【GUCCI × T.O.P】世界を透かす——T.O.Pは創造性で呼吸する。
創造とは、自分を表現することではない。
世界が、自分を通り抜けられるほど透明になることだ。透明なものには、風が通る。風が通るものは、呼吸を始める。呼吸とは、生きているという証である。一定ではなく、揺れ続けること。整い過ぎないこと。止まらないこと。だから創造もまた、呼吸に似ているのかもしれない。
完成されたものは、美しい。しかし、完璧なものは、もう呼吸をしていない。そこには迷いも、震えも、誰かが入り込む余白もない。一方で、不完全なものは揺らぎ、風が通る。光が差し込み、時間が流れ込む。そして、誰かの記憶が静かに浸潤していく。そこには作者だけではなく、自分自身の呼吸を重ねられる余白が残されている。
創造とは、その揺らぎを拒まないことなのだと思う。世界を説明することでも、自分を強く主張することでもない。世界が静かに自分へ入り込み、その全てを一度、自分の呼吸へ変えていくこと。
私は、その知性を「浸透知性(Permeable Intelligence)」と呼びたい。知識を積み重ねる知性ではない。世界を拒まず、自然も、時間も、他者も、自分の内側で呼吸させる知性である。

ラグジュアリーも、本来そうあるべきなのだろう。歴史とは保存されるものではない。身体を通り、新しい呼吸を得たとき、初めて現在になる。GUCCIが今シーズン提示したのもまた、完成された様式ではなく、身体に寄り添い、文化と共鳴しながら更新され続ける創造だった。シームレスに身体へ溶け込む服。見えないエッジィ。説明されることよりも、着る人の身体の中で意味を獲得していくラグジュアリー。そこでは服は完成品ではない。着る人の呼吸によって、初めて創造が始まる。
そして、その静かな更新の裏側には、GUCCIのアーティスティック・ディレクター デムナの姿勢があるように思う。彼が今回試みたのは、新しいGUCCIをつくることではない。GUCCIというブランドに、もう一度呼吸を取り戻すことだった。歴史を壊すのではなく、その歴史が現代の身体を通り抜けられるほど透明にすること。伝統とは残すものではなく、誰かの中で再び息をし始めたときに初めて未来になる。
だからT.O.Pという存在は、このコレクションと不思議なほど自然に重なって見えた。彼もまた、自分を完成させることではなく、世界を通し続けることで、自らを更新し続ける創造者だからだ。
Courtesy of GUCCI
今回、T.O.Pと向き合いながら、私は一人のスターに会ったという感覚がなかった。知性と感性、自然と芸術、過去と未来……その境界が静かにほどけ、世界を拒まず受け入れ続ける、ひとつの「空気」に包まれるようだった。
彼には強い美意識がある。しかし、その美意識は閉じた哲学ではない。それは、自らの信念すら手放すことを恐れない透明さだった。だから彼は、最も人間らしかった。そして同時に、誰よりも「人間」という輪郭を超えていた。

