェーズに入っているのではないだろうか?
特にファッションという膨れ上がった資本主義にとっては、環境活動との矛盾が発生するところもある。それでも真摯に説明責任を果たし、持続可能な倫理資本主義へと舵を切るブランドも多くある。Stella McCartneyのものづくりとマニフェストや、BURBERRYの売れ残りの焼却をしない声明の発表など、イギリス勢がとにかくすごい。そして御多分に漏れず、ラバーブーツで人気を博すイギリスはスコットランド発プレミアムアウトドアライフスタイルブランド「HUNTER(ハンター)」もその一つである。
創業から160年を超える老舗ブランドが築いてきた自然との絆を核として、新たに掲げたマニフェスト「HUNTER PROTECT」と共に次なるステージへと移行するHUNTER。2020年にCEOに着任した、パオロ・ポルタ氏に話を聞いた。
――自然と人をつないできた160年の歴史の重みをどのように捉えていますか? また、ブランドとしての課題について聞かせてください。
HUNTER は自然と密接な関係を持ったブランドとして、自然保護を非常に重要と考えています。自然に没入し、探検や発見の喜びを感じられるプロダクトをデザインしています。また防水フットウェアに使用している、ゴムの木の樹液から作られた天然ゴムは、ブランドの核となる部分です。ブランド活動の全てにおいて責任ある調達、森林や環境の保護・保全を必須としています。
サステナビリティと環境保護を重視する HUNTER では、持続可能性と説明責任に関する戦略、取り組みとして「HUNTER PROTECT」を立ち上げました。説明責任を果たし、進捗状況を評価するための7つのコミットメントの中で、ブランドとして2025年までに全てのラバーフットウェアでFSC®認証を取得する宣言をしました。これは大変重要な取り組みです。
労働者やコミュニティに生活賃金が保証され、木や森が森林破壊のない環境に配慮した方法で手入れされ、地域に住む動物や人々が自分達の生活を続けられるような方法で育てられたゴムの木から得られたゴムを材料に使う、というこの取り組みにおいて、持続可能な森林からの製品作りに関する代表組織とみなされている「FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)」との協力を進めています。
ファッション業界で20年以上働いてきた身としては、どのブランドも環境への影響を減らす先例を示していくことができると思いますし、またそうしなければならないと強く思います。HUNTER PROTECTが HUNTERの今後の戦略において重要な役割を担う取り組みであるのもそうした理由からです。
――個人や会社それぞれで環境活動のレベルや手法も違います。サステナブルを牽引するグローバルなブランドとして、この多様性にどのように対応していくべきと考えますか?
2歳のお子さんから92歳の方まで非常に幅広い年齢層の方々にご愛顧いただいている私達には、サステナビリティに向かっての道のりについてメッセージを発信し、責任あるファッションの重要性についてご理解を得る義務があります。
HUNTER PROTECTは、私たちが過去10年間に行ってきたことや将来へのコミットメントを記したマニフェストと共に発表しました。詳細な記載を行ったこのマニフェストは、透明性と説明責任を確保するため、公開することにしましたが、全ての方がこの文書が読んでくださるわけではありませんので、ブランドプラットフォームで、すべてのお客様に私達の歩みにについて知っていただき、またさらに知りたいと思っていただけるような魅力的な方法を考え、お伝えしていきたいと思います。
「For the world outside」は HUNTER の進化の第一歩に当たるキャンペーンです。最近グローバルデザインディレクターに就任したサンドラ・ロンボリの初コレクションを来年発表する予定です。サンドラのクリエイティブディレクションにより、レインブーツの枠を超え、アウトドアフットウェアやライフスタイルのニーズに応えていきたいと考えています。今後もアイコンは大切にしていきますが、持続可能な活動を大切に、365日全天候対応型の機能的な製品を幅広く展開していく予定です。
――HUNTER と共に自然保護に貢献できる簡単な方法を一つ教えてください。
私たちの場合、地球の生態系と生物多様性、それらに依存するコミュニティの維持に貢献している自然保護団体、ワールド・ランド・トラストと協力しています。そういった環境において重要な活動をしている慈善団体に寄付をすることだと思います。
- Words: Yuki Uenaka