バンダナの歴史を総ざらい。バンダナの秘密の暗号とは?
バンダナの由来は、ヒンドゥー語の“結ぶ”を意味する「bāṅdhnū」からだと言われ、その歴史は17世紀後半の南アジアや中東まで遡ることができる。今日までを早送りしてみると、色柄の四角い布には様々なサブカルチャーとの結び付きがあると言える。
ファッションの世界においてバンダナは、何にでも用いることができる。2017年のファッションウィークの始めに、#TiedTogetherの下、The Business of Fashion(ザ ビジネス オブ ファッション)が、人種や性別、セクシャリティ、宗教などに関わらず、人類の絆を世界へ示す印として、白いバンダナの着用をデザイナーや、ジャーナリスト、インフルエンサーに働きかけたのである。
Tommy Hilfiger®(トミー ヒルフィガー)は、アメリカをテーマにした2017年スプリングコレクションで、モデル全員の手首に白いバンダナを巻き、ラフ・シモンズ(Raf Simons)がCalvin Klein(カルバン クライン)のデザイナーに就任後初の2017年フォールコレクションの招待状として、白いバンダナを配布した。
音楽界でも、ヒップホップスタイルのアイコン的存在であるエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)の黄色いバンダナは、(直近では、Camp Flog Gnaw Carnivalというフェスでタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)が着用していた。)頻繁に着用され、ツイッターのアカウントが開設されるほどである。
バンダナは一枚の小さな布切れにしかすぎないのかもしれないが、いつもスタイリッシュで、時には反逆心をも呼び起こす。おしゃれの一部としてのアクセサリーや文化を象徴するものとして、そして日本のワークウェアからセクシャリティ、非行集団に至るまでのバンダナ用途について、そのいくつかを紹介する。
カウボーイスタイル
今年のカウボーイスタイルは、いろんな意味で大衆へと浸透した。ファッション以外では、『Red Dead Redemption 2』(レッド・デッド。・リデンプション 2)というゲームシリーズの続編でのカウボーイカルチャーとその美学が、新しい世代を魅了した。
ファッションでは、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)によるSaint Laurent(サンローラン)の2019春夏コレクションでは、ブランドの象徴的な細身のシルエットに、首元に巻かれた長めでカラフルかつキラキラしたカーチフを合わせることでバンダナをアップデートした。メッシュ素材のスタジャンもペイズリー柄のバンダナから着想を得たアイテムである。カウボーイの“イヤッホー”がファッションへと昇華した。
開拓時代の西部地方でバンダナは、より実用的であり、日差しや砂埃を防ぐために用いられた。この記事から分かるように、スタイリッシュにも見える。
ハンカチの暗号
様々な場所で性的抑圧があった時代に、バンダナは密かに性的嗜好を示すために同性愛の男性に使用され、異なる性的嗜好を持つことを表す秘密の暗号として、レインボーカラーが存在していた。
ハンカチの起源や、ハンカチを垂らす意味は解明されていない。サンフランシスコで始まったと言われるが、ハンカチが初めて書かれたのは、70年代初頭のニューヨークだったようだ。ベルトループに鍵をつけるのではなく、同性愛の男性が様々な色のハンカチを身に着け性的嗜好を明確にしていたとアメリカ・マンハッタンの新聞社ヴィレッジ・ボイス(Village Voice)のジャーナリストの一人が皮肉を述べた時のことである。
ラリー・タウンゼント(Larry Townsend)の独創的で風変わりな著書『The Leatherman’s Handbook』の1983年に出た続編で、色による性表現の方法を破壊したのである。例えば、黒はSMの色など。
マッチングアプリの台頭により、自由な性に開放的な時代となった現在では、ハンカチは不要なものとなっているものの、バンダナの色が紡いだ歴史は、いまだに重要な意味を示しており、それを讃えるようにプライドパレードで着用されることもある。
ギャングの色
セクシャリティの暗示からは随分離れるが、バンダナは非行集団への所属を示すために使われていた。ロサンゼルスのブラッズ(Bloods)とクリップス(Crips)という敵対するストリートギャングは、それぞれの忠誠心を示すために赤と青のバンダナを着用していた。結果的にバンダナは、犯罪や暴力との結び付きを強め、世界中の暴力団体が公然の場で顔を隠すためにバンダナを着用したことで、一層強くなっていった。
日本のファッション
ペイズリー柄のバンダナは、日本のファッションで繰り返される流行で、特にアメリカらしいものやワークウェアのクラシックなスタイルを解釈したデザイナーにより用いられることが多い。visvim(ビズビム)とMR PORTER(ミスター ポーター)との最近のコラボレーションでは、ウエスト上部にペイズリー柄のバンダナを配したデニムシャツが登場している。
日本のブランドChildren of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)のデザイナーである志鎌英明は、バンダナを多種多様に用いている。「1シーズンに10,000種類以上のヴィンテージのバンダナを集めてチェックしているコレクターやデザイナーはいないだろう。」と志鎌英明は語る。Children of the Discordanceの2019春夏のコレクションで登場したシャツは、大きな24枚の普通のヴィンテージのバンダナを使用し、全て手作業で作られている。
「両親が自宅でアメリカのビルボードのヒットチャートを流していた11歳くらいの頃から、バンダナプリントは僕の人生にとって大事なものだった。スケートボードや、アメリカのハードコア、西海岸のヒップホップのような音楽を通して、バンダナのプリントやそれを取り巻く文化を知った。」
「僕にとってバンダナ=アメリカではなく、ヒップホップやスケートボードのカルチャーを象徴している。それがコレクションに表れていると思っていて、バンダナシャツは、新たな掘り出し物をみつけるような面白い感覚がある。日本のファッションにおけるバンダナは、アメリカのヴィンテージカルチャーからの影響が強いが、多くの人がギャングスターを象徴するものだとも捉えている。」
- Words by: Max Grobe