style
Where the runway meets the street

「自由」や「解放」をキーワードに掲げるFERRAGAMO(フェラガモ)。今シーズンもクラフツマンシップのこもった物作りを継承しつつ、自由なアイデンティティ溢れるアートワークを展開している。そんな新作コレクションを俳優、窪塚愛流がまとう。今年5月公開の映画では初主演を務め、9月には初舞台を踏むなど表現者として着実にキャリアを重ねている。FERRAGAMOと窪塚、両者に宿るのはオリジナリティの尊重とあくなき進化。互いの自己表現が共鳴する。

——撮影を終えての率直な感想からお聞かせください。

実はFERRAGAMOの服を着させていただくのは今回が初めてでした。もちろんブランド自体は昔から存じ上げていたのですが、大人なブランドというイメージが強くて、しっかりと向き合えたことはありませんでした。でも今回スタジオで初めて衣装を拝見した瞬間から「かっこいい!」と思いました。デザインがすごく洗練されていて品格があり、モードな雰囲気も漂っている上質なお洋服だなって。実際に着させていただき、背筋が伸びるというか、いつもと違った自分が垣間見えて嬉しかったです。

あとハイブランドっていうと、長年受け継がれている物作りへの姿勢みたいなものがあると思いますが、そういった伝統をしっかりと踏襲しつつ、29歳という若いクリエイティブ・ディレクターならではのフレッシュな表現もあって。クリーンで洗練されたデザインに、圧倒的な存在感が宿っていて、今回の撮影ですごく刺激を受けました。

——普段はどんなファッションですか?

オーバーサイズのウェアにスニーカーを合わせたり、ストリートな感じが多いです。あ、でも最近は柄シャツやジャケットにスラックス、ボトムは膝丈くらいのロングソックスにブーツやスリップオンを合わせるなど、ちょっとかしこまった着こなしも楽しんでいます。

——今日の撮影では赤やカーキ、黒などのワントーンが多かったですが、プライベートでの色使いはいかがですか?

必ずどこかに黒を入れるようにしています。これは個人的な感想ですが、どんなにカラフルな色でも、黒を入れることによって、まとまる気がします。それ以外は自由。今回のようなファッションのお仕事をさせてもらっているうちに、自分の中にそれまであったルールみたいなものがだんだんとなくなっていって、今は自分の中でかっこいいと思った服を好きなように着るようになりました。その方が自分らしくいられているような気がして。

——今季のFERRAGAMOは「自由」や「解放」といった言葉がキーワードになっています。ご自身が服を選ぶ際にテーマにしていることはありますか?

「自分らしさ」です。とにかくその時に着てみて、一番気分が上がるものを着るようにしています。あとアイテムも着方も自分なりに楽しんでいます。例えば、最近着なくなった服でも、缶バッジでアレンジをして着てみたり、リメイクが得意な友達に頼んで刺しゅうやワッペンなどをカスタムしてもらって着たりしています。

——それこそ、来春に発売する写真集は「自分らしさ」満載だそうですね。

はい、等身大の僕が満載です。撮影のときは特にテーマは設けず、僕の日常を淡々と切り取ってもらいました。めちゃくちゃ自然体といいますか。撮影のときも、いい意味でお仕事っぽくない雰囲気でした。地元の大阪で撮影をしたのですが、僕が運転しているところも撮っていただきました。そうそう、マネージャーさんには初めて僕の運転に同席してもらって、いい思い出になりました(笑)。今回のファッションシュートとはまた違った魅力に溢れた、和やかな雰囲気とありのままの表情を楽しんでいただきたいです。

——小さい頃から俳優業に興味があったそうですが、それ以外は何か好きなものはありましたか?

絵を描くことが好きで、当時は鉛筆で自由に描いていました。そのブームが再燃したのか、最近は真夜中に絵を描くことが趣味になってきました。というのも、仕事で新しいことをたくさん覚えていくだけでなく、オリジナリティのあるものを自分の手で表現をしたいと考えたときに大好きな絵がいいなと思って。自分の思った形で表現することがすごく気持ち良くて、筆ペンや水彩絵具を使い無我夢中で描いています。

——小さい頃からの趣味が、今も表現者としての肥やしになっているわけですね。

そうですね、やっぱりお芝居と同じで答えがないというのがいいです。観た人それぞれが自由に受け取って。それが素敵だなと思います。

——今日の撮影のときにレンズを向けられた際、自らポージングをされていました。あれも表現のひとつとしてやっていたのですか。

今日みたいな撮影のときは自分で世界をつくっています。「今僕はヨーロッパにいるんだ」とか「あそこにはエッフェル塔が見える」みたいな妄想をしたりして。そうすると、ただぼーっとしたり、意味もなく体を動かしているのとは違ってポージングに意味が出るので、気持ちが瞳に宿るといいますか、写真に意味が出てくるような気がします。

——着々とキャリアを重ねられていますが、ご自身の中で、お芝居に対する向き合い方に変化はありますか?

