本屋に行くと急にトイレに行きたくなる現象を “青木まりこ現象” というらしいが、自分は服屋に行くと青木まりこが訪れる。

百貨店などであったら気軽に済ますことができるが、路面店だとそうは済ませられない。そんな緊張感と覚悟がより膀胱内の青木まりこを呼び起こすのである。

先日、PRADA(プラダ)の青山店に欲しかったニットを求めに訪れたのだが、その前に暑かったので水をがぶ飲みし、しかしPRADAを訪れる予定だったので、計算してその前に用は済ませて対策を万全にしたつもりであった。

しかし、学生時代にまず公式という概念がわからず数学を0点とりまくっていた理数系ではない自分にとって、“青木まりこ算” がそう簡単に求められているはずがなく、計算が狂いまくっていたのである。

まず入り口でドリンクのサービスがあり、VIPな気持ちにさせられて調子に乗った貧乏性の庶民の自分はすぐに口をつけてしまった。マラソンの給水所か何かと勘違いしてるのかな……と親切なスタッフの方に驚かれそうな勢いで。

そして意気揚々とニットの在庫を聞いたところ、探していたサイズがないとのことで確認してきます。と、スタッフの方はバックヤードへ。

そのままこちらもソファーに腰かけた途端、青木まりこが都市伝説のメリーさんの如く突如、脳に存在感を示してきたのである。

「もしもし、私、まりこ。今あなたの膀胱にいるの」。

この時点では、まだまりこは膀胱といえども膀胱の最寄り駅付近にいたのだ。なので、自分は買い物に時間をかけるタイプではないので、まだ大丈夫だとたかをくくっていた。

だが、なかなかスタッフの方が戻ってこない。

そのまま5分……10分と時が過ぎていくと共に、膀胱にいるまりこが鬼電をかけてくるようになったのである。

「もしもし、私、まりこ。今あなたの尿道の裏にいるの」。

「もしもし、私、まりこ。今あなたの尿道を時速100kmで通過しているの」。

こういった具合でどんどん危機感の増す煽りをしてくるようになったのだ。しかし懸命に探してくださっているスタッフの方が戻ってくる気配が一向にない。ほかのスタッフの方は親切な笑顔をこちらに振りまきながら通り過ぎていく中で、こちらは段々笑う余裕がなくなってきた。

いっそのことニットよりもトイレの在処を聞きたい気持ちに駆られたのだが、貸してくれるはずがない。だが漏らしてしまいそうなギリギリで、もし在庫があっても会計などをして出たところで青山に、そうやすやすと用を済ませられる場所は少ない。親切に探してくださっているスタッフの方に申し訳ないがこのままでは、これはきっと間に合わない……。

自分は必死に誤魔化しながらニットを諦める旨を伝えて、慌てて店内を飛び出すことにした。そして飛び出そうとした勢いで、まりこも「やっほー!」といった勢いで尿道の玄関の戸を開けては飛び出してきたのである。

ちびってしまった、ほんのりと。あの天下のPRADA青山店様で。

もはやちびった染みがPRADA様の三角マークとして誤魔化せないかと一瞬でも思った自分をどうか出禁にしてほしい。

失禁出禁である。

笑うしかない自分はそのまま駅まで駆け下りて、残りのまりこを大放出し、そそくさと何食わぬ顔で家路につくのであった。

どうか読者の皆様も突如訪れる、洋服の青山ならぬ青木 “まりこ” には気をつけて。

(探していたニットはこちら。もはやトラウマで買ってよいものなのか迷っている)

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プロフィール キクチ(@lclccylcy
職業キクチを名乗る自由なファッションをたのしむ自由人。とにかくヴィジュで全ての気分をあげていくのがモットー。

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