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Life beyond style

温室効果ガス排出削減に向け「パリ協定」など国際的な枠組みも取りまとめられ、世界的な潮流となる中、かつて世界のメーカーが商品生産に当たり用いてきた材料が、地球にとって「危険」と知られるようになってから、まだ20年余りしか経っていない。

看板商品の多くに「エア」を採用する米スポーツ用品大手のNike(ナイキ)も、決して遠い過去ではない1990年代まで温室効果ガスを使用していたメーカーの一社だが、このほど「Nikeのエアが環境に優しい理由」として、温室効果ガスからの脱却・転換の歩みをまとめ、公開した。

同社によると、NASAの元技術者フランク・ルディがNike創業者のフィル・ナイトに、シューズの中にエアバッグを組み込む「奇抜」なアイデアを提示し、エアに関する協力を始めた頃、エアを膨らませるために選ばれた材料は、2つの気体「ヘキサフルオロエタン(Freon 116)」と「六フッ化硫黄(SF6)」だった。大きな分子から成る両気体は安定性が高く、不燃性でエアバッグに適していたという。

同社はまず、ほとんどのエアソールにFreon 116を採用するも、Freon 116の生産終了と共にSF6にシフト。1989年にはSF6のみを使い生産を始めるが、使用量がピークに達した1997年に、「深刻な事実」を知ることになる。SF6が大気中に長期間滞留する気体として、地球環境に悪影響を与えるとされる温室効果ガスであることが分かったのだ。

これを受け、当時はまだ企業の温室効果ガス削減を求める規制のない中、同社は使用する気体の変更に踏み切ることを決断。2000年をめどに、SF6の使用を段階的に削減し完了するゴールを定め、実現を目指すことになる。

「これは簡単なことではありません」と同社。ブランドの「顔」となるエアの製作に欠かせなかったSF6からの転換には、多くのプロセスやプロダクトの変更を余儀なくされる一方で、多くのファンを抱える「エア」の感触や機能は維持しなければならない。「環境に優しいエアソール」を作る道のりが始まった。

雇用したのは、ポリマー専門の化学者やプロセスエンジニアら。分析のための研究室も作り、試験用の機材をそろえた。SF6からの脱却完了を2006年に延期し、試行錯誤を重ね、「窒素」によるエア作りを可能にした。環境監視グループに対しても、「全商品にSF6は含まれていない」と誇れるようになったという。

現在は、全てのエアソールが最小でも50%以上のリサイクル素材を含み、「ナイキ エア ヴェイパーマックス」は75%が再生素材になった。「エア」が、ブランドの中で最も環境に優しいソール材となったのだ。

地球のことを考えて行動する4月22日の「アースデイ」も間近に迫る中、デザインや機能性に加え、「地球への優しさ」を感じながら、エアで大地を踏みしめてみるのもいいだろう。