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Life beyond style

2020年は誰しもにとって忘れられない一年となった。社会における様々な在り方は現在進行形で変化している。そして、社会の停滞により、誰しもが少なからず自分自身と向かい合うこととなった。「三代目 J SOUL BROTHERS」のパフォーマーであり、近年では俳優としての活躍も著しい岩田剛典にも、様々な意識の変化があったという。パフォーマーとしてキャリアをスタートし、現在は俳優としても活動する岩田は、自己と社会の関係性について日々思考し、それを自らの糧としながら表現し続けている。

——このコロナ禍の中で、これまで社会で当たり前とされてきた在り方がどんどん変化してきていますよね。岩田さんが、そういった流動的な社会とどう向き合っているのかということをお伺いしたいのですが、まずこの数カ月間、岩田さんはどのように過ごされましたか?

仕事面でいうと、年内に予定していたお仕事の約3分の2くらいがなくなってしまいました。緊急事態宣言中の約2ヶ月半から3ヶ月くらいは、人に会うことも出来ないし何もできないから良い機会だなと思って、基礎体力というか、身体の土台作りを一から見直そうと思い、家で出来るトレーニングをしていました。ここ数年は普段からトレーニングを追い込んでやることもしていなかったので、この数カ月で相当筋力はアップしましたね。

あとは皆さんと一緒で、ドラマを観たり、映画を観たり、基本的にテレビの前で一日が終わっていくような。そういう時間を最初の1カ月くらい過ごして、だんだんと凄く生産性のない時間を過ごしてしまっているなっていう気になったんですよね。何か出来ることはないかなと考えたら、小さい頃から意外と絵を描いたり、物を作ったりするのが好きだったので、この歳になってもう一度絵を描いてみたらどんなものかなと思って、画材を注文して、何枚か絵を描きました。緊急事態宣言が解除された今でも描いてるので、ある意味新たな趣味になりましたね。自宅での時間の過ごし方は、こんなにもあるんだという発見になりました。

——今年で三代目 J SOUL BROTHERSがデビュー10周年ということですが、この10年の中で、この数カ月のようなオフが続くようなタイミングってなかったですよね。

自宅からリモートで出演するようなお仕事とかも単発ではあったんですけど、基本的にはもう僕が生活しているそのままの形での出演で、ヘアメイクさんや衣装さんも入りませんでした。人によると思うんですけど、少なくとも僕に関してはそうでした(笑)。そういう、なかなか「オン」モードのスイッチが入り辛い期間だったので、こうやって今日みたいに、少人数で感染対策をしながら撮影させて頂けるっていうのは、改めて水を得た魚じゃないですけど、お仕事っていいなと改めて感じました。

——当たり前だったことにも感謝するような感情が芽生えるタイミングでしたよね。

不安になる訳じゃないんですけど、凄くいろんなことを考える期間でした。皆さんおっしゃっていることですけど、自分を見つめ直す期間にもなりました。勿論、自分はエンターテイメントを届ける立場としていろいろ考えました。自分は、世界がこの先また元通りに戻るっていうことはなかなか難しいと思うんです。きっと、エンターテイメントの届け方も変わるし、受け取る側もその感覚を変えていかないと、エンターテインメント自体を純粋に楽しめなくなると思うんですよね。そういう届け方やツールなどをアップデートできない人達は脱落していっちゃう時代になるのかなと思います。

——おっしゃる通りだと思います。エンターテイメントの届け方というのは、具体的にはどう変わっていくと思われますか?

いわゆる今まで当たり前にしてきた直接のコミュニケーションというか、そういう機会が減りますよね。そうすると直接会える機会っていうものの、希少価値が上がっていく。上がっていけばいくほど、それを求めるお客さんの気持ちは強くなりますよね。ライブや舞台もそうだし、握手会みたいなリリースイベントも。自分達はある意味偶像の世界にいるので、応援してくださる皆さんがどんどん距離を感じてしまうようになると思うので、皆さんと常に身近に触れ合えるような何か、インスタライブが走りだと思うんですけど、そういうライブ配信だったり、映像で対面してコミュニケーションを取れる分野を、滅茶苦茶いろんな要素を詰め込んで、進化させていかなければいけないと思うんです。

ZoomやSkypeに代わるものも生まれてくるでしょうし。結局、古い体制、これまで変わってこなかった芸能業界みたいなものには、なるべく早いリニューアルが求められていると思います。

——「エンターテイメントというものは、数値化はできないですけれど、気分転換だったり、もしくは笑いだったり元気とか、そういうものを与えれると思うんです」

——エンターテイメント自体の価値がなくなるっていうことは決してないと思います。

衣食住の方が生活する上では大切ですし、必要不可欠なものかと言われたら、エンターテイメントは怪しいものかもしれませんが、同時にコロナに対して国民全員が疲れている状況もあると思います。そういう中でエンターテイメントというものは、数値化はできないですけれど、気分転換だったり、もしくは笑いだったり元気とか、そういうものを与えれると思うんです。そういう感情を与えれる仕事を自分達はしていると思っているので、少しでも皆さんの暗い気持ちを晴れさせることができたらいいなと思っています。

——岩田さん個人の活動としては、2018年に初単独主演映画で、様々な新人賞を受賞されて、今年に入ってからも入江悠監督の『AI崩壊』に出演されていましたし、俳優としてのキャリアは順調にステップアップしていますよね。現在は俳優業への比重が大きいと自己認識されていますか?

