Sergio Rossi 2024年秋冬コレクション:乗馬とテックフォワードなひねり
@SERGIO ROSSI
涼風が秋の到来を告げる頃、新たなファッションを探しに出るのはファッション愛好家の恒例行事だ。ファッション感度の高い人なら、今シーズンのストリートやランウェイをウエスタンウェアが席巻していること、ファッション、ポップカルチャーの両方で乗馬の美学が人気を集めていることに気付いているだろう。Sergio Rossi(セルジオ ロッシ)の2024年秋冬コレクションもまた、反抗的でありながら洗練された乗馬文化のエネルギーに傾倒しているのにも驚くことはないだろう。
しかしSergio Rossiは単に従来の乗馬をそのままに受け入れるのではなく、現代的でテックフォワードなひねりを加えながら再解釈し、今のファッションの方向性にマッチさせている。
@SERGIO ROSSI
エレガンスとコントロールが完璧に調和していた14世紀のイタリア、マントヴァの横乗り乗馬の歴史を汲み、力強さと伝統、無邪気な女性らしさを融合させたコレクション。エレガンスとアティテュードとが互いによく合うものであることは常に知られてきたことだが、Sergio Rossi 2024年秋冬コレクションはそれを改めて証明している。
今回の2024年秋冬キャンペーンは、ファッションが古典的テーマと新技術とを融合させた好例とも言える。AI生成画像を従来の写真との融合という、横乗り乗馬のエレガンスへのオマージュ、デジタル時代版。ストリートウェアのデザインからスニーカーの新作まで、AIがあらゆるものを一新させていく様を私達は目の当たりにしてきたが、このキャンペーンにおいてAIは単なる目立ったツールという次元に留まらず、ストーリー性に奥行きを持たせる媒体として機能している。
@SERGIO ROSSI
今シーズンのテーマは、なめらかなライン、丸みを帯びたシルエット、アイコニックなバックルと、いずれも乗馬の鞍に着想を得た要素で構成されている。膝上ブーツと洗練されたバックルのディテールが特徴の「SR NORA」ラインもそうだ。乗馬スタイル、そして最近関心の高まっている大胆で主張のあるフットウェアというテーマ、その双方への回答となっている。
「SR PILIER」は、ハイパーフェミニンとエフォートレスシックのバランスが取れたシリーズだ。バレエフラットやメリージェーンが再来(「コケット」や「バレエコア」に関するトレンド分析を見れば一目瞭然である)している中、クラシックでありながらも今らしさを感じさせる。シグネチャーのプレクトラム型ヒールがエッジを効かせ、ソフトなスタイルにアクセントを加える。
@SERGIO ROSSI
「SR ARC」シリーズは、ロデオ・カルチャーの大胆さをイタリアンラグジュアリーの視点で遊び心豊かに再解釈したシリーズ。主役はカウボーイブーツのスタイルをよりシャープかつフェミニンなエッジで再構築したバナナ型のピンヒール。曲線的なラインと巧みな職人技の光るパンプス、バレリーナ、フレアブーツは、さながら履くアートだ。
カラーに関しても、乗馬の伝統に根差した豊かなカラーパレットを期待して良い。ブラック、ワイン、タバコといったクラシックな色調に加え、ホワイト、シルバー、ディープマゼンタといった明るい色調も揃う。ストラクチャードレザー、ソフトスウェード、シワ加工ラメなどの手触りの良い高級素材も五感を満足させる。
Sergio Rossi 2024年秋冬コレクションは総じて、Sergio Rossiの持ち味である力強さ、スタイル、洗練されたテイストが衝突し合う多面的な女性らしさへの讃歌と言える。コレクションで足元を装って向かう先が乗馬の厩であるにせよ、街であるにせよ、乗馬のスリルを体感できるのがこのコレクションだ。バランス、優雅さ、そしてちょっとしたセンスこそがラグジュアリーの全てであるということを、優れた馬のように証明している。
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- WORDS: COSTANZA ACERNESE
- TRANSLATION: AYAKA KADOTANI