旅が誘う予想外の見地と
ミニマリズムの調和
Pitti Uomo 90での初開催以来、MINI FASHIONはプロジェクトの根源である旅のルーツと仕立てへの探求を組み合わせ、現代の生活や旅行に対しての新たな気づきを見出してきた。
The Woolmark Company(ザ・ウールマーク・カンパニー)と協業のもと世界中から新進気鋭のデザイナーを招致し、同社の代名詞であるメリノウールを使ったカプセルコレクションを作るプロジェクトも発表されている。
中国・上海のSTAFFONLY(スタッフオンリー)やアメリカ・ニューヨークのPH5(PH5)、イギリス・ロンドンのLiam Hodges(リアム ホッジス)に至るまで、今プロジェクトでは、繊細で高品質なメリノウールを実験的かつ革新的なアプローチで、その幅広さを見せた。
Field Notesと題された前回のプレゼンテーションでは、旅・記憶・体験を着想源に、参加デザイナーがこの幅広いテーマに対してそれぞれ解釈をして表現した。
その内の一人であるハットデザイナーのリケ・フォイヤーシュタイン(Rike Feurstein)は、柔らかく凡庸性に富んだウール生地をしっかりとしたシンプルなヘッドウェアへと作り変え、最近訪れたロシアの宮殿で体験した濃密な感覚にオマージュを捧げた。
ミニマリズムかつさりげないアプローチに定評のあるフォイヤーシュタインは、自身のもの柔らかなデザイン美学を採用している。発表された二つのヘッドウェアは、メリノウールでできた見慣れたシルエットで、シンプルな構造となっている。結果、最小限の装飾ながらもどちらも普遍的なシルエットを印象付けている。
一方でハットに使用された目を引く2色のカラーは、ロシア・サンクトペテルブルグ近郊にあるエカテリーナ宮殿からインスピレーションを受けている。巨大で豪奢なロココ調の宮殿は19世紀に建設され、当時のロシア皇帝であったツァー(Tsars)の休暇先として広く知られる。
独特なターコイズカラーは宮殿の外観全体を彩る色、そして金色を帯びた琥珀色は金を使った精巧な内装からイメージされている。
フォイヤーシュタインはフェルト技術によってその構造よりも温かさと上品さで良く知られるメリノウールの常識を覆し、通常は重厚なセーターやマフラーに使われる素材のみで、そのままヘッドウェアを作り上げたのである。
世界で最も豪勢な建物の一つから影響を受けたミニマルなデザインの巧妙な不一致さは、旅と新たな経験が視野を広げることに繋がるということである。旅はしばしば個人の持つ習慣や慣れ親しんだ場所から、新たな予想外の見地へと誘う。フォイヤーシュタインはこのデザインを通じ、自身の使う素材と独創性において、それをやってのけた。
このField Notesコレクションは、highsnobiety.comにて限定販売中である。
- Original Words: Gregk Foley