物の見方を突き詰めた 菅木志雄「放たれた景空」開催
- By HighsnobietyJapan in art
- 2020年7月29日
「小山登美夫ギャラリー」は、アーティスト菅木志雄による展覧会「放たれた景空」を開催する。
今回初めての試みとなる、六本木のギャラリースペース奥の部屋全体を使ったインスタレーションの新作と、近年継続して制作している壁面の立体作品の新作を発表。
菅は、1968年多摩美術大学絵画科を卒業し、60年代末〜70年代にかけて起きた芸術運動「もの派」の主要メンバーとして活動し、インド哲学などに共鳴した自身の思考を深化しながら50年以上も精力的に制作を続け、同時代を生きる戦後日本美術を代表するアーティストとして独自の世界観を広げている。
普段目にする木や、石、金属、ロープなどの「もの」を集めて選び、融和や、対峙させながら絵画のキャンバスのような木枠、展示空間、屋外などに配置し作品を構成する。ものを単独で存在させるのではなく、ものともの、ものと場が相互に依存し合う「連関性」や「差異」、「複雑性」「複合性」をつくり、ものと場の存在性を際立たせるという。
制作に至る前段階で、ものに対して「石を、これは石ではないのではと考える」というように、人間がつけたものの役割や機能、イメージを取り払い、ものと対話しながらその本質や存在とは何かを再認識。ものを単なる「固体」や、人間が意味を与えた「客体」と見るのではなく、独自の論理と方向性、現在性をもつ主体的な存在として捉え、アーティストの役割は、ものに潜在的に備わっている「あるべき姿」とそれに「ふさわしい場」を見出すことと考え、制作する。
「石ころひとつを数時間ごとに動かしながら、状況の違いを考える」ように、丁寧に練り直しながら多くの可能性から「ものが十分に存在的にリアルに生きている」ような「ここだ」という一点に置区など、ものを切り、曲げ、折り、並べ、重ね、繋げ、もの本来の存在を表出すべく極力最低限の行為を加える。
今年までに計5年間連続して弊廊での個展を開催し、継続して壁面に展示される立体作品に取り組んでいる。平面的ながらも、ものが立体的に構成されることで、作品内部に空間が含まれるような新たな構造を作り出すという。新作は、木枠の中に格子状の枠組みがつくられたり、大小異なる木片がリズムよく並んだり、小さい丸太の断面が縦に連なった作品が並ぶ。
ギャラリーの奥の部屋の壁面全体に細長い木材を渡し、一部を切り取り部屋の中央に置き、全体と一部、ものと場の連関性を表すインスタレーション作品も展開。作品の中で、ものが菅にとってあるべき「場」に置かれたとき、ものの配置のわずかなずれの連続性は、リズムや破調、気配やエネルギーまで生み出すようであり、ものが今まで知っていたものとは異なる姿や情景を表しているのを見ることで、多面的な世界の側面を知るような体験ができるという。
放たれた景空
会期:8月19日(水)〜9月26日(土) 11:00〜19:00日月祝 休
会場:小山登美夫ギャラリー 東京都港区六本木6-5-24 complex665ビル2階
入場無料