リネンと地球温暖化の切り離せない関係。
素材については人一倍詳しいと自負していながら一方で、認めざるを得ない事実がある。私にとってリネンとは、20代半ばを過ぎるまで、ベッドシーツかビーチウェディングのありきたりなドレスコード、あるいはもっと抽象的に言えば、単なる香りの一種でしかなかった。しかし、古着屋で見つけたBrooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)のベビーブルーのシャツを数シーズン着回すうちに、私はこの生地の虜になっていた。最近世界がこぞってリネンに魅了されているように。
Cuccinelli(クチネリ)やCOS(コス)、ZEGNA(ゼニア)からZARA(ザラ)に至るまで、どこを見渡してもリネンがその堅苦しいイメージを払拭し、あらゆる価格帯でメインへと躍り出たことがわかる。専用の特設コーナー、一見ラグジュアリーに見えるセレブリティとのカプセルコレクション、そしてTikTokに生息する若者達。誰もがこの亜麻の繊維を「食パンの誕生以来、最高の発明だ」と絶賛している。しかし彼らは、リネンが食パン誕生の約3万年前から存在していたことを知っているのだろうか。
歴史が長すぎるせいか、世間とリネンはこれまでどこか相反する関係にあったのだ。そんな中でのクワイエット・ラグジュアリーの台頭。それこそが、一部の層に根深かったボヘミアンでスピリチュアルというリネンの固定概念を打ち破り、その実用性と美学を認めさせるきっかけとなったのかもしれない。天然繊維への回帰の波はすぐそこまで来ている。リネンのザラつきながらも心地良い肌触り、シックなシワ感、そしてアースカラーのパレットは、今やクオリティの証と見なされているのだ。これには、LEMAIRE(ルメール)やStudio Nicholson(スタジオ ニコルソン)、そしてBuck Masons(バック メイソ)やARKET(アーケット)などのブランド達の功績によるものと言っても過言ではない。彼らは現代的なスタイリングと仕立てによって、リネンを洗練された、かつ取り入れやすいものへと進化させたのだ。
リネンが突如として街に溢れかえったのは単なる一過性のトレンドではない。クラシックへの回帰、サステナビリティの再評価といった時代の軌道修正が起きていること。そしてAIの台頭によって、私達自身が人間の手仕事による不完全さを渇望し始めていること。これらが重なった結果なのだ。いや、それ以上に切実な理由がある。それは気候変動がもたらす容赦のない酷暑の夏だ。ファッショントレンドが地球温暖化によるものだなんて、あまりに皮肉な話ではなかろうか?
- Words: Maximilian Migowski