ラグジュアリーの未来は、ロゴ以外の要素にこそある。ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)率いるLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)は、パリ・ファッション・ウィークを華やかにスタートさせた。2026年秋冬メンズコレクションは、現代におけるラグジュアリーメゾンのあり方(あるいは、あるべき姿)を的確に示すものだった。在任中、ファレルはTimberland(ティンバーランド)とのコラボレーションを実現し、奔放なウエスタンスタイルをパリに持ち込んできた。しかし今季のコレクションは、それらに比べ控えめで、自信に満ち、しかも着やすい印象だ。端的に言えば、今回のルックから見えるLOUIS VUITTONの未来は、“良い服” が中心である。意外かもしれないが、これが控えめなLOUIS VUITTONなのである。

2026年秋冬メンズコレクションは、ショーノートで掲げられた「TIMELESS」の名の通り、ブランドロゴを前面に押し出さず、洗練されたフィット感や実用的なアイテム、そしてタイムレスなドレープが際立っていた。中でも特に印象的だったのはテーラリングで、シングルブレストのブラウンスーツは、これまでにないほど洗練された印象を与えていた。一方、オフホワイトのダブルブレストスーツは、ケーリー・グラント(Carey Grant)と『グッドフェローズ』の間を行き来するムードをまとい、現代のダンディズムにふさわしい絶妙なバランスを保っていた。同時に、最先端のシェルジャケットのような織り構造で、縫い目の内側には高度な技術が仕込まれていた。反射糸や “温度適応型” シルク、シャンブレー素材、さらにはアルミニウムをボンディング加工したテキスタイルまで、表層的な装飾に留まらない探究心が感じられる。

©︎ HIGHSNOBIETY

スニーカーをはじめとするフットウェア全体のトレンドにならい、厚底スニーカーはほとんど姿を消していた。実際、スニーカー自体がほぼ見られなかったと言っていい。その代わりに提示されたのは、上質なスエードやレザーを用いた、シンプルで流線的なシルエットのシューズだった。

控えめどころではない。新作「LV Drop」は、オールドスクールなランニングスニーカーに着想を得たシルエットで、滑らかなアッパーに波打つスエードパッチを配し、大胆なマゼンタカラーで仕上げられている。それでも、シンプルさを保ったデザインが光る。サイクリングシューズを思わせるレザードレススニーカーは、ナチュラルなモノトーンのパンチングレザーを採用し、オールドスクールなゴルフシューズ感が強い。素材そのものの質感とトーンを際立たせている。また「LV Hoxton」は、モンクストラップのドレスシューズにさりげなくパフォーマンス性を組み込んだモデルだ(少なくとも、LOUIS VUITTONはそう位置づけている)。

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何より印象的なのは、ファレルによるLOUIS VUITTONが、近年のラグジュアリーではなかなか見られない、リアルに着られる服を作っている点だ。10年経っても今季発売時と変わらず美しく見える、時代を超えたシルエットのアイテムに明確に注力している。ドレスシャツを刷新するのではなく、既存のリソースで可能な限り完成度の高い、かつさりげなく個性的なドレスシャツを作ること。あるいは、プリーツトラウザーが決して流行遅れではないことを思い出させることだ(スキニージーンズはさておき)。

ショールームに並んだルックの中でも、チェック柄のハリントンジャケットにシンプルな2ボタンのヘンリーネックTシャツ、ボリュームのあるカーキのトラウザーズを合わせたスタイリングは、ひときわ目を引いた。きちんとした身なりの男性達が何十年にもわたって着てきた定番のスタイルだが、ファレルの手が加わることで、プロポーションやクラフトマンシップに細やかな配慮が行き届き、それがLOUIS VUITTONらしさとなっている。 なお、「LV」ロゴを求める人も心配はいらない。アクセサリーやラゲージの多くには、これまで通りロゴが配され、印象的なレザーボンバージャケットにもさりげなくあしらわれている。

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ファレルがメゾンに加わって以降、彼は作品を通して、2020年代におけるラグジュアリーの概念とその意味を探り続けてきた。そして2026年秋冬コレクションにおいて、ひとつの答えに行き着いた。それは、ポージングや演出よりも、職人技と着やすさを最優先した服作りだ。その未来は、どこか見慣れたものに映るかもしれない。だが、それでいい。これは、真のラグジュアリーが決して色褪せないことをあらためて思い出させてくれる。