music
Tune in and turn up

変幻自在。そのハスキーな歌声で爽快なナンバーを歌ったと思えば、蜜のあるダークなエッセンスを取り入れるセンス。この引き出しの多様さは、今年デビューしたアーティストとは思えないほどだ。

飛ぶ鳥を落とす勢いで、ドラマや映画、TVアニメの主題歌が決まり、最高のスタートダッシュを切ったmilet(ミレイ)は、11月6日(水)に4th EP「Drown / You & I」をリリースする。「Drown」はTVアニメ「ヴィンランド・サガ」のエンディングに、「You & I」は花王のCMソングに抜擢。いまだ謎に包まれたmiletにインタビューを敢行し、音楽性やそれを形成した人生、制作過程、最新リリースについて聞いた。

 

——一番最初に触れた音楽は何でしたか?
親がずっとクラシックを聴いていたのがあって、家の中でずっとモーツァルトが流れていました。7歳くらいの時からフルートを習っていまして、最初の楽曲は「メリーさんの羊」でした。

——これまでいろいろなジャンルの音楽を聴いてきて、自身でこれが一番好きな音楽だなっていうのはありますか?
結局、クラシック音楽に戻ってきています。

——自身でリリースされている楽曲の中で、クラシック音楽と共通しているところはありますか?
クラシックと共通するところが顕著に出たのは、映画「バースデー・ワンダーランド」のために制作した「Wonderland」だと思います。初めてオーケストラを使用した楽曲の依頼があったんです。(他の楽曲でも)弦楽器の響きは世界観が広がって好きなので、ストリングスは入れています。

——クラシック音楽を聴いてきて、良かったと思うところはありますか?
原点に帰れるところだと思います。今、私が関わっているのはポップミュージックで、いわゆる流行りがある音楽。私の音楽性は、どんどん変わっていくんですよ。だから自分のベースになるものを見失いそうになる時があるんです。タイアップをいただいて、その世界観にも踏み込んで作るとなると、自分はどこから来たんだっけ? って思うことがあるんです。そういう時にクラシックを聴くと「私のベースはここだな」って、戻ってくることができるんです。クラシックを聴いて育ったので、体の中がクラシック軸になっていて良かったと思います。

——音大ではなく、映像の道を選んだ理由について聞かせてください。
高校3年生の最初までは、音大に進学するものだと思っていたのですが、ふと音楽以外の勉強が楽しくなってきて、もっといろいろ勉強したいなって思ったんです。勉強と音楽を結び付けられないかなと思っていた中、映像や映画という選択肢に辿りつきました。

——どんな勉強をされたのですか?
映画の誕生から歴史の映画理論、脚本、ストーリーのプロット、ショット分析や、心情分析、ドキュメンタリー映画など隅々まで勉強しました。音響効果などの授業もありましたが、挿入曲についてはなく、卒業論文で映画の音について調べました。とても面白かったです。

——心情分析とは?
視覚効果としての色と心情の対比です。この映像は青みがかっていたり、後ろの照明で赤をかけたりして、登場人物の心情を比較します。

——ストーリーや感情、視覚効果などが今に繋がっていると感じますか?
私は曲を作る時、最初に頭の中で映像を思い浮かべることが多いです。最初に歌詞を書く人がいるように、私は最初に頭の中でショートムービーを作ります。それに合わせてサウンドトラックを作っていきます。自分だったらこのシーンをどう繋げるかを考えるのが好きで、その遊びが活きているなと思います。

——11月6日(水)にリリースされる「Drown」も同じように制作されたのですか?
これはイメージもあったし、「ヴィンランド・サガ」の原作も読んでいたので、すごくビジョンは浮かびやすかったです。エッジの効いた曲にしたいと思っていました。頭の中に浮かんだビジョンに空気感があって……すごく冷たい空気、乾いた土地の草の匂い…。それを再現できるように、声にリバーブはかかっているけれどドライな加工をしたり、声の芯が分かるようにしたり。後ろのトラックも派手じゃなく、コーラスで派手にしたかったのも、人間味のある人の温度が伝わる声で、人の「熱さ」が伝わるように。冷たい空気と人間の熱さのコントラストがあるような曲になると理想だなと思いました。

——人間の熱さという意味では、アメリカで撮影できて良かったですね。
歌声と合っていたと思います。灼熱の砂漠でした。狼と撮ったんですよ(笑)。面白かったなぁ…。

——自身のミュージックビデオを撮る際も、こんなふうに撮りたいというのは自分の中にありますか?
「Drown」のミュージックビデオは、アメリカで撮影しました。私のビジョンは冬だったんですけど、アメリカの監督達と話して、アイデアを提案してもらいました。そしたら結構夏だったんです(笑)。真逆なのが逆に世界観を広げてくれて、曲の聞こえ方も変わってくるなと思いました。

——歌声に個性がありますよね。実際にお会いすると、ピュアで清楚な感じですが、好きだと伺っているビョークのようなダークエッセンスがあるなと思って。
ダークな部分は自分でも分からないのですが、今までただ趣味で歌っていた歌声だと誰も聴いてくれないだろうなと思ったので、おっと驚くような、自分も驚けるような歌声を探していました。

——クラシックの原点があるmiletさんだからこそ、面白い点だと思いました。
自分の中に深い沼がいくつかあるんです。音楽を聴く時も、歌う時も、その中へスポンと入るんです。クラシックのベートーベンを聴く時の沼は粘度が高くて抜け出せない感じで、歌う時の沼はもう少し透明度が高いんです。

——海外にも住まれていたと聞きました。その時の経験が、そういった自分を見つけるきっかけになったと思いますか?
海外で一人になる経験をして良かったですね。あまり馴染めなかったり、引きこもったりもしました。その中で一人の楽しみ方を見つけたんです。絵を描くこと、本を読むこと、指で遊んだりすること。そして、自分の人格がいくつか見えたというのが良かったと思います。すごく落ち込んで無になってしまう時に、別の私が出てきて励ますんです。「とりあえず行こうよ」とダウンタウンに連れ出してくれると思ったら、あっけらかんとした私がいたり、「そういう時間も必要だよね」となだめてくれる私もいたり。最初は違和感があったのですが、慣れるとすごく楽しくて。何人も自分がいる。それが曲作りへ有効に動いたりしますね。スイッチがすごく変わりやすいところが良かったんだと思います。「Drown」だったらクールな冷たい自分、「Fine Line」だったら前向きな自分が出てきました。私の中のmiletさん達に導いてもらえる感じはします。

——ネガティブな経験をしたことも、いろんな自分を引き出すことに繋がっていると思いますか?
当時は泣いていた日々もありましたが、自分の痛みが分かったからこそ、人の痛みが分かるようになりました。どの言葉が響くか、どういう言葉が救ってくれるのかというのは、自分が経験したからよくわかります。必ずしも同じ体験ではないにしても、きっと何か感じていただけるのではないかと思います。

 

最新リリースの「Drown / You and I」の配信はこちらから。

 

Drown / You & I【初回生産限定盤】
発売日:11月6日(水)
価格:1,500円+税

 

Drown / You & I
発売日:11月6日(水)
価格:1,250円+税

 

Drown / You & I【期間生産限定盤】
発売日:11月6日(水)
価格:1,500円+税