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Where the runway meets the street

VERSACE(ヴェルサーチェ)の後継者であるドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)が、ブランドのデザイナー職を退いた。その後任として、MIU MIU(ミュウミュウ)で “デザイン&イメージ・ディレクター” を務めたダリオ・ヴィターレ(Dario Vitale)が迎えられる。つまり、2025年からVERSACEのクリエイティブディレクターは、ダリオ・ヴィターレが担うということだ。

VERSACEと親会社のカプリ・ホールディングスは、ドナテラ・ヴェルサーチェが4月1日付でチーフ・クリエイティブ・オフィサーからチーフ・ブランド・アンバサダーに就任することを正式に発表した。

カプリ・ホールディングスによると、ドナテラは「VERSACEの慈善活動や社会貢献の支援に専念し、ブランドの支持者として国際的に活動を続ける」という。

ドナテラ自身は、「ダリオ・ヴィターレが私達に加わることを非常に嬉しく思っており、VERSACEを新たな視点で捉えられることにワクワクしています」と述べ、さらに「これまで30年以上にわたり、素晴らしいデザインチームと共に働けたことに感謝しています。そして、兄ジャンニ(Gianni)の遺産を引き継ぐことができたのは、私の人生における最大の名誉でした。彼こそが真の天才でしたが、私も彼の精神と粘り強さを少しでも持ち合わせていると感じます」と語った。

ヴィターレは、まさに注目すべきタイミングでVERSACEに加わった。

PRADA(プラダ)によるVERSACE買収の噂が絶え間なく囁かれているものの、現時点で正式な発表はない。

しかし、もしこの買収が実現すれば、2018年にカプリ・ホールディングスが21億ドル超で買収したVERSACEにとって、50年の歴史の中で最大の転換点となり、ブランドの方向性を根本的に変える可能性がある。

そして、それ以上に大きな変化となり得るのが、ヴィターレの就任だろう。VERSACEのクリエイティブディレクターにヴェルサーチェ家以外の人物が就くのは、これが初めてのことだからだ。

1997年に創業者である兄ジャンニが殺害された後、ドナテラ・ヴェルサーチェはその後を継いで以降、「セクシー」「大胆」「遊び心」「堂々たる自信」といったVERSACEの美学を唯一無二のものとして確立してきた。

VERSACEは常に時代の中心にあり続けてきた。2000年、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)が着用したドレスは爆発的に話題となり、その影響でGoogle画像検索が生まれるきっかけにもなった。しかし、その名声が常に揺るぎなかったわけではない。

当時のフットウェア責任者であったサレヘ・ベンバリー(Salehe Bembury)によってデザインされた巨大なスニーカーは、BALENCIAGA(バレンシアガ)の「Triple S」スニーカー以前、パンデミック前のスニーカー市場を席巻していたが、VERSACEのセカンドライン「VERSUS VERSACE(ヴェルサス ヴェルサーチェ)」を支えていたデザイナー、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)が、2016年にSAINT LAURENT(サンローラン)へと移籍する出来事もあった。

アンソニー・ヴァカレロが率いるSAINT LAURENTは依然として圧倒的な存在感を誇り、ヴィターレがかつて在籍していたMIU MIUも業界のトップブランドに成長を遂げた一方、VERSACEは最近その影響力を失いつつある。

MIU MIUとVERSACEの作品はこれ以上にないほど対極的だ。VERSACEが大文字ロゴで煌びやかな輝きを放ち続けるのに対し、MIU MIUはプレッピーで洗練されたスタイルを得意としている。後者のスタイルは、過剰なロゴ使いが主流だった時代を過ぎ、クワイエット・ラグジュアリーが今なお強く求められる今日のムードにぴったりと調和している。

それでも、ドナテラ・ヴェルサーチェは変わらずVERSACEのアイコンであり続けている。ジャンニが築いた理念は今も息づいているが、今や、亡き兄ジャンニよりも、VERSACEの真髄を体現する存在と言えるだろう。

VERSACEが新たなミニマリズムの時代に足を踏み入れる中、ドナテラがその象徴であり続けることは、まさに最もふさわしい結末であろう。