music
Tune in and turn up

ヒップホップはいつも、若者世代が感じる退屈な日々とアーティストの声を聞いてほしいという熱望のミックスから生まれてきた。そして、ラップという世界共通語はパフォーマーとファン、多くの人たちに共鳴してきた。

イタリアのヒップホップシーンは世界的にはほとんど脚光を浴びなかったが、カラフルな服をまとった若者たちが商業的なポップラップを生み出していた。若者たちは彼らが育った街とは違うものを生み出すことを考え、アーティストはよりよいものを創り出したのだ。

ミラノの急成長するヒップホップシーンについて『Huck Magazine』の中で、ジャーナリストのキアン トレイナー(Cian Traynor)は「ラッパーの中には、自己表現のためにヒップホップに頼るものもいる。また社会的変化への武器としてや、あるものはただ単に楽しい音楽としてヒップホップを扱っている」と論じている。イタリアのヒップホップシーンは、ミラノとローマといった大都市を中心に盛り上がりを見せる。

今回は、その中でも世界的に人気を確立しそうなアーティストとして、注目すべきイタリア発の人気ラッパーを紹介する。

アキレ・ラウロ(Achille Lauro)

ローマで人気のアキレ・ラウロは、フェミニンな美学を好み、男らしいステレオタイプなラップ文化をも用いないヒップホップラッパーとして知られ、自身を“アンチラッパー”と呼んでいる。彼は、2014年に“Achille Idol-Immortal”でブレイクしたが、2017年にはより新鮮でコンテンポラリーサウンドを見出している。同年ソニーレコードと契約し、ボス・ドムス(Boss Doms)とコラボレーションし、パーティでも好まれるようなラップをリリースした。

彼の派手な美学は変わったものか、それとも今日のヒップホップの中毒的な男らしさを拒絶するアーティストの表現なのかは決めかねるが、今は、彼の型破りなスタイルとエンターテイメント性に富んだ音楽を大いに楽しめる。

 

カール・ブラヴ(Carl Brave) x フランコ 126(Franco 126)

ラップデュオのサクセスストーリーだらけの歴史のなか、現代のイタリアンヒップホップシーンで、ローマを拠点にするカール・ブラヴとフランコ 126、またはプロデューサーカルロ・ルイージ・コラッジョ(Carlo Luigi Coraggio)とラッパーフランコ・ベルトリーニ(Franco Bertolini)としても活躍する2人は、このランキングに最もふさわしいデュオに思われる。

カールとフランコは出会ってからお互いの才能をすぐに認め合い、カールはフランコをデビュープロジェクト「Phase Rem」に起用した。その後、アルバムを発表。2017年12月に50万枚売れたアルバム『Polaroid』と、シングル『Pellaria』がよく知られている。

 

ゲミタイズ(Gemitaiz)

ユニバーサルミュージック所属で、長い間イタリアのラップシーンに貢献。ゲミタイズは15年間、ミックステープとフルレングスレコードを発表してきた。彼がまだ13歳のとき、周りには多くのローマ在住のヒップホップ仲間がいて、ラップスター「CaneSecco」と仲良くなり、「Xtreme Team」を結成。2006年から12年まで業界を旋風した。

彼は、今日でも大きな役わりを果たしている。ゲミタイズは、歌詞の中でストリートやドラッグディラー文化に触れている。また、2014年、彼はドラッグ取り扱い違法の容疑で逮捕され、苦悩な時期を過ごした。自宅監禁になった後、アルバム制作に戻り、イタリアで100万枚を売り上げた。彼の新作アルバムはまもなく発売されると噂されている。

 

ガリ(Ghali)

ガリは、今、ヒップホップ業界で最も注目されるイタリアの若手ラッパー。チュニジア人の両親のもとに生まれ、ミラノ郊外で育った。ヘビートラップな音楽は、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)からミゴス(Migos)に至るまで影響を受けた。彼はファッションや抜群のビート、フローでも注目され、多くのラップ集団とコラボしてこの5年ほど活動。しかし個人としての大ブレイクは2016年だった。

彼の音楽は、“Pizza Kebab”で皮肉的に比喩されているようにアフリカの伝統とイタリアの生い立ちの両分に触れていている。1993年生まれ、現在24歳のガリは成功を収め、2017年に発売されたアルバム『Album』の売り上げは、ミラノでダブルプラチナとなっている。

 

ケタマ126(KETAMA126)

スウェーデンのラッパーヤング・リーン(Yung Lean)に影響を受けたというミラノ発のラッパーケタマ126。「LOVE GANG」「CXXVI」として、そして「SOLDYMUSIC」と主に活動し、作品を発表している。

