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Where the runway meets the street

今年一番の話題といえば、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)がLouis Vuitton(ルイ・ヴィトン)のデザイナーに就任し、キム・ジョーンズ(Kim Jones)がDIOR(ディオール)へ移ったこと。メンズの話題である。エディ・スリマン(Hedi Slimane)がCELINE(セリーヌ)のデザイナーに就任し、メンズを始めるということも話題を呼んだ。同時期には、UNDERCOVER(アンダーカバー)の高橋盾が、パリでウィメンズのショーを止め、メンズのショーを始めると発表した。

去年に最も話題となったコラボレーションといえば、Louis VuittonとSupreme(シュプリーム)だった。これもまたメンズである。リテールにとっては、See-now-buy-nowという販売のシステムからドロップシステムへと移行している。リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)のBurberry(バーバリー)がそうである。この納品メソッドは、ストリートウェアから来ている。藤原ヒロシや、A Bathing Ape®(ア ベイシング エイプ®)のNIGO®(二ゴー)などにより日本で生みだされ、西はSupreme(シュプリーム)へと広がっていった。Supremeのようなドロップシステムは、ラグジュアリーメゾンをも魅了している。毎度のことながら、若者たちは新発売のアイテムを買うために、行列をなしている。果たしてウィメンズで最後に行列を見たのはいつだろうか。

未だにメンズよりもウィメンズの売り上げが約55%高いが、ユーロモニターが今年の初めに公表した調査によれば、2009年以降のほとんどで、メンズウェアの成長率はウィメンズのそれを上回っている。しかし、重要なポイントは、近年でのファッションの話題のほとんどが、実質メンズウェアから来ているのではないかということである。

このファッションにおける変化が目新しいということではなく、メンズウェアが流行の最先端にあることなのではないだろうか。大きな進展としては、デザイナーファッションのメインストリームにストリートウェアが受け入れられるようになった点にある。今では、デザイナーがTシャツやフーディのようなストリートウェアの原点と呼べるものをランウェイで使用することが、ごく自然のこととなっている。Louis Vuittonを始め全てのブランドは、スニーカー作りで忙しくしている。その結果、消費者はその高価なスニーカーに慣れ、今までカシミアのニットやドレッシーなシューズのためのお金を惜しみなく使う傾向にある。

 

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もっと広い目で見るなら、ストリートウェアが台頭する背景には、洋服のカジュアル化がある。Lululemon(ルルレモン)やadidas(アディダス)のように、ウィメンズがアスレジャーへと移行しているが、メンズはChampion(チャンピオン)のフーディからGivenchy(ジバンシィ)やVETEMENTS(ヴェトモン)のフーディーまで、スニーカーはNIKE(ナイキ)からBalenciaga(バレンシアガ)まで幅広い。

ファッションにとっての必要不可欠なバロメーターであるインタスタグラムでも同じことが言える。女性のインフルエンサーは、Chanel(シャネル)やDolce & Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)はもちろん、Supremeや最新のNIKEのスポーツブラを着用していることもしばしば見受けられる。今年のハロウィンにはUrban Outfitters(アーバンアウトフィッターズ)が初めて“インフルエンサー”コスチュームを発売した。それは、一般的なベースボールキャップや、フーディ、スポーツブラ、レギンス、そしてスニーカーという構成になっている。

もう一つ重要なことは、この新しいファッションコンシャスな層が、ストレートの男性であること。欧米の特に大都市では、ストレートの男性がファッションやドレスアップに興味を持つことへの違和感がなくなってきている。

賛否はあるが、近年で最も重要なラグジュアリーマーケットである中国でも、欧米と似たことが起こっているが、ドレスコードにさほど変化はない。ストレートの男性でも着れるストリートウェアというのは皮肉だが。

今年の初めに行われた教祖的なファンを持つUNION(ユニオン)のオーナーであるクリス・ギブス(Chirs Gibbs)インタビューの中で、ストリートウェアの進化を語っている。特にvisvim(ヴィズビム)やNEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)のような日本のデザイナーは、ストリートの原型を保ちつつも、生地の質や、構成、ディテール、フィットへのこだわりはハイファッションに負けず劣らず、これこそまさに、今日の若者たちが着たいものそのものである。

男性のファッションに対する情熱は、RAF SIMONS(ラフ シモンズ)や、HELMUT LANG(ヘルムート ラング)のような熱狂的なファンを持つデザイナーのヴィンテージアイテムへの人気の高まりを見れば明白だろう。カニエ・ウェスト(Kanye West)やエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)のようなラッパーによって大衆化し、RAF SIMONSやHELMUT LANGのヴィンテージを着ることに価値を見出したことで、メンズウェアのリセールサイトGrailed(グレイルド)では、RAF SIMONSのヴィンテージのボンバージャケットが、約530万円まで跳ね上がった。

先月には、ニューヨークのブティックPatron of the New (パトロン オブ ザ ニュー)のオーナーが、UNDERCOVER、Rick Owens(リック オウエンス)、Craig Green(クレイグ グリーン)のヴィンテージセールを3日間限定で行った。ブロックをまたぐ行列の10人に9人が、高校生ぐらいの男の子たちだった。

大手リセールサイトのByronesque(バイロネスク)のオーナー、ジル・リントン(Gill Linton)は、男性のヴィンテージファッションへの興味は、この数年が最も大きな転換期であったという。12月にはByronesqueが、イギリスのミュージシャン、ジェームス・ラヴェル(James Lavell)が所有するA Bathing Ape®の初期モデルの限定販売をロンドンで主催する。

メンズウェアの流行りが続くことは、チャンスである。10代の娘に、学校の男の子たちが服に対して気をかけているのかと尋ねると、彼女はきっぱりと、「女の子より全然気にかけてるよ!」と答えた。ファッション業界人で、まだこの現象に気づいていないのであれば、メモを取ることをおすすめする。