style
Where the runway meets the street

NY発「ラグ&ボーン(rag & bone)」の旗艦店である表参道店が、カフェも新設してリニューアルした。B1にはアメリカ・サンタクルーズ発「ヴァーヴ コーヒー ロースターズ(VERVE COFFEE ROASTERS)」が手がけるカフェ『ラグ&ボーン x ヴァーヴ コーヒー ロースターズ(rag & bone × Verve Coffee Roasters)』を新たにオープン。カフェのディレクションはスタイリストの「宇佐美陽平(Yohei Usami)」、そして、ロゴはアーティストの「ヴェルディ(Verdy)」が担当した。そのオープンに際し、デザイナーの「マーカス・ウェインライト(Marcus Wainwright)」が来日。リニューアルオープンとカフェ、現在のファッション業界について、そしてブランドについて話を伺った。

ーーリニューアルとカフェのオープン、おめでとうございます! なぜ日本にカフェをオープンしようと思ったのですか?

「ありがとう! 完成するまで大変だったけれど、いいショップができ上がってよかったよ。カフェをオープンするのはNYのオフィスの下にもあるから、初めての試みではないんだ」

ーーNYも『ヴァーヴ コーヒー ロースターズ』とコラボしているのですか?

「いや、NYは『ジャックス(Jack’s)』というコーヒーショップとのコラボだよ。運営してから3、4年くらいになるんだけれど、順調にやっているよ。みんなコーヒー大好きだからね(笑)」

ーーロゴのデザイナーについてですが、なぜヴェルディに依頼したいのでしょうか?

「日本の仕事のパートナーとヴェルディが友達だったから、紹介してもらったんだ。今までたくさんのアーティストとコラボレーションしてきて、さまざまなことをやってきた。例えば、6、7年前から、『ラグ&ボーン』の店の外の壁にストリートアートを描いたり、店の中もアーティストとタッグを組んで、フィッティングルームをデコレートしてもらうとか。僕たちは写真も好きでアート全般が好きだから、『ラグ&ボーン』というブランドにこだわったカフェじゃなくていいかなと思って、今回はヴェルディにロゴのデザインをしてもらったんだ。グローバルで一貫性を求め、すべてをコントロールしようとするブランドもたくさんあるけど、日本はまったく違う国で、文化も違うし、僕はその違いをリスペクトしている。だから、僕たちは新たな試みを挑戦しようと思って。特に日本ではね」

ーー実際にヴェルディと一緒に仕事してどうでしたか?

「よかったよ! とてもキュートな人だった。コラボレーションっていうよりは『カップのロゴデザインをしてくれる?』と相談して、でき上がったロゴがとても気に入ったんだ」

ーー宇佐美さんとの仕事はどうでしたか?

「クールだったね。でも、去年は日本に来られなかったから、実際に初めて会ったのは最近だったけれど(笑)。一緒に仕事すると決めてから、彼がずっとリモートでデザインをやってくれていたんだ。たくさんのアイデアを出してくれたし、すごく助かったよ。いつもは自分たちがいろいろ決めてしまうけれど、今回はあまり干渉せずに日本のチームに任せたんだ。楽しく満足できるショップができたと思っているよ」

ーー現代のファッション業界について聞かせてください。近年はストリートウエアとハイブランドの境界線がどんどんなくなってきていますが、このような変化に対してどう思いますか?

