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Life beyond style

モナコのグレース王妃(Princess Grace of Monaco)、レブロン・ジェームズ(LeBron James)、リリー・ヴァンダーウッドセン(Lily Van Der Woodsen)、ドレイク(Drake)、そしてFYPに頻繁に登場する裕福なインフルエンサーに共通するものと言ったら? 彼らは全員、VAN CLEEF & ARPELS(ヴァン クリーフ&アーペル)のアルハンブラに夢中だ。

首に重ね付けしたり、手首に何重にも付けたり、ハンドバッグに掛けたりと、憧れの的であるVAN CLEEF & ARPELS の四つ葉のクローバーは、有力者からの支持や排他的な印象を煽る派手な価格設定によって強化され、さりげないステートメントジュエリーの文化的象徴に進化した。

具体的に言うと、VAN CLEEF & ARPELSクラブの入会を望む人は、好みの希少な宝石がはめ込まれたホワイトゴールド、またはイエローゴールドのアルハンブラネックレス、リング、ブレスレットを選び、それに応じて、2,000ドルから30,000ドルを越える金額を惜しまずに払う必要がある。(もっとも、売り切れている種類を小売店で見つけられたらの話ではあるが)しかし、その価値に見合う品物を手に入れられる。

VAN CLEEF & ARPELSは、その石のセッティング法とハンドクラフトジュエリーの強みで、伝説的な評価を獲得してきた。

VAN CLEEF & ARPELSの名高い想像力豊かな職人技によって育まれ、親会社リシュモンのもとで地道に成長。そして、ブランドの1世紀にわたる伝承に深く根付いたアルハンブララインは、過去10年間で静かに、じわじわと人気を高めてきた。ついには、以前のCartier(カルティエ)のLOVE ブレスレットの如く、飽和状態になりつつあると、一部から指摘の声が出るにまで達している。

ペルレのゴールドパールや、自然に着想したファウナの作品など、VAN CLEEF & ARPELSの代表コレクションが数多くあるなか、アルハンブラモチーフは、ひそかにブランドのアイコンシリーズとして浮上。

1968年に発表されたオリジナルの四つ葉のクローバーのデザインは、VAN CLEEF & ARPELS創業者一家の甥、ジャック・アーペルによるものとされている。彼がこだわっていたのは、幸運、クローバー、そしてスペインで見られるムーア風の四つ葉モチーフ。これら全てが、アルハンブラの品のいいフォルムの着想源になったという。

4枚の葉は通常貴金属で作られているが、「ヴィンテージ」ヴァージョンには異なる宝石が含まれている。どちらのタイプも、非常に富裕な、特に王室の女性の手首や首、指を飾ることが多かった。

アルハンブラを純粋な憧れの対象として確立したのが富裕層の女性達であれば、VAN CLEEF & ARPELSの貴金属モチーフを現代のジェンダーフルイドなイットジュエリーに変化させた貢献者は、ヒップホップ界をリードする男性達である。

例えば、ラグジュアリー業界の重鎮ドレイクは、マザーオブパールと18Kホワイトゴールドのアルハンブラネックレスをさりげなく頻繁に着用し、「BackOutsideBoyz」という曲に至っては、VAN CLEEF & ARPELSの名前を持ち出している。

セントラルシー(Central Cee)からオフセット(Offset)まで、現代のあらゆるラッパー達も、アルハンブラとお気に入りの高級腕時計を合わせている(時計やブレスレット自体に傷をつける危険性があるため、本当はやってはいけないことだが)。

「VAN CLEEF & ARPELSのアルハンブラが突然台頭したことは、男性セレブや顧客の間で普及したことに起因しているでしょう」と、上海のLADYMAXのラグジュアリー評論家、ドリジー・ツォ(Drizzie Zuo)はHIGHSNOBIETYとのZoomで語った。

控えめなアルハンブラが有名人男性によって成功を誇示するためのステータスに昇格すると、TikTokでのアルハンブラの深掘り、Instagramを飾る四つ葉のクローバー、TwitterでのVAN CLEEF & ARPELSに関する話題、とアルハンブラの熱狂にさらなる火を点けた。

明らかに、THE ROW(ザ・ロウ)のマルゴーバッグ、PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)の5711ウォッチ、BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)のゴールドドロップ型イヤリングなど、セレブ御用達の高級品がバーキンと同じように、最も一般的なルートであり、アルハンブラもこのパターンを引き継いでいる。しかし、現代の財産としてだけでなく、普遍的でスタイリッシュなアクセサリーとして再構築したことで、フィード上での地位を確固たるものにした。