Pretty SoleroやFranco 126、Nino Bなどといった多くのアーティストとの活動を通して、過去3作品で、ケタマ126の音楽はドラッグや人間関係、プレッシャーといった彼や彼の友人が育った世界のおぼろげなヴィジョンを創り上げた。最新曲『Oh Madonna』は、若いイタリア人が牽引する世界での生き方を広く描き、難しい問題から自身を解放している。「それは自分のこと、自分の人生。想像上でもあるけれど。おとぎ話ではないけれどね」と彼は話す。

 

プリティ・ソレロ(Pretty Solero)

「LOVE GANG」のメンバーでもあるプリティ・ソレロは、“スノーフレーク(自分を特別だと思っている若者)”な世代に共鳴する低音とパーカッションを使ったヘビーなヒップホップを届けている。意気消沈したラブソングのクリエイターとして、彼は自分のレコードを“Romanzo Rosa”または“Romance Novel”と呼ぶ。

ソレロの作品のヴィジュアルは時に白人ラッパーへの皮肉っぽさを感じるのだが、歌自身はそれほど悪くない。過去に対する湿っぽい歌詞はリスナーに当てはまるかどうか分からないが、何か元気づけてくれるような要素があることは否定できない。もしクレイジーさを求めていないヒップホップファンなら、彼の音楽を聴いてみるといい。

 

プリーステス(Priestess)

イタリアだけでなく世界中どこでも、ヒップホップは不公平にも男性がその世界を支配しているだろう。しかし、新しい世代が台頭する時代、才能ある女性が出てき始めた。イタリアでは、プリーステスがその世界をリードしている。

ユニバーサル・ミュージック所属のプリーステス、本名アレッサンドラ・プレテ(Alessandra Prete)は、2015年にイタリアのラッパーマッドマン(MadMan)が楽曲『Doppelganger』で彼女を誹謗中傷して有名になった。彼女は誰も必要とせず、歴史上最もアイコニックな女性の何人かのレンズを通して、興奮して激烈な人間関係についてキャッチーでスマートなトラップソングを作った。

 

ルコミ(Rkomi)

ラップをしていた年上の従兄弟の影響を受け、ヒップホップに魅了されたというミラノ育ちのルコミ。ソロになる前、2013年に「Cugini Bellavita」という名前の有名デュオの一人として活動を始めた。音楽制作から離れてすぐ、2016年に活動を再開し、ヒップホップファンとラジオ局を熱狂させた。

ルコミの作品の特徴は、“流れ”だ。彼はどういうわけか、1呼吸で24子音を入れ込んでいる。「Sfera Ebbasta」や「IZI」とコラボレーションした楽曲『Bimbi』での歌詞では、彼が育った街から逃げ出せないことについて歌っている。けれども、憂鬱っぽくない。彼が自分自身とオアシス(Oasis)のフロントマンを比べた『Liam Gallagher』では、生意気さと価値のある知識について歌っている。

 

スフェラ・エバスタ(Sfera Ebbasta)

デフ・ジャム・レコーディングスに所属するスフェラ・エバスタは自分自身をインスタグラムで“Trap King”と呼んでいる。眩しいピンク色に染めた髪、カート・コバーン(Kurt Cobain)のようなの面影で、新世代のラッパーの1人として注目されている。彼は、エモでありながらも洗練されたポップラップを歌う。

2013年、ラップイベントでプロデューサー チャーリー・チャールズ(Charlie Charles)と出会い、チャーリーはスフェラをヒップホップの世界へ導いた。彼のデビューアルバム『XVDR』とその後の音楽を含むプロジェクトシリーズを一緒にやり、彼の母国で確固たるファンを増やした。そして、2018年には『Rockstar』を発表。ラッパーのクァーヴォ(Quavo)とリッチ・ザ・キッド(Rich the Kid)とコラボレーションした。デフ・ジャム・レコーディングス所属アーティストとして相応しい才能を発揮するスフェラ。彼の今後の活躍に注目だ。

 

テデュア(Tedua)

幼少時代を通してジェノヴァとミラノで育っているが、テデュア(Tedua)のサウンドはどちらの都市にも偏っていないものになった。片親で育ち、彼の音楽はストリートで子どもの頃にまわりにあふれていた暴力のリズムを刻んでいる。

彼はラッパーとしてだけでなく、ファツション業界でも活躍する。2018-19年秋冬Dolce & Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)のメンズコレクションのランウェイを歩いたことも記憶に新しい。