ラグジュアリー界の “良質な服化” の最新章では、高級ハンドバッグでさえ新たな役割を帯びつつある。いま注目のイットバッグは、単にバッグであるためのバッグではない。バッグは便利だからこそ存在する。そしてほんの少しだけ、“ただバッグであること” の楽しさも秘めているかもしれない。

とはいえ、ブランドのメッセージは明快だ。ラグジュアリーブランドは、頑丈でシンプルなレザーバッグを軸に次々とシーズンキャンペーンを展開している。焦点はファッション性ではなく、あくまで機能性。恐れず使いこなしてこそ、その真価が分かるバッグだ。

例えばMIU MIU(ミュウミュウ)の最新キャンペーンでは、復活した「ポケットバッグ」が主役だ。多彩な収納ポケットを備えたブランド定番のこのバッグは、スタイリッシュさと実用性を兼ね備えている。姉妹ブランドPRADA(プラダ)は2025年秋冬、ソフトなダッフルバッグやトートバッグを提案。週の必需品をしっかり収められる頼もしさが光る。

全てレザー製、全てラグジュアリー、そして驚くほど実用的。ブランドロゴは控えめでも、収納力は十分に確保されている。

もし業界で最も影響力のある2社だけが控えめなレザー製バッグを出していたとしたら、単に “さりげなく洗練されたセンス” と見過ごしてしまうだろう。

©MIU MIU

©PRADA / OLIVER HADLEE PEARCH

だがマイケル・ライダー(Michael Rider)はCELINE(セリーヌ)での傑出したデビューにより、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代を象徴する曲線美の「ファントム トートバッグ」を復活させ、日常でも頼れる万能バッグとして蘇らせた。

ジッパーが緩やかに弧を描く “スマイル” デザインを備えたこのバッグは、サイズにかかわらず日々の必需品をしっかり収納でき、落ち着いた色味の展開が日常での使いやすさをさらに高めている。

FENDI(フェンディ)の「フェンディ スパイ」も同様に、20年前のダブルハンドルバッグをスマートなシングルストラップにリデザイン。華やかな見た目に反して、実は驚くほどの収納力を誇る。BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)は、広く愛されるL.L.Bean(エルエルビーン)のキャンバストートをラグジュアリー仕様で再解釈。エレガントに編み込まれたレザーで縁取られたこの大ぶりバッグは、使い込むほどに風合いが増し、タフな実用性も兼ね備えている。

実際、これらのバッグはいずれも上品かつ頑丈な素材で作られ、使うほど味わいが増していく。

今日のラグジュアリーハンドバッグは、見た目以上にしっかり作られており、移動の多い日常を過ごす人にもきちんと寄り添う設計だ。まさに本質を突いていおり、ラグジュアリーバッグが「バッグ」である所以を改めて思い出させてくれる。

「バーキン」は、若き母ジェーン・バーキン(Jane Birkin)の日用品をしっかり収納できるように作られた。まさに、機能から生まれたファッションである。

真のラグジュアリーとは、ポケットに頼らずに済むことにある。