夏は、一本のホワイトパンツから。
正直言って、ホワイトパンツに苦労して稼いだお金を使いたいと思ったことは一度もなかった。少なくとも最近までは。デニムを愛用している人間にとって、“ホワイト” はほとんど意識することなく素通りしてきた色だった。だが、いつものようにサマースタイルのムードボードを作っていたとき、「一度汚したら終わり」な色ばかりで埋め尽くされていることにふと気がついた。
こうして、白のサマーパンツ探しが始まった。様々な店を回り、いろいろなシルエットを試した結果、ひとつはっきりしたことがある。それは、この手のパンツは、一般的なデニム以上に作りが重要だということだ。ごまかしが効く余地はほとんどなく、どれも中途半端に丈が短かったり、ルーズ過ぎてだらしなかったり、あるいはやたら股上が浅かったりした。結局、どれひとつとして心を動かすものはなかった。そこで最後の望みをかけてUNIQLO(ユニクロ)へ向かい、体感では4時間にも及ぶ試着室の列に並んだ。そして驚いたことに、そこで求めていた一本に出会ったのだ。
英国人デザイナーであり、現在はUNIQLOのクリエイティブディレクターを務めるクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)のコレクションとして登場したこのバレルパンツは、トレンド感だけでなく、実用性も申し分ない。(ちなみに、見逃していた人のために言うと、Pantone(パントン)が今年のカラーに選んだのは「クラウドダンサー(Cloud Dancer)」だ。要はオフホワイトである。)最初は “バレル” という名称に少し戸惑った。このシルエットは、もう流行りが過ぎ去ったものではなかっただろうか? どうやらそうではないらしい。ワイドでややテーパードした形は驚くほど今っぽく感じられ、コットンツイル素材がほどよいハリを生み、だらしなく見えるのをうまく防いでいる。ワイト・ケラーらしい、シャープで日常に取り入れやすいテーラリングのセンスが、この一本にもはっきりと表れている。
ゆとりのあるシルエットもさることながら、決め手になったのはウエスト内側に仕込まれたドローコードだった。丈感は理想的だったが、このちょっとした工夫がなければ、ベルトは必須だっただろう。そして正直なところ、この手のパンツにベルトを合わせると、せっかくの抜け感を台無しにしてしまうことがある。決して派手な機能ではない。だが、ずり落ちそうなパンツを引き上げるために、あの情けない小さなジャンプをしたことがあるなら、この隠しドローコードのありがたさがよく分かるはずだ。

このホワイトパンツブームが、ある長身のオーストラリア人のような服装を少しでも真似したいという気持ちから始まったのかどうか——昨年のヴェネツィア国際映画祭に現れた彼の、全身ホワイトでまとめたBOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)のルックがいまだに私の頭から離れないのだが——それは重要ではない。重要なのは、私がついに理想の一本を見つけたということだ。そして今のところ、それだけで私の夏のワードローブは十分満たされている。
- Words: Patrick Grady