 

三代目 J SOUL BROTHERSて、皆分野ごとに得意不得意がはっきりしていて、役割分担みたいなのがしっかりしているチームなんです。そういう中で、自分ができることを見つけたいという気持ちもあって、お芝居に挑戦させてもらったんです。そうしたら、演技をすることが好きになって、今も続けさせてもらっているんですよね。僕の個人活動である俳優業での自分のことを初めて目にしてくださった方や、グループのことは知らないけれどっていう方が本当に沢山いらっしゃるんですよ。そこで僕らの曲を聴いてみようとか、ライブに行ってみようとか、自分の活動がそういう入り口の役割になったらいいなと思って、演技を続けてきたというのは間違いなくあります。

そうやって、音楽業界でのパフォーマンスと演技の二足の草鞋を履くスタンスを取り続けることで、自分のアイデンティティが見えてきたんです。この数年の間で。やっぱり演技を継続していくことで、自分の人生も充実させられるし、グループにも還元できているなという実感も得ることができるんです。

「自分がやりたいことは、やりたかったらやってみるべきだと思う。ちょっと前だったら、集団の中ではみだしもの扱いをされて発信しづらい立場だったと思います。でも、もうそういう時代でもないと思うんです。生き方自体が幅広くなってきていますよね」

ちょっと話はズレるんですけど、昔みたいにあんまり夢を語ることを僕は敢えて最近避けていて、胸の内に秘めておこうと思っているんです。昔は、こういうことをやりたいとか、こういう野心がありますとか言ってたんですけど、結局お仕事って、特に個人活動に関しては、いただいたお仕事にしっかり向き合うからこそ次のお仕事に繋がっているんだなって、痛感するんですよね。なので、今はこういう状況で大変ではあるんですけど、今あるお仕事に一つ一つ向き合うことが、来年以降の自分の活動に繋がるはずだと思っています。

——二足の草鞋を履いていることで見えてきた自身のアイデンティティというのは、どういうものなんでしょうか?

実際のところ、ドームクラスの場所でライブをするアーティストで、ゴールデンタイムの連ドラにも出演している人っていうのは、この業界を見渡しても、そう多くはないんですよ。勿論三代目 J SOUL BROTHERSとしての活動を10年間続けて来たからこそ言えることだと思いますけど、自分にとってパフォーマンスやライブは、好きの気持ちの延長戦みたいなところがあるんですね。それに比べて、俳優業は、皆さんおっしゃいますけど、個人商店なので、ダメならダメだし、良ければ次に繋がるし、そういうある意味シビアな世界じゃないですか。そういう未知の世界で、はじめましてのスタッフさんやキャストの皆さんと毎回お仕事をさせて頂くことで、この数年成長させてもらえました。

そうやって、外の世界を知ったことで、中の世界のことがよく見えてくるんです。メンバーは僕以外に6人いますけど、僕にしか見えていないところや、僕にしかない知識が絶対あると思うんです。アイデンティティっていうのは、そういうところですかね。

「表現の世界っていうのは正解がないものなのかもしれませんね」

 

 

——メンバーの皆さんと普段から集まったりしますか?

しますね。月に2回くらいは全員で集まって、今後の活動について話し合うメンバー会議をしています。そういう時に出てくるアイデアだったり、意見、言葉だったりが、皆全然違うんですよね。皆バラバラな人間なんで(笑)。皆の意見を聞くのも面白くて。なるほどって思えるし。自分の芯ができてるんで、自分の考えはこうですよと、他のメンバーにもちゃんと発信できるし。自分個人の人間としての成長も、こうやって活動してきたからこそなのかなって思います。出てくる言葉が昔とは変わったなと、自分でも思えるので。

——俳優業に携わるというのは、グループでの活動で築き上げてきた「岩田剛典」というイメージとはまた別の人格を演じるということですよね? 名前が大きければ大きいほど、それは凄く難しいことのように思えるのですが。

