韓国発のフレグランスブランド「nahes(ナフ)」が日本に上陸する。

近年のフレグランス市場を振り返ると、その中心には「クリーン」や「ウェルネス」という価値観があった。香りは自己表現であると同時に、自分自身を整え、心を落ち着かせるためのツールとして語られてきた。透明感、余白、静けさ。そうした美学は香水をより身近なものへと変えた一方で、どこか均質化も進めた。

そんな潮流に対して、nahesは少し異なる場所から現れたブランドだ。

ブランドが掲げるのは「We crave raw sensuality over luxury(ラグジュアリーよりも、生の官能性を)」というメッセージ。磨き上げられた高級感ではなく、人間の内側にある衝動や欲望、未完成な感情に価値を見いだす。外見は極めてミニマルでありながら、その内側には粗削りな本能や説明不能な魅力を宿している。

その姿勢は香りの名前にも現れている。

例えば「SO36」はベルリンの伝説的クラブから着想を得ており、ウイスキーやオーク、群衆の熱気が混ざり合う夜を表現する。「POOR BUT SEXY」は2000年代初頭のベルリンを象徴した有名なスローガンを引用し、創造性と自由に満ちた都市のエネルギーを香りに落とし込んだ。

興味深いのは、nahesが香りそのものを売っているというより、都市やカルチャー、記憶のムードを販売しているように見えることだ。

ベルリンの地下クラブ。
90年代のアンダーグラウンド。
メルボルンのアートストリート。

彼らの香水は、花や木の説明から始まるのではなく、その場所に流れていた空気や感情から始まる。
だからnahesは、クリーンでもウェルネスでもない。

むしろそれらが主流になった時代だからこそ現れた、ある種のパンクなのかもしれない。

大声で反抗するわけではない。ボトルデザインは驚くほど静かだ。しかし、その中に封じ込められているのは、整えられたライフスタイルではなく、人間の不完全さや欲望である。

香りを「気分を良くするもの」から、「感情を揺さぶるもの」へ。

nahesの日本上陸は、韓国発の新ブランド登場というニュース以上に、いまのフレグランス文化に対するひとつの小さなカウンターとして読むことができそうだ。

CHILD OF THE 90S
荒々しくも自由だった1990年代の記憶を静かに呼び覚ます。ダークでアーシーな深みを持つパチョリにスモーキーな質感が重なる、ヴィンテージで原初的な香り。

Untitled(Red
マーク・ロスコ(Mark Rothko)の無題作品のように定義や境界に囚われず、まとう人それぞれの個性を引き出す。気品あるターキッシュローズにウッディなニュアンスとほのかなアーシーノートが重なる、神秘的でジェンダーレスな香り。

Phoebe
無垢なピュアさと抗いがたい色気がせめぎ合い、魅惑的な余韻を残す。華やかなジャスミン・サンバパックに温もりを帯びたムスクが重なる、繊細で官能的な香り。

SO36
ベルリンの伝説的なクラブカルチャーの熱狂と独特の緊張感を映し出す。魅惑的なウイスキーに重厚なオークウッドとダークチョコレートのほろ苦さが重なる、鮮烈で野性的な香り。

POOR BUT SEXY
ベルリンの反骨精神と自由な創造性を表現し、飾らないセクシーさを引き出す。ミステリアスな刺激を放つサフランにレザーの荒々しく大胆な質感が重なる、独創的で力強い香り。

HEIDI
白く清らかな花々の中に、磨かれていない本能や奔放な魅力を宿す。クリーミーなチュベローズに艶やかなアニマリックノートと温かなアンバーが重なる、ジェンダーニュートラルな香り。

Fitzroy
カルチャー街・フィッツロイが醸し出す自由な空気感と、芸術的で個性的なスピリットを描き出す。スモーキーなグアヤクウッドに重厚なウードとまろやかなサンダルウッドが重なる、奥行きのある香り。

オードパルファム(50mL) 各¥28,900
ディスカバリー セット(2mL×7本)¥7,800