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Life beyond style

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ドイツ出身のファッションデザイナーであるカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がパリで亡くなった。CHANEL(シャネル)や、FENDI(フェンディ)、自身のブランドKarl Lagerfeld(カール ラガーフェルド)でクリエイティブディレクターを務めたラガーフェルドは85歳でこの世を去った。ファッションアイコンとしても、70年以上もの間、第一線で活躍した。

ラガーフェルトは、1954年のIWS(国際羊毛事務局)主催のコンクールで優勝した後、ピエール・バルマン(Pierre Balmain)のアシスタントとしてキャリアをスタートさせる。その3年後には、Jean Patou(ジャン パトゥ)でクチュールコレクションを担当するようになった。それから1965年まではChloé(クロエ)でフリーランス契約で仕事をし、FENDIでは逝去するまでクリエイティブディレクターとして働いていた。その期間中にKrizia(クリツィア)や、CHARLES JOURDAN(シャルル ジョルダン)、Mario Valentino(マリオ ヴァレンティノ)のコレクションをデザインすることもあった。1985年にはCHANELへと移り、歴史に名高いブランドとして地位を確立させた。また総売上高は、2018年で1兆円に及んだという。

1シーズンで約1億円の費用を費やしたと噂されるラガーフェルトのランウェイの数々がある。それらは約14メートルに及ぶ宇宙船から、波まで再現された巨大ビーチ、CHANELの約500点もの商品を並べたスーパーマーケットまで様々だ。プレコレクションでは、観客として有名なエディターや、バイヤー、インフルエンサーなどを世界各地様々な場所に招待。フランス・ベルサイユや、アメリカ・ダラス、韓国・ソウル、スコットランド、最も有名なハバナ、そしてキューバなどでコレクションを開催した。ラガーフェルトのショーは平凡なものではない。そこでアートを作り出しているのだ。

洋服とは、みんなが欲しがるものであり、過去を振り返るものではなく、未来を見据えた先進的なものであるべきだということを分かっていた。それが彼の美学である。ニューヨク・タイムズ(The New York Times)に対しラガーフェルドは「私たちは、誰も欲しないものを作っていたら、それが人々に求められるものになった」と述べ、「もしダサく古い車が欲しいのなら、それはあなたを待ってくれるが最新の服やアクセサリーが欲しければそうはいかないのだ」とも発言している。

「ロゴはマーケティングや、高級品として、またビジネスにおいても世界共通のものである」とラガーフェルドは話し、他でもないブランドの力を理解していた。だからこそCHANELの有名な「C」を2つ重ねたロゴは、価値が高く、高級なものを示すロゴとなった。

ラガーフェルドは、ファッションデザイナーだけに留まることはなかった。フォトグラファー、ディレクター、アーティスト、著者として、ファッション業界以外の一般の人たちにとっても、ファッションを身近なものにしていった。

CHANELにおける買い求めやすい化粧品や、香水のような文字通りの部分だけでなく、ラガーフェルトはその範囲を広げ、ファッションの世界に変革を起こした2004年のH&M(エイチ & エム)とのコラボレーションや、BMW(ビー・エム・ダブリュー)との数々の共同商品開発、アイスクリームで有名なMagnumや、Coca-Cola(コカコーラ)などとのコラボレーションも行った。ほかにもゲートキーパーとしてトレンドをコントロールし、発明者でもあった。白髪のポニーテールに、暗いレンズのサングラスとエディ・スリマン(Hedi Slimane)によってデザインされたセットアップを着用したラガーフェルトは、華麗で、どことなく神話のような非現実的なキャラクターであった。また同時に、誰もがファッションについて考えたときに最初に出てくる名前がラガーフェルトである。彼自身がファッションそのものであったのだ。

「良いものかそうでないものでもなんでも、ファッションを広める力を持つ」とラガーフェルトは述べていた。「他のジャンルで進行する以上に、ファッションの流行は早く移り変わる。ファッションは、最も短い期間で作られ、我々の生活とその時々を映し出すもの。車のデザインや建築は、そこに気がつくのに数年という時間を要する」

スピード感や変化の目まぐるしい現代において、ラガーフェルトの死は、一人のデザイナーが長年同じブランドに所属するというシステムの終焉を意味した。その死は、CHANELに大きな穴を残した。それにもかかわらず、早速WWDが、ラガーフェルトの右腕でCHANELのスタジオディレクターであるヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が同ブランドのクリエイティブディレクターを務めると報道したのだ。しかし、彼がシャネルに残した遺産は、誰にとっても超えるのは難しいほど大きなものである。彼は、ブランドの象徴であったのだから。

ウィメンズコレクション最終日の3月5日火曜日の午前10時30分にCHANELは2019年秋冬コレクションを行う。おそらく悲しみに包まれ、すべての人の記憶に残るものとなるだろう。