style
Where the runway meets the street

 

Under the Radar(アンダー・ダ・レーダー)では、ハイスノバエティが注目するアップカミングな才能にフィーチャー。ストリートウェア&ファッション界に新しい価値をもたらすブランドを毎週紹介する。

デザイナーのルドヴィック デ サン サーナン(Ludovic de Saint Sernin)はベルギー・ブリュッセル生まれ。アフリカのコートジボワール共和国で育ち、7歳の時にパリに移住。パリのデュペレ応用美術学校でウィメンズウェアを学んでから、「Dior(ディオール)」と「Saint Laurent(サンローラン)」にてインターンを経験。LVMHプライズのファイナリストにも選出された自身のブランド、「Ludovic de Saint Sernin(ルドヴィック デ サン サーナン)」を2017年に立ち上げるまでは2年間、「BALMAIN(バルマン)」で働いていた。

「バルマンでは非常に面白い経験を積むことができた。でも、そこでの美的感覚は自分と異なる点があるように感じて、ブランドを離れることを決めたんだ」とルドヴィックは言う。

ルドヴィックは、20世紀を代表する写真家の一人、ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)から影響を受けてきた。メイプルソープは、ニューヨークのSMシーンを取り上げた物議を醸すポートレート写真で、70年代と80年代における文化論争の渦中にいた人物だ。その要素のいくつかは、2018年春夏コレクションに垣間見ることができる。スリムフィットのクロップドレザータンク、ピンクとラベンダーのセットアップ、クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)のアルバム「Stripped(ストリップド)」のカバーに影響されたというレザーレースアップパンツ、そして鮮やかな黄色のニットなどだ。

90年代のスーパーモデル時代を彷彿とさせるキャンペーンやランウェイショーは、メンズウェアにもかかわらずセンシュアルな表現に溢れている。このことが、同ブランドを今最もセクシーなメンズブランドの一つとして位置づけた。

「ナオミ・キャンベルやケイト・モスの全盛期は、ウィメンズファッションが強い時代だった。今は、メンズファッションが似たような局面を迎えている。でもだからといって、男性のスーパーモデルが必要なわけではない。しばらくすごく有名になった男性モデルがいたけど、男性のスーパーモデルグループは存在しなかった。だからこそ、メンズウェアに投影できるような、アイコニックな男性ヒーロー像を作りたいと思ったんだ」とルドヴィックは語る。

Ludovic de Saint Serninは時に、ユニセックスやジェンダーレスと言われる。パリで行われた2019年春夏と2019年秋冬コレクションのショーでは、男性と女性両方のモデルが登場した。意図的に「ユニセックス」を謳っているかどうかはさほど重要ではなく、気に留めていないだけだという。男性でも女性でも、似合えばそれでいい――メッセージはシンプルだ。

ここ数年は、ロゴマニアとラグジュアリーストリートがファッション界を席巻してきた。しかしそこに存在するのは、メンズウェアのトレンドから脱するための新しいデザインへの渇望だ。露骨なセクシュアリティだと非難する声はあるものの、ルドヴィックの美学は職人的なラグジュアリーへの回帰を意味する。

もちろん、セクシーさを定量化することは難しい。セクシーとは人によって違うことを意味する。そしてそれは美しさやグラマラスな魅力と同様に、メンズウェアで注目されることは今まで滅多になかった。「男だって、美しく見せたい時がある。僕は世の男性たちのためにも、本当に楽しくてグラマラスな作品を作りたかったんだ」とルドヴィックは説明する。

2019年秋冬コレクションは、胸を覆うプレート、正面が大胆に開いたポロシャツ、そして「Swarovski(スワロフスキー)」とのコラボレーションによる輝くトップスなど、ありとあらゆるファンタジーに溢れている。ブランドを代表するアイテムの一つであるレースアップのレザーアイレットブリーフは、クリスタルで覆われた同アイテムのムービーが拡散したことにより、カルト的に人気を博した。

「数百万ドルを生むブリーフ」のインスピレーション源は、「Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」がスワロフスキーとコラボレーションによって制作した「ファンタジーブラ」。ファンタジーブラは、恒例のVictoria’s Secretのショーのフィナーレを締めくくることで知られている。「毎年、ランウェイにはこの下着を身に着ける特別な女性やエンジェルがいる。なぜ、男性にはそのような人物が存在しないんだ?」とルドヴィックは言う。「男性たちのためにも、僕がこのファンタジーを作り上げることでフェアになると思ったんだ」

Ludovic de Saint Serninのブリーフはトム フォード(Tom Ford)による「GUCCI(グッチ)」の時代以来、メンズファッションにおいて最も注目に値する下着と言えるかもしれない。「ウィリー・ヴァンダーピエール(Willy Vanderperre)がブリーフを気に入ってくれて、雑誌Another Man(アナザー・マン)の撮影に使ったんだ。それからロンドンで行われた彼の展覧会でもみんなが夢中になり、人気に火がついたんだ」とルドヴィックは言う。「それ以来、ブリーフはブランドにとってビジネスの要となった。さまざまな生地や素材、色で展開したことで、ブリーフ単体で売り上げの40%を占めるようになったよ」

ルドヴィックが生み出すクリエイションは、男性顧客が何を望んでいるか、そしておそらくもっと重要なことに、顧客に服をどのように感じさせるか、への変化を示唆している。

The Internet(ザ・インターネット)のメンバーであり、iPhoneで音楽を制作する若き天才音楽家、スティーブ・レイシー(Steve Lacy)はスタイルアイコンになりつつある。彼は、Ludovic de Saint Serninのクリスタルメッシュタンクがよく似合う。

「つまり、インスタグラムを通して、あるいは実生活やパーティーの場面で、誰かがブランドの服を着ているという知らせをもらう。その瞬間がたまらなく好きなんだ」

2年前に決断した独立という道は正当化された。それが全てを物語っている。

 

ルドヴィック デ サン サーナンはMACHINE-A(マシーンA)、MATCHESFASHION.COM(マッチズファッション ドットコム)、Farfetch(ファーフェッチ)で購入可能。