アルハンブラは、一緒に着用されるROLEX(ロレックス)のデイトナと同じくらい正規化されている。これは、誇らしげにラッキーチャームを重ね付けするレブロン・ジェームズから、結婚祝いにペアのアルハンブラブレスレットを勧めるインフルエンサーに至るまで、あらゆる人によって立証されている。

「インターネットとソーシャルメディアはどうやら、『トレンドの拡散』にとめどなく関与している」と、我々は最近の新ラグジュアリーレポートで報告した。トレンドが一瞬の間に広まるということは、完全に “サブ” のままでいる新興文化や流行スタイルはないということだ」

そして、当ブランドの出資者であるリシュモンは、白熱するVAN CLEEF & ARPELSの拡散すら享受している。最近の報告書によると、VAN CLEEF & ARPELSは、2023年から2024年にかけてリシュモンのジュエリー部門の売上が6%増加したことに直接貢献したという。これは収益目標の達成に苦戦している業界にとって、大きな成果だろう。

アルハンブラはスタイル的にも合点がいく。現代の拡散や経済成長を切り離して考えみても、アルハンブラの飾り気のないデザインは、とてつもなく親しみやすく、それでいてロマンチックだ。

例えば、HERMÈS(エルメス)、VALENTINO(ヴァレンティノ)、Cartierがデザインしたブレスレットやバングルほど冷たい無機質さはなく、LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)やBUCHERER(ブヘラ)のようなブランドが生み出す、明らかにアルハンブラに影響を受けたデザインは、「オリジナルを買えばいいのでは?」という疑問が浮かぶ。

古さを感じさせない極めてシンプルなモチーフも、アルハンブラの美しい部分である。むしろ、今日の宝飾業界にとって重要な要素である現代的な財産を感じさせる。

「所有物が資産になり、価値が価格以上のもので定義される時代に進むなか、買い手はますます自分の購買行動を投資として見なすようになり、意味と耐久性を備えた高品質なアイテムに焦点を当てるようになっている」と、Matter Of Form(マター・オブ・フォーム)は2024年の宝飾業界報告書で述べている。

アルハンブラに対する熱狂ぶりを見ていると、2010年代半ばのCartierのLOVEブレスレットの状況を思い出す。スリムなメタルバングルが、露出過多でその輝きを失う直前ことだ。

@luxecollective

Real vs SUPER FAKE Van Cleef Alhambra Bracelet 🧐 Taking a closer look at the details of the FAMOUS Van Cleef and Arples bracelet next to a dupe! Did you spot the differences? 👀

♬ original sound – Luxe Collective

アルハンブラも同様に色褪せる運命を辿るのだろうか?

その上、アルハンブラの需要が高まるにつれて、VAN CLEEF & ARPELSVAN CLEEFの模倣品が人気を集めている。これもCartierのスーパーフェイク問題と似た状況だ。だが、アルハンブラには、大量模倣の問題に対する独自の解決策があるようだ。

「CartierのLOVE ブレスレットは、模倣品ではなく、カラーバリエーションと製品の選択肢の少なさに問題がありました。一方VAN CLEEF & ARPELSは、様々な石、素材、色でアルハンブラを提供しています。これによってはるかに新鮮さが増すのです」と、ラグジュアリー評論家、ドリジー・ツォは言う。

アルハンブラは、この幅広いバリエーションの組み合わせに加え、VAN CLEEF & ARPELSの職人技とその自然な成長過程を象徴している。さらに、報酬を払って有名人のアンバサダーにアルハンブラのスタイルを着用させたりしないため、流行の盛衰から絶縁させる役目も果たしている。

つまり、アルハンブラは今流行っていても、一時的な流行ではない。それどころか、その注目度の高さが、VAN CLEEF & ARPELSVAN CLEEFの代表的な飾りを、至高の名作たらしめる可能性を高めている。

CartierのCEO、シリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)も最近こう述べていた。「Cartierのクラッシュウォッチのように、一部のアイコンは希少性と結びついてこのステータスを獲得する。そのため、過度に露出するようなことはしない。象徴的で普遍的な他のいくつかのアイコンは、見られる回数が増えることで力を得るのです」。