style
Where the runway meets the street

©︎STUSSY / LIAM MACRAE

STÜSSY(ステューシー)はSupreme(シュプリーム)、PALACE SKATEBOARDS(パレス スケートボード)と並ぶ、3大コンテンポラリーストリートウェアブランドのひとつだ。3者は似通った領域で活動し、似通った歴史を持ち、似通ったブランドとしてまとめられがちだが、実際には類似ブランドではない。

SupremeとPALACEはこれからもずっと買いたいと切望され、売り買いされ、話題にされ続けることだろう。一方STÜSSYはストリートウェアの枠を超えた進化を遂げている。そこには歴とした違いがある。

古くから存在するストリートウェア関係のインターネットコミュニティの中で、STÜSSYは絶えず驚異的バズりアイテムを発信し、圧倒的影響力を持ち続けている。STÜSSYのアイコンにはSupremeの「Box Logo」のような古臭さもなければ、PALACEの「Triferg」のようなこれ見よがし感もない。昔からの筋金入りのファンも憧れれば若い世代も買いたいと切望するのがSTÜSSYだ。尊重されているファッションブランドの数々と同列に議論するにも相応しい。

STÜSSYは一体、どのようにしてそれを成し得たのか。

STÜSSYの再生については既に多くの議論がなされているので、あえて繰り返すまでもないだろう。ただ十分に認識されていない点が一点ある。

そのひとつは、STÜSSYのテイストを静かに先導する舞台裏の集団だ。

そしてまた、40年間一時も廃れを感じさせたことのないSTÜSSYというブランド名そのものの果たす役割も大きい。しかしクールさを見せ続けるだけでは、これほどの勢いを保つことはできない。やはり買い手を呼ぶのは力のあるプロダクトだ。

STÜSSYはスタイリッシュさに磨きをかけ、他の追随を許さないプロダクトを送り出すことをシンプルにし続けてきた。クールさを付随的要素として感じさせるインスタントクラシック。普通でありながら普通より良い、という最高のクール。

こなれたカット、フォルム、見せ方に、STÜSSY独自のストリートウェアのレガシーが味を加える。派手なグラフィックに溺れる先輩格ブランドや、価格帯を上げている若いライバルブランドをよそに、STÜSSYは、人々に既に着られている服をより良いものにする、という根本に取り組んでいる。

2024年春コレクションも、時代の潮流に挑むかの如く、実際に着られるアイテムが満載だった。仕事に行ったり、学校へ通ったり、スケートに行ったり、食事やデートに行ったりできる、実際の服についてのより良い提案がそこにはあった。

こうした服には見覚えがある方が多いだろう。例えばどこかのギャラリーのオープニングイベントか何かでのセルフィーを載せているような誰かのInstagramのストーリーズを見ると、洗いざらしのチョアコートに膨らんだシルエットのナイロンシャツ姿の人がその後ろに映っていたりする。TikTokでも、クォータージップのセーターにバギージーンズ姿の格好の良い若者達同士の街頭インタビュー動画が流れてきたりする。

STÜSSYは単にリーズナブルで、物として良い、特徴のない定番アイテムを生産しているのではない。ストリートウェアブランドとしての主張をしながらも既製服レーベルのテイストを備えているのがSTÜSSYだ。

そしてSTÜSSYは、世間に既に着られている、かつこれからも着続けたいと思われるようなアイテムを、他のどのブランドよりも作り出しているブランドだ。これほどうまく時代を味方につけているブランドは他にない。

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よく着込んだヴィンテージセーターのように、ひび割れたロゴがプリントされたオーバーダイのワイドカットのフェードトップス。他のオーバーダイ加工アイテム同様に魅力的な、着心地を追求したストーンウォッシュ加工のチョアコートやジーンズ。ワークウェア、ミリタリー、そしてSTÜSSYの生まれ故郷であるカリフォルニアのビーチのインスピレーションが、鮮やかでありながら同時に地に足の付いた感覚を演出する。

全てのアイテムがまるで都会っ子のクローゼットから飛び出してきたかのように実際の暮らしを感じさせる。STÜSSYのゆったりとしたコンテンポラリーなルックスは、90年代のJ.Crew(ジェイクルー)と重なる波長を持っている。

典型的ストリートウェアの要であるグラフィックプリントが少ないのは、STÜSSYが時代を先取りしている点だ。プリントが全くないわけではないが、あっても、ブランドの創業年を表現した「80」のさりげないプリントか、STÜSSYのクラシックなモチーフを思わせるレトロなオールオーバープリント程度だ。

STÜSSYはブランド戦略の力を熟知している。STÜSSYのデビュー・ジュエリー・ラインも、その4分の3がシグネチャーシェイプを使ったもので、入荷とともに完売となった。

STÜSSYが現在つくっているものの多くは、他ブランドが3倍の値段を付けている服と互角だ。あるいは他ブランドの方がSTÜSSYと互角と言った方が良いのかもしれない。

@1ove.itt loveee this brand #fyp #foryou #xyzbca #fashion #stussy #stussy8ball ♬ original sound – EX7STENCE™

今のSTÜSSYの良さはそこにある。大人のための若い服を作っているということ。どのアイテムにも年齢や性別の制限がないこと。周りの目線が気になる若作りアイテムや、着るのに勇気の要るようものは一切ない。

ブレザーはカーディガンのように羽織れるほど着やすい。よく目を引くテクニカルジャケットは襟付きシャツに合わせられるほどスマートだ(まだ完売していなければの話だが)。

スニーカーでの大々的なコラボレーションや特別グッズ、そしてSTÜSSYの活力を刷新し続ける巧みなパートナーシップも確かにあるが、何より前提として存在するのは、気取らない優れた服だ。

STÜSSYだけがこれほど長い間、優れたブランドであり続けている理由は、シンプルにそこにある。