最初はやっぱり、技術的な部分だったりで苦しみましたね。基本的に撮影中もモニターチェックはあまりできないので、連ドラだったら1話のオフラインできましたと、DVDをもらって初めて自分の芝居を観るんですけど、もう本当に毎回毎回凹みまくってましたね。ゲロ吐いちゃうんじゃないかってくらい凹みまくって。これが来週オンエアされんのか……みたいな(笑)。そういう思いでやってましたね。

俳優としての節目になったと感じるのは、AI崩壊ですね。警察庁の警備局エリート理事官、桜庭の役を演じさせて頂いたんですけれど、6年前だったら絶対自分にオファーが来なかったと思うんです。最初の頃は、元々の自分のファンの皆さんをターゲットにした映画のお話がメインでした。でも、やっぱりそれを入口にしなきゃ何にもお話なんて来ないので、それは大切なんです。そうやって、いろんな作品に呼んで貰えるようになってきたというのが、実は凄く泣けるほど嬉しくて。

なんでかっていうと、僕は三代目 J SOUL BROTHERSというグループのパフォーマーで、音源にはヴォーカルの声しか入らないんですよ。そうすると結局、映像だったりライブを観にくるお客さんからじゃないと、存在価値がなかなか見出せない部分がどうしてもあって。HIROさんが「パフォーマー」という言葉を作ってくれたおかげで、「バックダンサー」じゃなくて「パフォーマー」としてメディアに出演できているわけで勿論ありがたいです。でもそういう中で、ひとりの役者として、自分自身を初めて認めてもらったというか、ちょっとでも期待してもらって話を振ってもらえる機会が増えてきたっていうのが、泣けるなぁみたいな。個人活動である意味充実感を満たして貰っているなと思いますね。

——先ほど、夢とかは最近は口にしないようにしているとおっしゃっていましたが、差し支えなければ仕事をしてみたい監督を伺えますか?

いや〜、いっぱいいますよ。是枝監督の作品のオーディションとか受けてみたいですし、たくさんの監督とご一緒し多くの作品に出たいです。本当にいっぱいでどうしようって感じですよ。

——ちなみに、本来の中にある自分と真反対の役だったら嬉しいとかあります?

それもちょっと前までは思ってましたけど、そういうのが余りなくなってきました。なんでかっていうと、ありがたいことに、ここ最近は満遍なくいろんな役をやらせてもらえているので。以前までなら、自分のアーティストとしてのイメージに対して振り幅があればある程いいと考えていましたけどね。最近だと、普通の人の役とか、難しいなって思います。普通って人によってみんな違うから、奥が深過ぎて、毎回毎回発見があるんですよ。お芝居に関しては、まだまだ勉強の身なので、毎回本当に全力でやるんですけど、そこに対して自信があるかって言われたら、まだ持てないですね。これって性格の問題かもしれないけど、自信が持てる日が来るのかな?ずっとずーっと考えちゃってるっていうか。でも、ベテランの方もそういうことをおっしゃる方が多いんで、表現の世界っていうのは正解がないものなのかもしれませんね。

——今、目の前にある役に向き合い続けるしかないですね。

アイツ見なくなったなってならないようにしたいですね。それが需要というか、(世間が自身に対しての)正直な物差しだと思うんですよね。

「発言とか手をあげる行動が、もっともっと考えなくてもできるようになっていくといいなと思います」

そうですね。きちんと結果を残せてないと、次の仕事は当然来ないですもんね。理想は自分がやり切ったとはっきり言えるところまで、芸能の仕事に関しては続けたいと思っています。

——話は変わりまして、本日は岩田さんがアンバサダーを務めている、LOUISVUITTONの洋服を着て撮影させて頂きましたが、昨年の1月にアンバサダーに就任され、改めてLOUISVUITTONというブランドをどう思われますか?

自分がアンバサダーに就任させてもらったのは、ちょうどメンズのディレクターがヴァージル(・アブロー)に変わったタイミングだったんです。元々ラグジュアリーなビッグメゾンに凄い新しい風が吹いたわけじゃないですか。ラグジュアリーカジュアルというか、ミックスするスタイルが。そして、それがもう既に当たり前のものになっているのが凄いですよね。ランウェイのモデルにも、自分の仲間や友人の黒人を多く起用して、ランウェイも盛り上げていて。ムーブメントになったものが、もう今やスタンダードになっています。

今のメンズファッション業界で間違いなく一番ホットなブランドだと思っています。この間のNIGO®さんとのコラボも、本当にキャッチーでした。NIGO®さん的には、本当に身内でやってんだよっていうテンションだと思うんですけど、グローバルでものすごく大きなスケールでやられていますからね。NIGO®さんはヴァージルからグランドマスターと呼ばれているんですが、世界から日本が注目されるきっかけになりますよね。

——そのヴァージルのLOUIS VUITTONメンズアーティスティック・ディレクター就任もそうですが、これまでだとなかなか考えられなかったような変化が社会でどんどん起きています。フェミニズムのMeTooとか、Black Lives Matterのムーブメントとか。基本的にはポジティブな方向性なものが多いと思いますが、古いものや間違っていたことが淘汰されたり、そういった状況を岩田さんはどのように捉えていらっしゃいますか?

