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Where the runway meets the street

Ralph Lauren(ラルフ ローレン)は、歴史的な黒人大学(HBCU)であるスペルマン大学とモアハウス大学とコラボレーションしたカプセルコレクションをローンチ。この革新的な取り組みが本当のアメリカンドリームへの一歩となるのかもしれない。

1967年に高品質なハンドメイド・ネクタイのコレクションでスタートしたRalph Laurenはロマンティックな美学と時代の先を読むビジネスセンスでアメリカのファッション界を牽引してきた。1974年に公開された映画『華麗なるギャッツビー』のきらびやかな世界に凝縮されたような上流社会の生活様式を讃えることで、米国人が目指すべきより良い暮らしの水先案内人であり、守護神であり続けてきた。そして、アイビーリーグに代表されるカレッジスタイルも同時にRalph Laurenの世界観と非常に親密な距離感で人々を魅了してきたけれども、そこには実際「人種のるつぼ」を誇るアメリカがおざなりにしてきた事実があった。人種の多様性をすくい上げるまでに55年の歳月を費やし、ついにアメリカの服飾史におけるミッシングピースが埋まるときが来た。

今シーズンのRalph Laurenによるスペルマン大学、モアハウス大学とのコラボレーションは、映画や写真集を駆使した壮大なキャンペーンを仕掛けると共に、人種によって行動範囲に隔たりが生まれた事実とそれぞれの安全地帯で育んできた伝統や格式のスタイルを同等のものと認め、讃えることで、歴史に新しいページを刻もうとしている。

©︎Nadine Ijewere/Polo Ralph Lauren

アメリカ式の文武両道を誇るこのカプセルコレクションは、1920年から50年の過去の資料を元に作り上げられた。キャンパスでの佇まいや卒業アルバムを模したナディーン・イジェヴェレの切り撮った写真の中で微笑むのは、スペルマン大学とモアハウス大学の実際の生徒や卒業生や教授たちだ。アメリカのアカデミックな文脈をふんだんに織り込んだヴィジュアルの世界観は、全員黒人スタッフによって作り上げられている。これは、カレッジスタイルが白人主体のアイビーリーグだけのものではなく、アメリカンドリームを夢見る全てのアメリカ国民そのものを映し出すものであることを証明し、その誇り高き精神が込められている。

©︎Nadine Ijewere/Polo Ralph Lauren

マーティン・ルーサー・キング・Jrやスパイク・リーなどの卒業生を排出したモアハウス大学。上品なウールフランネルのクラシックな3ピースは、入学初日に学生に送られるモアハウスブレザーをインスピレーションにしている。67のナンバーは、1867年のモアハウス大学と1967年のRalph Laurenの創立を記念しており、クラウンのエンブレムは知的・人格的成長を重視した教育でリーダーシップを発揮するためのさらなる向上心を表している。

©︎Nadine Ijewere/Polo Ralph Lauren

贅沢なパッチワークの施された純白シルクのラップドレスは、スペルマン大学の矜持そのものだ。1881年に創立して以来、科学や技術の分野で博士号を輩出してきた神聖なる女子大学では、そのシスターフッドへの誇りの証として白いコットンのドレスが現在でも受け継がれている。エンブレムがポイントのカレッジニットやトラックスーツでは包括的なウェルネスと福祉を重視してきた大学のスピリットを体現している。

「このコレクションをデザインするにあたっての私の願いは、モアハウス大学とスペルマン大学の豊かな歴史に包まれた美を、妥協することなく表現することでした。私が見たもの、通った場所を世界と共有したかったのです」

「Ralph Laurenが創り出すアイコニシティを通じて、私たちの物語の扉を開き、アメリカの物語を拡張するべく重要な役割を果たすことを意図しています。アフリカ系アメリカ人の生活を肯定的に表現するイメージの重要性を、アメリカンスタイルの代弁者として世界に強いメッセージを届けます」

そう語るのは、ラルフ・ローレン社のコンセプトデザイン&スペシャルプロジェクト ディレクターであり、モアハウス大学の2013年の卒業生ジェームス・ジーター氏だ。16歳にワシントンD.C.のジョージタウンにあるRugbyストアに勤務し、インターンからリードデザイナーへと着々と駒を進めてきた。2年前のBLACK LIVES MATTERムーブメントに端を発した抗議運動や、トランプ大統領の政策による分断など様々な躍動を体験している最中、ジーター氏は自身の体験をもとにしたコミュニケーションを通して、アメリカを代表するメガブランドと認識を共有してきた。

©︎Nadine Ijewere/Polo Ralph Lauren

「このコレクションがなぜ重要で意味があるのか、その背景を理解するためには、黒人の歴史とアメリカの歴史を理解する必要があります。HBCUの歴史の中で、特に私たちが投影した時代では、学生は社会や世間が言っていることの多くに反論していました。現状に満足せず、向上していくという考え方は、Ralph Laurenの価値観と非常に合致しており、HBCUの設立当初からその中核をなしています」

ラルフ・ローレン企業財団は2021年12月、モアハウス大学、スペルマン大学ほか10のHBCUの学生を含む黒人、アフリカ系アメリカ人の学生のための奨学金を、UNCF(United Negro College Fund)を通じて200万ドル支援することを約束した。また、インターンシップ、採用、メンターシップ、育成プログラムの進化により、これらの教育機関の人材のキャリアパスを積極的に促進することを約束した。

©︎Nadine Ijewere/Polo Ralph Lauren

様々な謳い文句を掲げることだけを宣伝効果として利用しながら、会社の根幹を揺るがすほどのシステムチェンジに消極的な企業が多い中、今回のキャンペーンがいかに革新的であるかは、人種差別への知見の低い日本国民でも想像に難くないだろう。むしろ、未だに保守的な慣習に縛られ理不尽な不平等が横行している傍ら、大企業が生活者に視線を合わせながら市民のマインドセットの変換を手伝い、自らの歴史に立ち向かいながら社会の歪みを是正していく姿勢に感心する。それは、撮影に協力したスペルマン大学やモアハウス大学の教授たちも同じことだ。

「私にとってこのコレクションは、計り知れない価値があります。優雅にそしてそれにふさわしい姿を生徒たちが体現することに、教授として、興奮を覚えるのです。私たちはずっとそうであったから。黒人の才能も、黒人の輝きも、黒人のルーツにありますが、アメリカという大衆の意志の中で、その存在を確認できることは、私の息子たちと共有できる大きな誇りであり、息子たちがこの大学の教授だと言えることは、本当に素晴らしいです」——デビッド・ウォール・ライス博士

「Ralph Laurenが私たちを見て、私たちの教育機関が生み出すものを見て、何十年、何百年にもわたって、大多数がアイビースクールに注目が集まっていたという事実を認識したことの意義について、ひとつ言っておきたいのです」——ヘンリー・M・グッドゲイム・ジュニア

本カプセルコレクションは、330日(水)11:00よりラルフ ローレン 表参道で発売し、順次ラルフ ローレン 公式オンラインストアで発売。※なくなり次第終了