沈黙のLOGOS
——長い沈黙の期間を経て感じたことがあります。現代は誰もが常に発信し、説明し続けることを求められていますが、T.O.Pさん自身は「語ること」と「語らないこと」の境界をどのように考えていますか?
自分という人間が必ず表現すべきこと、あるいはときには耐えて、あえて表現しないべきこと。その境界について、いつも考えています。
——沈黙は一般的に「不在」として捉えられます。しかし振り返ってみると、その時間はT.O.Pさんにとって失われた時間だったのか、それとも何かを育てる時間だったのでしょうか。
むしろ、自分自身を見つけることができた時間だったと思います。新たに自分を取り戻すことができた、私にとって人生で最も大切な時間でした。そしてときには、とても暗い瞬間もありました。でも、その暗い時間があったからこそ、自分自身をより大きく成長させることができたのだと思います。もしあの時間がなければ、こうして再び音楽制作をしながら、立ち上がることはできなかったでしょう。
——T.O.Pという人物は、以前から全てを説明し尽くさない魅力を持つ数少ないスターの一人だと思います。多くの人は、自分のことを理解してほしいと思いながら生きています。他者から理解されることは、T.O.Pさんにとってどれほど重要なことでしょうか。
私は無理に理解してもらおうとはしません。一番大きな理由は、私の仕事や活動は、今の時代の人々に理解されるためというより、未来に向けた作品として語るものだと思っているからです。だから、無理に今の自分を人に説得したり、理解してもらおうとしたりするのではなく、常に黙々と自分の仕事をしていこうと思っています。
——壁にぶつかったとき、誰かに肯定してほしいと思う瞬間もあると思います。周囲から理解されないことで、孤独や寂しさを感じることはありませんか?
私は自己憐憫に浸ろうとはしません。むしろ、孤立した時間があるときこそ、その時間をできるだけ有意義に使おうとする方だと思います。
——心が強い人ですね。
私という人間は、誰かと戦う人間ではなく、自分自身と戦うべき人間だと思っているからです。自分との戦いに負けてしまえば、何もできなくなる。その思いを座右の銘のように持ちながら、一日一日を生きています。
All GUCCI
——音楽、俳優、アート、それぞれを経験した今、最も本質的に自分を表現できる手段はなんだと思いますか?
今挙げていただいた全てのジャンルを含めて、結局は私が世にお見せする作品そのものだと思います。その作品こそが自分を表現するものであり、そこでどんな評価を受けようとも、作品を通して語るのが私の仕事だからです。自分を表現する手段は、どれかひとつのジャンルというよりも、あらゆる表現活動の中で私が世の中に送り出すもの全てです。音楽であれ演技であれ、最終的には全て芸術という共通点があります。だからジャンルで区切るのではなく、その中で生まれる作品こそが、自分を表現する手段なのだと考えています。
——少し答えにくい質問かもしれませんが、私は常に芸術とビジネスの関係について考えています。マーケティングとピュアなアートは異なる場合もあれば、両者がうまく融合する場合もあると思います。そのバランスについて、T.O.Pさんはどのように考えていますか?
私は、その2つは同じものだと考えています。というのも、私はファインアートのアーティストではなく、商業アーティストだからです。私が生み出すものは、結局のところビジネスアートであり、芸術とビジネスを分けて考えることはありません。例えば、今日こうしてGUCCIの撮影をしていますが、GUCCIも商業的ファッションブランドです。こうして一緒に仕事をするということ自体が、商業芸術におけるコラボレーションだと思います。そう考えると、結局全てはビジネスアートなのではないかと思います。
——もし今の自分をひとつの言葉で定義するとしたらなんでしょうか。人生の中で、自分を最も変えた言葉はありますか?
今の自分を一言で表すなら、学び続ける「学生」のような心を持って生きている人間、だと思います。自然の中にある美しいものを見たときも、美しい心を持った人に出会ったときも、常にそこから良い部分を学ぼうとしています。自分が生きる姿勢そのものが、いつも多くのことを学び、成長していこうとする気持ちなのだと思います。

脱“アイドル”という存在
——BIGBANGはK-POPの歴史を変えたグループのひとつだと思います。T.O.Pさん自身は常にアイドルという枠組みから少し距離を取っていたようにも見えました。ご自身では“アイドル”という言葉をどのように捉えていますか?
幼い頃からこうした質問をよく受けてきましたが、そのことについて深く考えたことはなかったように思います。それがおそらく、私という人間のアイデンティティなのかもしれません。そもそも、アイドル、ミュージシャン、アーティストという境界を分けて考えたことも、それを意識して生きてきたこともありません。私にとっては、ただ音楽をする時間が大切なだけです。むしろ、そうした区分を意識すること自体、人から見られる自分の姿をより意識する人だからこそ生まれる考え方なのではないかと思います。私は、そうした境界を意識して生きてきたことはなかったように思います。
——ご自身の中では、デビュー当時から “アイドル” ではなかったという認識なのでしょうか。
全くありませんでした。
——現在はSNSやアルゴリズムによって、スターでさえも「分かりやすさ」を求められる時代です。その中で、定義されることへの違和感を感じることはありますか?
そのような違和感を覚えたことは、私は一度もありません。なぜなら、私はその枠組みの中に閉じ込められて生きようとはしてこなかったからです。だからこそ、この10年という時間の中で、一歩引いて自分自身を見つめることができたのだと思います。もし再びその中に戻り、そこで縛られながら生きることを選んでいたとしたら、その時間の中でこれほどの「余白」を持つことはできなかったと思います。
——T.O.Pさんは長いキャリアの中で、多くの人にとっての “T.O.P 像” を背負ってきたと思います。そのイメージは、T.O.Pさんを自由にしましたか? それとも制限しましたか?
私は一度も、自分に制限があると感じたことはありません。いつも自由だと思っています。自信を持ってそう言える理由は、デビューして20年が経った今でも、世の中の人々は本当の私がどんな人間なのか、まだ誰も知らないと思っているからです。ファンのみなさんを除けば、私がどのような人間なのかを本当に理解している人はいないと思います。むしろ私から、「みなさんは今でも、本当の私のことを知っていると言えるのでしょうか」と問いかけたいですね。
All GUCCI

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【書誌情報】
タイトル:HIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE17 T.O.P
発売日:2026年 9月1日(火)
定価:2,750円(税込)
仕様:B4型
◼︎取り扱い書店
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※『HIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE17』は、表紙・裏表紙以外の内容は同様になります。
- Photographer : Jiyong Yoon
- Styling : Myungsun Lee @ Tikitaka Official
- Hair: Kongtan
- Make-up: Hyesoo You
- Prop Stylist: Yeseul Lee
- Production : Hyojeong Choi, Kyungbok Bae @ Kachi Media
- Interview & Words : Yuki Uenaka
- Translation: Mizu Fujiwara