マルタン・マルジェラの歴史的オークションで、彼のワードローブと頭脳が売りに出される。
マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)が、本格的な整理を行っている。ほとんどの人にとってそれは、クローゼットに眠るシミ付きのTシャツを捨てたり、古い自転車を売ったりすることだろう。だが、20世紀で最も影響力のあるファッションデザイナーの一人である彼にとって、それは垂涎もののアーカイブピース数百点に加え、ファッション史を代表するブランドの設計図までも手放すことを意味する。
先週、マルタン・マルジェラが自身のアーカイブの一部をオークションに出すと発表したことは、案の定ファッションオタクたちを熱狂させた。偉大なデザイナーの一人が、自身のアーカイブを世に出す機会などそうそうあるものではない。というより、皆無だ。今回のオークションを手がけるMaurice Auctionによれば、「存命中のクリエイターが、自身の衣服やデザインの個人アーカイブを提供するために、オークションハウスと直接協業するのはこれが初めて」だという。
やはりマルジェラは革新者だ。
注目すべきアイテムは数多くある。そして、公開されたばかりの出品リストも期待を裏切らない。Maison Margiela(メゾン マルジェラ)設立の4年前にあたる1984年から、マルタンが自身の名を冠したメゾンを去った2008年までの、200点を超えるアイテムが7月9日にオークションにかけられる。
出品内容はヴィンテージウェアに留まらない。もちろん目玉となる服も数多く含まれているが、それだけではない。例えば、マルジェラ本人が使用していた白いコットンエプロン(当時、Maison Margielaのスタッフ全員が着用していたもの)、パリのガリエラ美術館で開催されたMargiela最初のグループ展の来場者によって落書きが施された1991年のTabiブーツ(5万ユーロ[約5万8250ドル]での落札が見込まれている)、そしてモデルたちの顔を覆っていた一連のヴェールなどだ。これは、マルジェラがプレスリリースで述べたように、「顔に気を取られることなく、服そのものにのみ注意が向けられるようにするため」のものであった。
それぞれのアイテムは、マルジェラのメゾンが生み出し、磨き上げてきた革新的な手法を知る手がかりとなる。だが、最も多くを物語るのは、一連の写真やドローイング、そしてオブジェだ。これらは、アヴァンギャルドファッションの聖典とも言える存在なのである。
特に注目すべきなのは、1987年に作られた、当時はまだ構想段階だった自身のファッションメゾンの計画をまとめた資料だ。後にパリのアトリエの多くがそうなったように、この資料も白いコットン生地で覆われている。 もとのファイルは列車内で盗まれたため、マルタンは記憶を頼りにそれを作り直した。しかし、その1年後に警察によって発見され、返還されたのである。これは、Maison Margielaを生み出したマルジェラの思考を覗き見ることができる貴重な資料だ。
- Words: Tom Barker
- Photography: © Marc Chatelard