そういう人種問題やジェンダー問題への関心が国際的に高まっているのは、僕はとても良いことだと思います。結局、弱者がずっと泣き寝入りするような時代もあったかもしれないけど、個がどんどん強くなる時代に入ってきていると思うんです。声を上げる人たちが、以前より凄く増えてきたし、そこに対して、私も、と言える人が増えてきた気がします。

「意見を言うことで生じる衝突っていうのは避けられないですけど、個が何も発信出来ない、言いたいことも言えない世界にはなって欲しくないなと個人的には思います」

特に、日本の慣習としては意見を主張することになかなか抵抗がある人が多いかもしれないですけど、人種問題やジェンダーに関しては、昔よりもいろんな意見が発信されていると思いますね。それは絶対に良いことだと思います。勿論、意見を言うことで生じる衝突っていうのは避けられないですけど、個が何も発信できない、言いたいことも言えない世界にはなって欲しくないなと個人的には思います。

——意見を持った個が社会にたくさんいるという状況は、とても健全ですよね。何かを少なからず考えるから意見が生まれる訳ですし。そういう意見を育む為に、岩田さんが普段からしていることはありますか?情報を取り入れたりとか、誰かとそういう話をしたりとか。

実は僕、そういうことをめっちゃ話しますね。最近、自粛期間で家にいる時間多かったから、将来のことをよく考えるんですよ。俺が働いてなくても社会は回っていくし、これが現実なんだなって思ったときに、本当にどうやって生きていこうかなとか、真剣に考えるきっかけにはなりました。そんな話ができる友人が周りに結構いるので。

——素晴らしいですね。

ありがたいことに。個が強くなっているという話もよくするんですよ。ある程度、やりたいようにやることが出来る時代になっていると思うんです。だから自分がやりたいことは、やりたかったらやってみるべきだと思う。ちょっと前だったら、集団の中ではみだしもの扱いをされてめちゃくちゃ発信しづらい立場だったと思うし、そういう思想があることを隠したまま一生を終える人もたくさんいたと思います。でも、もうそういう時代でもないと思うんです。生き方自体が幅広くなってきていますよね。結婚する人しない人っていう話も、今だったら独身を謳歌する男性も女性も多いじゃないですか。ちょっと前だったら考えられなかった現実だと思うんですけど、こうしなきゃいけないとか、ああしなきゃいけないとかの固定観念や、俺らの時はこうだったとかっていう先輩の物差しとかって、実は意味が無くなっているのかなって思うんです。

時代は変わって、今の時代の話なんですよって気付ける時代になってきたと思うし。だから、発言とか手をあげる行動が、もっともっと考えなくてもできるような感じになっていくといいなと思います。

——行動するのが当たり前のこととして、ということですね。

はい、まだまだそれは、時間かかると思うけれど。

——もともと岩田さんはそういうこと考えるタイプですか?それとも、歳を重ねると共に考えるようになったんですか?

半分は元々自分が持ってる考え方だと思うんですけど、半分は今までの経験というか、出会いが自分を変えてくれましたね。どんどん良い意味で社会人として、深いところ、他人の真意とかおべんちゃらな部分をリアルに、身近に捉えられるようになったのかなと思いますね。それに、この業界にいると、自分より年上の方とお会いする機会が多いので、学ぶことがたくさんあるんです。人間ってやっぱり面白くて、同じ職場の人達でもそれぞれ全然考えてることが違ったりするから。本当にびっくりすることもいっぱいありますけど、それがだんだん驚かなくなってくるっていうか、ある意味ちょっとクールになっちゃうのも仕方ないのかなって。

——違う考え方の人がいることも受け入れられる、みたいな感じですか?

そうですね。勿論、それで卑屈になったりとか、諦めたりとかは良くないですけど、いろんな考えの人がいる中での、言葉の選び方。それって凄い優しさだと思うんで。そうやって先輩方と触れる機会が多いと、だんだん人付き合いもよりまろやかになってくるというか。まろやかになっていっているんだけど、昔より現実に対してめちゃくちゃシビアになってきていると思います。

——そういうのって岩田さんの演技をする上での、糧になりそうですよね。

そうですね。結局、そういうのって滲み出るかなって思うので。ひとつひとつの経験が自分を変えていった結果、次のステップにつながっていくなっていうのは改めて感じています。1年単位とかで変わっていくもんじゃないんですけど、数年前と比べたら全然違うなって思うし。それは、自分の実感として。出会いを大切にして、やっていきたいですね、これからも。

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