初めて舞台のお仕事を経験したのですが、ドラマや映画とは全然違って、とにかく全てが難しかったです。大量にセリフを覚えなければならないのはもちろん、最初から最後まで全てに集中し続けることが難しかったです。映画やドラマはカットがかかるのでリセットできますが、舞台は始まったら最後まで止まらない。たくさんのお客さんの目の前でお芝居をするけど、全員が僕のお芝居を観ているわけではない。ひょっとしたら僕のお尻だけを見ている人もいるかもしれない。いろんな “僕” が見られているから、常に全身全霊を捧げ、神経を研ぎ澄ませていなくちゃいけない。そういった意味では精神的に強くなったように思います。

毎日自分の課題が見つかりますし、実力のなさを痛感させられることばかりで、最初はネガティブな気持ちになっていましたが、あるときから「これは神様が20歳の僕に、役者として一皮むけさせるために与えた修行だ」って思うようになり、それからは前向きな気持ちになれました。

——真摯にお芝居に取り組んでいますが、お芝居自体が、窪塚愛流という一人の人間にどんな影響を与えていますか?

僕の人生の全てに良い影響を与えています。この職業以外、向いていないんじゃないかなと思うくらい。今21歳ですが、これまでの人生で一番生き生きしているのが、お芝居を始めてからです。自分に自信が持てるようになりましたし、自分のことが好きになりました。あと改めて親のことを誇りに思えて、正直、俳優というキャリアがなかったら、今の自分が存在しないくらいです。セリフや設定など決まりごとはありますが、基本的には自分のオリジナリティで勝負する世界なので、そういうところも自分に合っているかなと思います。

——そうなると、人としても俳優としても、自分自身を高めなければならない。

そうなんです。

——しんどくないですか?

しんどいときもあります。でもどんなときも寝る前は「今日も楽しかったな」って思ってから寝ます。もちろん悔しくて自分自身に憤る夜もありますが、お風呂に入ったりすると、不思議と解決できます。あと最近は、そういうネガティブな気持ちがあるからこそ、まだ成長できるって思えるようになりました。

——どんな役柄でもお芝居をするときに意識していることは、どんなことですか?

役への感謝です。どんなに悪役でも悲しい役でも、僕が演じることで、その役柄が報われたらいいなと思っています。これは個人的に思っていることですが、役柄って、僕達が表現しないとずっと台本の中に閉じ込められているじゃないですか。だから僕はその役をいただくと「(この役は)僕のことを選んでくれた」と思います。僕が演じることによって、その役が少しでも幸せだなって思ってもらえるように演じることを心がけています。窪塚愛流という役者を高めてくれるのは、監督やスタッフの皆さん、周りの方々のお力はもちろんですが、最後は自分がこの役をどう演じるか。やっぱり一番は役に感謝していないといけないと思います。

——最近21歳になってまたひとつ大人になりましたが、ご自身にとって大人ってなんですか?

自由……、かな!?(笑)。あとは希望とか未来とか。早くもっと大人になりたいです。僕は今の行動が、自分の未来を決定すると感じています。それぐらい、今は重要なポイント。子供のときは、誰かが道を決めてくれていたし、自分が間違っていても怒ってもらえたけど、成人になった今は怒ってくれる人も少ない。そうなるとやっぱり自分の一つ一つの選択が未来の自分をつくると思います。もし今何かが起こっても、起こったことより、ハプニングに対してどう対処できるかで大人の価値が問われるのかなと思います。

——21歳って、無茶もできる若さもある一方で、大人としての常識をわきまえるだけの経験値もある微妙な年齢ですよね。

だから難しいです。僕もエネルギーに満ち溢れているので、それをどう使うか。たとえどんな風が吹いても、良い方向に乗りたい。そうそう、ツバメが風に乗るには追い風が必要って言うじゃないですか。めっちゃいいなって思っていて、僕もツバメみたいになりたい(笑)。

——ただ追い風だからといって、それが決して楽というわけじゃないですよ。

もちろんそうです。でもやっぱり、ただ楽に進むよりも、苦難が立ちはだかった方がいい。苦しい日があった次の日の方が、昨日の自分に勝ったって思えて。僕は基本的に人と競うことはないですが、最近は自分自身と競っています。オリジナルの価値を高めるには、いろいろな経験が必要不可欠ですし、経験の中にはネガティブなことだってあると思うから。

——一人の人間として、生きるうえで大事にしていることはどんなことですか?

大きさに関係なく、身の回りの幸せを見つけることです。一つ一つの出来事をしっかり噛み締めていくと、いろいろなことにありがたいなって感謝の気持ちになります。それを続けていると、今自分に起こっている全てのことが当たり前じゃないって思えてくる。僕は、幸せの探検家・冒険家といったところでしょうか(笑)。

——俳優の中には、ネットドラマや海外に軸を置いて活動する人もいますが、今後俳優としてどんなヴィジョンを描いていますか?

できれば25歳までに、海外で仕事をしてみたいです。役者として、これからもっと引き出しを増やしていきたいと思います。ずっと英語を勉強してきたのですが、最近は全くできていません(笑)。でも夢は妥協したくないので実現させたいです。仕事もプライベートも、自分を大事にしながら、やりたいことを自由にやっていくことが今の理想です。心地よい追い風に乗っていきたいです、ツバメみたいに(笑)。