style
Where the runway meets the street

ミリタリーとハイキングからインスピレーションを受け、ゴープコア・ラグジュアリーをテーマに、都会的に刷新したTATRASの2024年秋冬コレクション。ブランドのアイデンティティでもあるダウンジャケットを始め、シルエットやキルティングなど新しい表現が豊富な今シーズン。ファッションに精通した杉野遥亮が捉えた新しい表現の魅力とは? 自身が対峙する純粋な表現への葛藤を率直に語る。

——HIGHSNOBIETYでは久しぶりのご登場となります。TATRASのファッションシュートはいかがでしたか?

撮影に来る前に少しTATRASのことを調べていたのですが、今日着たコレクションはこれまでとはイメージが違って、よりファッション性が高くなっているなと感じました。キルティングのパンツのルックがありましたが、以前からハイボリュームのシルエットのパンツを好んで穿いていたのですごく心地よかったです。

——2024年秋冬コレクションはミリタリーやハイキングから派生した都会的なコレクションにシフトしています。

ショートダウンのルックのシルエットがすごく綺麗でした。ロンTをインしたベルトが効いていて、これで外出したいなと思いました。ミリタリーの要素は結構好きなんです。ちょっとワイルドだし、汚れてもいいような安心感があるので。デニムにも合うし、パッと羽織るだけでなんかまとまる。今日みたいに底が厚い靴を合わせて履くのも好きです。シンプルで楽なんだけど、おしゃれに見えます。

——昨今では再びファッションディレクターの進退が世間を沸かせていますが、杉野さんもよくチェックしているとか。

メディアで見て気になったものはお店に行ったりします。クリエイティブ・ディレクターのスタイルが強いと、ブランドが変わったのに「そのまんまじゃないか」と思わされるようなときもあったりして面白いです。先シーズンも、それまで全く門外漢だと思っていたブランドなのにお店の雰囲気が全く変わっているので気になって調べてみたら世代もルーツも全く違うディレクターが就任していて、すごく新鮮な印象を受けたことがありました。逆にディレクターが変わる前のクリエイションにもっと触れておくべきだった、と悔しい思いをすることもあります。デザイナーさんの息吹がかかっているものを纏うのが好きなんだと思います。

——特にどんなところに惹かれるのでしょうか?

クリエイションが純粋だなと思うものでしょうか。どこもそうだと思うんですが、アーティスティックなデザイン性とか 表現100パーセントで提示できてる人はなかなか少ないと思っていて。自分もやっぱりそういうところで戦っている部分があるから、打算的な見え方を気にしてない純度の高いものが好きなんだと思うんです。そういった意味で、自分の表現がまず先に来てることはすごく素敵だと思います。

——戦略が先に立つと、純度の高い表現は難しくなりますよね。

人それぞれいろんな考え方や価値観や今いる場所が全然違うので。自分が思った通りには絶対行かないんです。同じレベルで同じ目的や行き先を持っている人同士じゃないと無理だと最近気づいて。同じ場所に純粋にいる人たちで純粋に物作りできたら、それはベストかもしれないです。

——表現者として、葛藤がある?

まだ模索している段階なんです。少し前まで自分のやりたいものや好きなものが分からなくなったというか、映画も義務で観ているようなところがあって、休みをもらったのに休んだ気にならなくて苦しかったんです。自分は多分、1年に1本ドラマや映画に集中するようなタイプの人間なんです。今年『マウンテンドクター』などの撮影をやっていく中で自分の重い部分が取れてきてる感覚があって、最近少しずつ映画を観るのが面白いなと思うようになってきました。それで、お芝居をやっぱり頑張らなきゃなと思っているところです。

——削られているような気持ち。同世代の働く方々もすごく共感すると思います。

結局自分次第だから、自分の心のレベルを上げていかないといけないんです。目の前に起きていることをどう受け止めて、どう次に昇華していくのかを繰り返していくうちに、結果的に自由とか純粋なものにたどり着くんじゃないかなと思っていて。今の自分はまだその課程。だから苦しいこともあれば、やりたいこともあるので「これでいいか」と思っています。徐々にその段階は自分の中で上がってる気もします。

——今後、目指すのはどんなことですか?

どうなりたいとか、どういう仕事がしたいとかではなく、毎日自然に楽しかったと思えたらいいなと思って、そこを目指しています。質の高い仕事をしたいとはずっと思っていたんですが、それが全てではないのも事実。でも経験を積んで質の高い仕事が増えたら自分の段階が上がっているということ。その結果、人生が楽しくなるんだと思います。いま四苦八苦してる姿を振り返って、あの時の俺、愛おしいと思えたらいいので。それが目標かな。

11月16日(土)に東京・銀座に旗艦店をオープン

自然物と人工物を融合させたコントラスト美をテーマに設計され、イタリアと日本の融合を表現したTATRAS 銀座店。3フロア構成で、フルラインナップを展開する店内には、約400年の歴史を持つ朝日焼の作品やオリジナル什器が並ぶ。オープン記念として、パリで活躍するアーティスト、ジョヴァンニ・レオナルド・バッサンとのコラボジャケットを数量限定で発売。スパイバー社のBrewed Protein™ファイバーとウールをブレンドした素材で、高級感と機能性を兼ね備えたリバーシブルデザインが特徴。

TATRAS 銀座店
住所:東京都中央区銀座2-5-11 V88ビルディング1F,2F,B1F
営業時間:11:00-20:00
電話番号:03-6228-7770(11月16日開通予定)