「素晴らしいことだと思うよ。今まであったファッション業界のシステムは、どんどん崩れていると思う。今まで存在していたルールも意味がなくなってきている。例えば、ファッションショーやキャンペーン、雑誌広告、これら全部は決まりのルールで、みんなやっているから自分もやる、というのが今までのシステムだった。でも、今の人たちはまったく違う生活を送っていて、みんなはそんなことに興味がなくなっているよね。ストリートに関しても、同じ現象が起こっている。僕が最初にNYに来たとき、さまざまなカルチャーが混ざり合っていて、そういう状況からインスピレーションを得ていたんだ。あらゆる階級の人たち、アップタウンとダウンタウン、マスキュリンとフェミニン、ソフトとハード……NYではずっと、対なもの同士が衝突していたんだ。でも、実際、人々はそういう境界線がある状況に注意を払っていなかったよ。今、インスタグラムとインターネットを見ていると、人々の考え方が大きく変わってきたのはよく分かるよね。人はあらゆることを知り、今までのルールも通用しなくなっているんだ。だからこそ、ストリートウエアとハイブランドの境界線もなくなってきたんだと思うよ。それと、ハイブランドに対しての定義も変わってきた。人々は今、必ずしも『ルイ・ヴィトン』をラグジュアリーだとは見ていないと思う。本来のラグジュアリーは、限られた一部だけの人にしか提供しないもので、だからみんな欲しがる。でも、今のハイブランドの定義は違う。“数量的に限定されている”という概念が消費者の欲望を引き出す、これが今のラグジュアリーなんだ。日本では特に分かりやすい。人々はチョコレートやパンケーキ、アイスクリームのために列を作るよね。並ぶことに対してとても不思議に思うんだけれど、それはそのモノが希少価値があるから。これこそ、新たなラグジュアリーだよ。単に高いだけではなく、新たな社会に、人々がユニークさに対してのニーズに応えるもの。日本はその“ラグジュアリー”に対するニーズは、ある意味で、世界のどこよりも長い歴史を持っていると思う。日本に初めて訪れたのは2001年で、人生初めて店の外に並んだよ。それから10年経ってNYを見てみると、その光景が変わってきた。日本では常に列を作るけれど、NYでは違った。でも、スニーカーカルチャーが変わってきて、そして『シュプリーム』などのストリートブランドがスニーカーを売り始めると、人々は手に入れるために列をなすようになったんだ。これも、“新しいラグジュアリー”だよね」

ーーお話していたようにファッション業界の流れが変わってきていますが、ご自身はブランドの何にフォーカスしていきますか?

「世界が著しく変化している中、老舗ブランドにとって何が必要なのかというコアな部分を見失ってはいけないと思う。すごく難しいことではあるけれど、ブランドのアイデンティティを維持しなければならないよ。なぜなら、今の流行はすぐに変わってしまうし、その変化に流されて自分を見失うブランドもたくさんある。『ラグ&ボーン』は創業から信頼性とクオリティ、そしてクラフツマンシップを大切にし、美しく、みんなが着たいと思える服を作ることに力を入れているんだ。ハイプなブランドを作ることは目標ではないから、はマーケティングのやり方を変え、ショウをやめたよ。僕が一番フォーカスしているのは、ブランドに対しての忠実さなんだ」

ーー2018年春夏でもムービーを撮影していますが、ブランドにとってムービーを作る意味とは何ですか?

「今までもたくさんのムービーを作ってきているけれど、ショーをやるよりも楽しいよ。これまでショーも長くやっていたけれど、それはファッション業界のルールでもあったしね。当時はショウに力を入れて、ショーを通じてイメージを確立し、そのイメージでキャンペーンを展開していたけれど、メンズは基本的にランウェイ以外にもムービーを撮影したり、さまざまな試みをしていたよ。ムービーだと、ブランドのメッセージをより多くの人に届けられるし、さまざまなジャンルの才能を持つ人と一緒に仕事ができることが魅力的だよね。スタイリストやメイクアップアーティストだけでなく、ディレクターや振付師、俳優、ダンサーなど、とにかくたくさんの人と出会うことができる。それによって、ファッション業界以外ととも繋がることができるんだ。独創的な表現で、ブランドのオリジナリティを演出することに意味を感じているよ。人とやっていないことにアプローチするんだ」

ーー最後に、今後のプロジェクトについて教えてください。

「たくさんあるよ! 今年中に、スペシャルなコラボもたくさんやる予定なんだ。次回のコレクション準備もあるし、『D.I.Y.』のプロジェクトも再開するよ」

 

ラグ&ボーン x ヴァーヴ コーヒー ロースターズ
住所/渋谷区神宮前 5-12-3 B1F
営業時間/9:00〜19:00
定休日/不定休
Tel./03-6427-5403

ラグ&ボーン 表参道店
住所/渋谷区神宮前 5-12-3 1F & 2F
営業時間/11:30〜19:30
定休日/不定休
Tel./03-6805-1630