ワールドカップの規格外なドレスコードは、次のフェーズへ。
ピッチで起こる怒涛のドラマだけでは、このワールドカップは満足できないようだ。開幕戦での3枚のレッドカードという狂騒に始まり、6月14日にはドイツがキュラソーを7-1で一蹴。ベルギーもチュニジアのゴールネットを5度揺らすなど、サッカーの純粋な熱量がスタジアムを支配している。しかし今、それ以上にストリートの視線を奪っているのは、スタジアム入りする選手達による規格外の装いだ。ピッチ外で繰り広げられる緻密でエッジの効いたスタイリングは、もはやサッカーの枠を超え、新たなカルチャーの震源地として大きな存在感を放っている。
その熱狂を加速させているのは、プレイヤー達が個々に魅せる圧倒的なセンスだ。アントニオ・リュディガー(Antonio Rüdiger)が身にまとった、ユニフォームへと昇華されたUNDER ARMOUR(アンダーアーマー)と424(フォートゥーフォー)のカスタムレザージャケット。あるいはフランス代表のトレーニングキャンプに、ヴィンテージデニムをレザーのカウボーイブーツにインして現れたジュール・クンデ(Jules Koundé)。それだけではない。サリー・ベンべリー(Salehe Bembury)が手がけたPUMA(プーマ)の “破壊的” なピースをさらりと着こなす者もいれば、Nike(ナイキ)とビッグネームのワールドカップ限定コラボを着こなす者もいる。しかし、何よりも観る者を狂わせるのは、彼らによるテーラリングの解釈だ。
数週間前、スペイン代表がLOEWE(ロエベ)によるスーツの着用を発表した。それもスリーブにフェイクのシャツカフスをあしらった、遊び心あふれるブレザー。これは2026年ワールドカップに向けて各チームがユニフォームのデザイン概念を変えようと、実験的な領域に踏み出した象徴でもあった。
だが、そのハードルをさらに引き上げたのがコートジボワールだ。西アフリカ代表が今大会に選んだのは、地元を拠点とするメゾン、Ibrahim Fernandez Couture(イブラヒム・フェルナンデス・クチュール)のスーツ。選手達はマンダリンカラーのシャツにワイドパンツというオールホワイトの装いで飛行機を降り、その上に羽織った襟なしのオレンジブレザーがひときわ目立っていた。中でも手作業でタイダイに染め上げられたカスタムブレザーには象の形のボタンがあしらわれ、背中には国の紋章をモチーフにした象の刺繍が施されていた。
これらは、私達が普段の代表チームとして見慣れているような地味な黒いスーツやチーム指定のトラックスーツとは明らかに異なる。それだけでなく1974年以来初めてワールドカップ出場を果たしたコンゴ民主共和国もまた、従来の慣習に固執するつもりは全くないようだ。
コンゴ代表によるスーツは、アルヴィン・ジュニア・マック(Alvin Junior Mak)が同国の労働者階級、通称サプールのサブカルチャーにインスピレーションを受けてデザインしたものだ。全身を黒でまとめ、白シャツを合わせるというスタイルは一見オーソドックスであ理ながらブレザーの前面を大胆に覆う特大のレオパードラペルと、それに合わせた大ぶりのバッグによって、アクセントを加えている。
しかも、これは全チームが初戦を終える前に繰り広げられたほんの序章に過ぎないことから、まさにワールドカップにふさわしい展開と言える。
- Words: Tom Barker
- Photography: © Équipe Nationale de Football Côte d’Ivoire