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社会問題収めた写真Tシャツに マグナムフォトらによる新たな試み開始
様々な事業を展開する「Murmuration(マーマレーション)」は、社会課題をTシャツに落とし込む新プロジェクト「Medeia1.0」を開始しました。 当プロジェクトは、歴史、報道写真を数多く扱う、国内最大級のフォトエージェンシー「AFLO」の協力により実現したプロジェクトで、第一弾では1947年、写真家の権利と自由を守り、主張することを目的にパリで設立された「マグナムフォト」の写真をピックアップ。
Tシャツを媒体に、世界で起きている社会課題を人々に届けたいという思いで発足。二十世紀後半の局面に立ち合い、世界史の最前線に立つ「目撃者」として、人類の悲劇、勝利。狂気を「記録」し続けてきたマグナムフォトのオフィシャル報道写真を用いてメッセージを発信する。「写真が、現代で最も有力かつ強力な芸術、ドキュメンタリーの表現方法だ」と主張するマグナムの強いイメージと、不定期にローンチする世界中の問題定義を訴える。
第1弾となるIssue#1「Racism」では、マグナムフォトの代表的な3枚の写真を紹介。
バート・グリン(Burt Glinn)によるPAR107241番の作品は、足元にハイヒールだけ装着されたマネキンが頭部から胸部、下半身にかけて10発以上被弾している姿を捉えている。奥には銃を手にした兵士ような人物がうっすらと写り、不自然に佇むマネキンの姿と、路上に散乱したゴミが印象的。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King, Jr)が暗殺された翌朝、激しい暴動のあったワシントンD.C.の路上で撮影された今作は、静寂を感じる空間が暴動の激しさを一層強く訴えてかけるという。
イアン・ベリー(Ian Berry)によるBEI1994009番の作品では、力強い手の動きと強いコントラストの影をまとった男性が口元は大きく開き、力強く何かを訴えかけようとしている。背後には警察官の様にも見える人々が写り、写真全体から物々しい雰囲気を醸し出す。1994年4月3日、南アフリカ共和国のリンポポ州モリアで開催された「Zion Christian Church(ZCC)」の年次総会で撮影。同月27日に史上初の全人種による普通選挙を控える中、この年次総会には当時の南アフリカ大統領F.W.デクラーク、後の大統領として全民族融和の象徴となるネルソン・マンデラ、南アフリカ民族ズールー人政党のインカタ自由党指導者マンゴスツ・ブテレジらも出席。
当時の南アフリカでは、全人種選挙の実施に向けて1948年に制度化された「アパルトヘイト(人種隔離政策)」撤廃の期待が高まり、民衆を巻き込んだ抗争が続くなど選挙直前まで不安の日々が続いていた。選挙ではマンデラ率いるアフリカ民族会議(ANC)が圧勝し、マンデラが大統領に就任。同年にアパルトヘイトは撤廃された。
性別、年齢、人種などがさまざまで、覆面やマスクをした群衆が曇り空を背景に「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」のプラカードを掲げ、拳を天に向けて突き上げている。Magnum PhotosによるNN11628388番の作品は、コロナ禍の6月13日、仏パリ東部に位置するレピュブリック(共和国)広場で撮影。2016年7月19日にパリ北郊で、黒人男性アダマ・トラオレが警察に拘束され逮捕後間もなく死亡した事件に対して抗議したデモを収めている。
世界各地にも広がっているこの運動は、白人警察官による人種差別的な行動だけでなく、より根源的な奴隷問題も言及され、世界の主要都市を中心に各地に残る根深い人種差別問題が注目されされている。