style
Where the runway meets the street

コンセプトを言語化したデザインでクロスカルチャーを体現するデザイナー、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)。彼の手がけるLouis Vuitton(ルイ・ヴィトン)2019秋冬メンズコレクションは、時代、国籍、カルチャーに始まるさまざまな背景がファンタジックに彩られている。ファッション業界に革命を起こしたかつての少年が切り開く世界は、どんどん広がり続けている。

おびただしいほどのプロジェクトの数を通してヴァージルはそれまで交わることのなかった世界をかけ合わせ、常識を覆してきた。古いものと新しいもの、ストリートとラグジュアリー、ヒップホップとロック…アートを経験する前と後では同じ考え方ではいられないように、彼の作品や考え、行動すべてが時代に新しい価値観を植え付けていく。彼の手にかけられることによってそれらは、まるでもともと存在していたかのように実に自然な形で普遍的なものと化し、いくつものパラダイムシフトをもたらしてきた。

音楽、ファッション、デザインなどの芸術的手法を用いながら、消費者を経由して世界に投げかけられる、社会的視点とカルチャーへの造詣。さらに言語を通してコンセプトを誇張し、新しくディメンションが授けられるその様子はことさら魔法のようだ。時代やカルチャー的背景、歴史が動くムードや鼓動、そこに当たる強い光のような存在と、満ちあふれる希望と羨望。彼の表現を通して私達は自らの体験を投影し、軽やかに躍進する彼自身に自らとの接点を見出していく。2019年秋冬コレクションには、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)がもたらした革命と期待、葛藤や成長といった息づかいが存在している。

コレクションの中でも非常に重要となるのが、様々な国旗が重なり合い鮮やかに仕上げられたポジティブな印象のテキスタイル。この表現は「フラギフィケーション」という言語をもって、彼のスタジオやアトリエメンバーの国籍を表現する饒舌なパターンに生まれ変わっている。また一見クラシックな千鳥格子は、アフリカ大陸を模した柄の羅列だ。このパターンは「CHECKNETICS(チェックネティックス)」と称され視覚上の錯覚をもたらしている。さらに、ややオーバーサイズ気味のウールキャンバスのスリーウェイジャケット。これはデュアリズム(二元論)的構築法の一例として、ベストとジャケットの異色なレイヤードを提案している。

モノグラム・モチーフの入ったパフ入りのラムスキンバッグは特大サイズで、まるで子供が親のバッグを持ち歩くようなアンバランスさだ。これは成長期の不安定な精神性とそれを包容する暖かな温もりを表現した、少年時代というテーマを体現したものだ。

パリで披露されたランウェイでは、木枯らしの吹くNYダウンタウンを舞台に、ジム・ジョーやLEWY BTM、FUTURA(フーチュラ)がライブでグラフィティを施し、時代のムードを醸し出していた。ファッションの包括性にロジックとユーモア、そしてデザイン性を用いて世界に気づきを与え新しい世界へ導くヴァージル・アブロー。アートの文脈を変えたマルセル・デュシャンの「レディメイド」に取り憑かれていると公言するヴァージルが起こし続ける革命の数々を、同じ時代に堪能できることに感謝しつつ、そのブレインストーミングなマジックショーを引き続き堪能したい。

ルイ・ヴィトン公式サイト

2019秋冬メンズ・コレクション(商品ラインナップ)

2019秋冬メンズ・ファッションショー

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